【焼肉カレー】創業100年に手が届きそうな池袋の老舗食堂で食べる、超ボリュームの焼肉カレー:パリッコ『今週のハマりメシ』第161回

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2024年11月22日 12:50  週プレNEWS

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東池袋「伊東食堂」 の焼肉カレー

ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。

それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。

そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。

【写真】カレーのメニューだけでもたくさんすぎる

* * *

護国寺の出版社で打ち合わせが終わり、午後6時。暖かい会議室に長時間いて少しぼーっとなった頭と体に、突然の冬のような気温と、顔が濡れるか濡れないかくらいの霧雨が妙に心地よかった。

家族には、今日の帰りはどのくらいの時間になるかわからないと伝えてあるし、いい機会だ。少し歩いてみよう。そう考え、てきとうな方面へ歩きだす。


当然のことながら、一杯やりたい。もちろん腹も減っている。今歩いているのは、茗荷谷あたりか。となると大塚を経由して池袋まで行くのが、帰路としてはスムーズだろう。なにかめぼしい店はないかな。なんてしばらく歩いていたら、懐かしい場所にたどり着いてしまった。


そこは、「日の出優良商店会」という、東池袋エリアに残る、時代から取り残されたような小さな商店街。池袋で会社員をしていた数年前までは、よく目的もなく散歩に来たものだ。ずいぶんと店は減ってしまったようだけど、それでもちらほらと個人商店が残っている。

そして、ここに来たとなれば、寄らないわけにはいかないだろう。「伊東食堂」に。


「伊東食堂」は、創業1930年。つまりそろそろ開業から100年になる超老舗の大衆食堂だ。この場所に移転する前には池袋のランドマークである「サンシャイン60」の近くにあり、そのころから店に通っていたことは僕の小さな自慢のひとつ。思えば付き合いはもう20年近くになる(と言っても常連というほど頻繁に訪れられてはいないけれど)。

アットホームでリーズナブルで大ボリューム。なにより、どの料理を頼んでも美味しく、きっちりと酒も飲めてしまうという理想的な食堂だ。久しぶりにここで飲めると思うと、がぜんわくわくしてくる。


ひとまずはホッピーセットを飲んで落ち着こう。焼酎濃いめのホッピーが全身の細胞にじわじわと沁みわたる。あ〜、今日もいろいろがんばった! ような気がしないでもない。 ところでここ伊東食堂は、メニューの豊富さが尋常でない。酒のつまみになる単品も豊富だし、日替わりボードにも魅力的な品が並ぶ。またそもそも、メニュー表の手書き文字がものすごくかわいくて、それを見るためだけに訪れてもいい店だとも言える。


が、いつものように軽々しく、「メインの食事の前に、つなぎで単品料理をひとつ」なんてノリで頼んでしまうと痛い目を見るのも、また伊東食堂なのだった。いや、あくまで、あまり大食いではない僕の場合だけど。つまり、どの料理も盛りが良すぎるのだ。

そしてまた、カレー好きの僕としては、ここにくるとどうしても食べておきたい。その種類が豊富で、もはやカレー好きのためのワンダーランドと言っても過言ではないのだった。今夜はカレー1本で考えよう。


基本の「カレーライス」が750円で、「コロッケカレー」が850円。その差が100円なことに涙が出てくる。当然揚げものトッピング系は魅力的で、なかでも「メンコロカレー」の間違いのなさといったらないだろう。「オムカレー」も良さそうだし、「カツ丼カレー」「親子丼カレー」「豚キムチ丼カレー」「キムチカツ丼カレー」と、まだ食べたことのない魅惑のメニューがありすぎる。「イカフライカレー」もいいなぁ......。

が、今日はなんだか、「焼肉カレー」(1,000円)な気がする。理由は自分でもわからないけれど、その文字列がなんだか光って見える。よし。すみません、焼肉カレーひとつ、お願いします!


厨房からジュワーっという音が聞こえていたかと思うと、すぐさま到着。すごいな。これまた初めて頼んだメニューな気がするけど、こういうやつか。

大きめの皿に惜しみない量のごはんとカレー。米の上にはロース肉と思われる、生姜焼きほどの厚みの巨大な豚肉がどさどさどさとのっている。こりゃあ好きだわ。おれ。間違いない。


まずは肉から食べてみようと整列していた肉を崩すと、あらためてその量に驚く。増えてない? ってレベル。まず、カレーがついていない部分にがぶりと食らいつく。甘辛くて食べごたえ満点で、脂と肉の対比も素晴らしい。あわてて白米をほおばると、ほんのりと柔らかめに炊きあげられた米がまたうまく、すでに昇天してしまいそうだ。


カレーは昔ながらの和風味をベースにしつつ、スパイシーさと塩気の"攻め要素"も感じる絶品だ。真っ赤な福神漬けとごはんと一緒に食べると、もうなにも言うことはない。が、僕はそこに、自由に加えることのできる焼肉というお宝を持ち合わせている。こんなに恵まれたことがあるだろうか。

焼肉の味、カレーの味、それぞれ単体で味わったり、焼肉を思い切ってどっぷりとカレーに浸してみたり。その美味に心身をゆだねては、ホッピーをぐびりと飲んでみたり。 当然のことながら、ホッピーのナカをのおかわりを含むすべてを平らげたら、大満腹状態だ。あとは帰って風呂に入り、ベットに横たわればストンだろう。

こんな幸せな食堂が、全国にいくつ残っているんだろうか。あわよくばあと100年、いや、1000年は営業を続けてほしいと願う。

取材・文・撮影/パリッコ

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