◆「悔いも後悔もない」
DeNAの大田泰示が引退を決意。球団事務所にて会見を行った。まず「本日は、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。そして、横浜DeNAベイスターズの日本一おめでとうございます。それと記者の皆さん、シーズンお疲れ様でした」と周囲に配慮する“らしい”姿を見せたあと「16年間のプロ野球生活を引退することとしました。16年間ありがとうございました」と頭を下げた。
続けて「プロに入ってからいろんなことありましたけど、ジャイアンツで8年やって、ファイターズに移籍して5年。ベイスターズで3年。まだまだ野球をやりたいという気持ちはありますけど、プロ野球はもう本当に厳しくて、やれる環境がなければプレイすることできないので」としながら、プロ入り初の一軍昇格なしの今シーズンには「自分という存在、必要とされる選手ではなくなったのかなっていうのは自分の中で感じるので、必要であれば必ず一軍にいると思いますし」と苦しいシーズンだったと吐露。
しかし「1年間(二軍で)若い選手と共に過ごして、自分のことだけをやるのは簡単かもしれないし、逆にしんどいかもしれないけど、若い仲間たちと一緒にやって、また人間的にも成長できたかなと思う部分もあるし。あと伝えられることは少なからず、15年やってきた経験の中で伝えられることは伝えていこうかなっていう風に思いも変わったし。その中で一足先に2軍が日本一になったっていうのも、これまた自分が辞めるいいきっかけとなる優勝だったと思うし、しんどかったけど、いろんな勉強させてもらったかなっていう1年だったかなと思います」とプラスの面にもフォーカスした。
そのうえで「いつかは来ることなので、そこはしっかり受け止め、また違う新たなステージに向かっていくことを決断ました」と前を向き「今はもう悔いとか後悔はありません」とキッパリ。今後については「野球界に還元できるような活動をしていきたいです」と話すに留めた。
高卒で飛び込んだプロ野球の世界に「ほんとにまず1番大きかったのは、いろんな人に 出会えて、その出会えた方々がすごくいい人で。自分に熱心に指導してくださったり、野球以外のところで皆さん自分としっかり向き合ってくれた方々が多かったです」と周囲に感謝。続けて「ドラフト1位で入団して55番をつけさせてもらって、自分の中ではすごく いろんな意味でいい経験になりましたし、くすぶっている中でも、ジャイアントのコーチ、監督の方々には熱心に指導していただいて、その指導のおかげで移籍したファイターズで4シーズンレギュラーとしてきて打席立てた。また栗山(英樹)監督に出会い、野球を楽しむことができました。その経験を元にベイスターズに移籍して、東海相模で慣れ親しんだ横浜スタジアムでプレーできたことっていうのは、野球人生の中でもすごく大きかったです」と3球団を渡り歩いた野球人生を回願。なかでも「怪我してもいいやぐらいの気持ちでやってたんで。じゃないと這い上がれなかったし、その気持ちでずっとここまでやってきて、突っ走ってきたつもりなので、そこは誇れるところかなと思います」と泥臭くひたむきに野球と向き合った点に胸を張った。
「その中で、ファンの方やチームメイト皆さんが、温かく受け入れてくれて、また多大なご声援をいただいたこと、本当に感謝しています。16年間やれたのは本当に携わってきてくれた方々のおかげです」と重ねて感謝の意を表した。
何度もサヨナラを呼んだ勝負強さに、ダイナミックなヘッドスライディングで一点をもぎ取るハッスルプレー。ベンチでも人一倍声を張り、仲間を鼓舞した好漢・大田泰示は、静かにバットを置いた。
取材・文・写真:萩原孝弘