前回からの続き。私はユイです。3人きょうだいの末っ子で、兄と姉がいます。子どものころから、なんでもできていた姉。私はそんな姉といつも比べられていたように感じていました。もちろん私の努力不足もあったでしょう。父が亡くなって、「大人になってからもっとたくさん会いに行けばよかった」という気持ちがなかったわけではありません。しかしあまりにも雑な遺産の分け方に、私は「やっぱり」と感じてしまったのです。この気持ちを夫に話してみることにしました。
生命保険の保険証券が見つかって「ひょっとして私にも?」と期待したこと、受取人は姉ひとりだけだったこと。そして、お金がほしいわけではなく、父が私や兄のこともちゃんと考えてくれていたと実感したかったことを話しました。
挙句の果てに姉から「保険金は3人で分けよう」なんて提案をされて、惨めとしか言いようがないのです。だって、何でもできる姉と比べて、私には何もないし何もできないから……。
真剣に話を聞いてくれていた夫が、「そんなことないでしょ」と一言。私は思わず夫の顔を見ました。
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私の居場所はここだと、まっすぐ伝えてくれた夫。思わず涙がこぼれました。
実家でのひと悶着に耐えられなかった私は、涙ながらに夫に話を聞いてもらいました。話すうちに気持ちが整理され、自分のなかにあった気持ちが「怒り」や「悔しさ」などでなく、「悲しさ」や「やるせなさ」だったのだということに気付かされました。
私が本当にほしかったものは、遺産ではなく父からの愛情。私のことも気にかけてほしかったのです。とはいえ私も父を避けていたのですから、何もなしというのは仕方がないことだったのかもしれません。
満たされずつらい思いをした分、私は愛してくれる家族をより大切にしていきたいと思います。
【第8話】へ続く。
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