アメリカ大統領選挙の投票が日本時間の今夜、始まります。選挙戦最終日、トランプ氏、ハリス氏はそれぞれ激戦州を飛び回り、最後の集会で支持を訴えました。
激戦州で最後の訴え 米大統領選記者
「いよいよ選挙戦最終日です。ハリス副大統領は激戦州ペンシルベニア州を集中的に回る作戦に出ました」
民主党 ハリス副大統領
「ペンシルベニア州民全員に投票してほしい。みなさんが選挙の勝敗を決めるのですから」
7つの激戦州の中で最多の選挙人を抱えるペンシルベニア州。勝利すれば大統領の座に大きく近づきますが、両候補の支持率は拮抗しています。
ハリス氏は実に17回もペンシルベニアに足を運び、最終日も州内5か所で選挙活動を行いました。
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民主党 ハリス副大統領
「アメリカは前進する準備ができています。同じアメリカ人を敵とみなすのではなく、隣人として接する国にするのです」
ハリス氏が終盤で打ち出したのは前向きなイメージの発信です。「憎悪や分断の時代からページをめくる時だ」と強調し、「私はすべてのアメリカ人の大統領になる」と訴えました。
記者
「このあと後ろの会場でハリス副大統領が選挙戦を締めくくる集会を開くんですが、大変な数の人が集まってきています」
ハリス氏の支持者
「ペンシルベニア中の人が集まっているかのようです」
「カマラ(ハリス氏)に直接会わなければと思って」
「彼女(ハリス氏)は歴史的な人物。初の黒人女性副大統領ですから、私たちにはとても意味のあることなんです」
選挙戦最後の集会には、レディー・ガガさんも登場。
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レディー・ガガさん
「あす、みなさんの声を届けましょう」
ハリス氏は最後にこう訴えました。
民主党 ハリス副大統領
「私たちは勝利します。自分が何を支持し、何のために戦うかを分かっているからです」
「選挙戦最後の最後で勢いを取り戻した」との分析が出ているハリス氏。著名人と明るいムードを演出し、最後の支持につなげたい考えです。
記者
「投票日前日のトランプ氏の集会ですが、開場の4時間ほど前から大勢の支持者が集まっています」
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一方のトランプ氏もこの日、同じペンシルベニア州で集会を開きました。
共和党 トランプ前大統領
「あすだ。私は物価高を終わらせる。そして国境を越えてくる犯罪者たちを速やかに阻止する」
トランプ氏は、ペンシルベニア州をこの2か月で16回も訪問しています。
トランプ氏支持者
「俺達が勝つよ。すでに期日前投票は確保しているし、勝ったも同然だね」
選挙最終日、激戦州3つを飛び回ったトランプ氏。この日も移民問題や経済政策に時間を割き、最後までトランプ節でハリス氏を激しく攻撃しました。
共和党 トランプ前大統領
「あす、あなたの投票で我々はカマラ・ハリスを解雇し、アメリカを救い、税金を減らし、インフレを抑える」
最後のミシガン州の会場に到着したのは現地時間の0時すぎ。真夜中の選挙集会となりました。
共和党 トランプ前大統領
「あなた達が投票に行けば大きな勝利が待っている。政治的にこの国の歴史上、最も偉大な勝利となるだろう」
支持率はハリス氏48.7%、トランプ氏48.6%(リアル・クリア・ポリティクス 10月18日〜11月4日)と歴史的な大接戦。勝者を決める投票がまもなく始まります。
どのメディアを見ても…「今回ばかりは分からない」齋藤慎太郎キャスター:
アメリカ大統領選挙は、日本時間の11月5日夜、投票が始まります。
最新の世論調査の結果は、 ハリス氏が「48.7%」・トランプ氏が「48.6%」で、どちらの候補が勝つかわからない歴史的大接戦となっています。
その中でも、激戦州といわれる州が7つあります。
アリゾナ州 11人
ウィスコンシン州 10人
ジョージア州 16人
ネバダ州 6人
ノースカロライナ州 16人
ペンシルベニア州 19人
ミシガン州 15人
特に、選挙人がその中で最も多いペンシルベニア州が勝敗を左右するといわれています。ですから、トランプ氏もハリス氏も、ペンシルベニア州を何度も訪れています。
さらに、過去4回の選挙を振り返ってみますと、▼2008年 オバマ氏(民主)、▼2012年 オバマ氏(民主)、▼2016年 トランプ氏(共和)、▼2020年 バイデン氏(民主)と、ペンシルベニア州の勝者が大統領になっているというデータもありますので、よりこのペンシルベニア州を大事にしようということが分かると思います。
気になるペンシルベニア州の支持率ですが、ハリス氏「48.1%」・トランプ氏「48.5%」と、わずか0.4ポイント差となっています。
井上貴博キャスター:
トランプ氏に関しては、差別的な発言が多くて過激だけれども経済を良くした実績がある。一方で、ハリス氏は融和的で多様性があるけれども、この4年間でアメリカ経済が停滞した。
ハリス氏は、この4年間「できなかったじゃないか」と。それがこれから「できる」という話をしても説得力がないととられてしまうと、ハリス氏はやりずらいのではないかと感じますが、そのあたりはどうでしょうか?
TBS報道局 外信部 ワシントン支局 樫元照幸 支局長:
ハリス氏はバイデン政権の一員でしたから、これまでの実績の批判をされるという立場でもあります。そのため、変化を欲しがっている有権者にとっては、ハリス氏よりもトランプ氏の方が変化をもたらしてくれるんだということで、支持が流れているという一面があるのは事実です。
ホラン千秋キャスター:
先ほど紹介したものは、数字的に拮抗しているということでしたが、どのメディアが調査するかによってハリス氏の支持率が高くなったり、トランプ氏の支持率が高かったりと本当に読めない感じになってきています。
様々な声を聞かれると思うんですけれども、肌感覚で今のアメリカの国民はどのように思っていると感じますか?
樫元 支局長:
一番聞きたいところだと思いますが、実際、どちらが優勢かというのは、どのメディアを見ても今回ばかりは「分からない」というのが答えになっています。
7つの激戦州で、1つ2つはトランプ氏がややリードかなという数字もあるのですが、それ以外は全くの拮抗状態です。
投票にどれくらいの人が足を運ぶのかによってだいぶ変わってくると思いますので、本当に先が読めない、どちらが勝つか分からないというのが正直なところです。
齋藤キャスター:
そして、今回の大統領選挙で予想困難にしている要因の一つと言われるのが、過去の選挙でも話題になった「隠れトランプ」の存在です。
過激な発言や差別的な発言によって、周囲からの批判を恐れ、トランプ支持を公言しない人たちが選挙に行き、結果的にはトランプ支持層が多かったということもあります。
今回はこれに加えて、「隠れハリス」という存在も出てきています。
現地メディアによると、家族・周囲の人たちが熱狂的なトランプ支持者だった場合、自分だけハリス支持を公言できない人たちがいるということで、実際に蓋を開けてみないとわからないというところが多くなっているそうです。
さらに、アメリカのニュースサイトでは大統領選挙について「誰に投票すると聞かれ、嘘をついた?」という質問に、「嘘をついた」と回答したZ世代は48%と、半分程度が嘘をついたということで、このような隠れ層と、本音を言えない層というところでより予想が難しくなっています。
井上キャスター:
メディア嫌いの方から言うと「なんで正直に言わなきゃいけないんだ」ということなのかもしれません。前々回ぐらいから、特に既存メディアが出す数字が実態と合わなくなってきている。メディアも世論調査を対面ではなく、様々な方法に変えているという話も聞きます。日本でも、専門家によってはもうトランプ氏が圧勝だという方もいますが、この数字はどうとらえるべきですか?
樫元照幸 支局長:
世論調査の技術的な部分は、岐路に立たされているところなんでしょうね。
しかし、「隠れトランプ」というのは2016年にはかなりいたのですが、今ではトランプ氏を支持することを隠す人はあんまりいないと思います。
むしろ、今回注目されているのは、実はハリス氏を支持しているが家庭の環境上なかなか言えないという人がかなりいるんじゃないかということで、その人に焦点を当てた民主党のCMが最近流れています。「旦那が何を言っても、奥さんは自分の意思で投票しなさいよ」というようなことを促すCMです。
注目は、表には言えないけれども「やっぱり女性大統領は…」のようなネガティブな思いを持つ人が、特に男性の間でそれなりにいるんだと思います。
これはなかなか表立って言えない部分もありますので、実際にそういう人たちがどれだけいるのかというのが、投票・開票の結果でわかってくると思います。
井上キャスター:
やはり、まだステレオタイプの方が一定数いらっしゃるということですね。
樫元照幸 記者:
一定数いるんだろうと思います。
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<プロフィール>
樫元照幸
TBS報道局外信部 ワシントン支局長