兵庫県知事に再選した斎藤元彦知事。SNSを使った選挙戦が勝因の一つとされていますが、県内にあるPR会社のコラムがいま、問題となっています。公職選挙法違反の疑いもあるということですが、この指摘について斎藤知事が取材に応じました。
【写真を見る】兵庫・斎藤知事の“SNS戦略”に公選法違反の指摘…「広報全般を任された」PR会社のコラムが物議 知事は疑惑を否定【news23】
斎藤知事 PR会社への報酬に新疑惑 “SNS戦略”コラムが物議喜入友浩キャスター
「兵庫県の斎藤知事です。これから全国知事会に参加します。都内の会場に入っていきます」
25日、東京で行われた全国知事会に出席した兵庫県の斎藤元彦知事。
笑顔で応じる知事とは対照的に斎藤知事の表情は少し…硬めです。
|
|
会議後、記者の取材に応じた斎藤知事は…
兵庫県 斎藤元彦 知事
「今回の件、公職選挙法違反になることはないと認識している」
新たに浮かび上がった“公職選挙法違反”の疑惑。ことの発端は、兵庫県内にあるPR会社の社長がネット上に公開したコラムでした。
PR会社社長のコラム
「今回広報全般を任せていただいていた立場として、まとめを残しておきたいと思います」
「私が監修者として運用戦略立案、アカウントの立ち上げ、プロフィール作成、コンテンツ企画(などを)責任を持って行い、信頼できる少数精鋭のチームで協力しながら運用していました」
自らを選挙戦における広報の「監修者」だとした社長。
|
|
PR会社社長のコラム
「(写真を)右斜め上に向かわせることで、今回の選挙戦を突破し、斎藤さんの率いる改革が進み、兵庫が躍動していく様子を表しています」
勝敗の明暗を分けたといわれるSNSについては…
PR会社社長のコラム
「『#さいとう元彦がんばれ』ではなく、あえて『知事』を入れることで、『さいとうさん=知事』という視覚的な印象づけを狙いました」
公式アカウント公開の翌日に約2万件の投稿があり、「トレンド入りした」と成果も報告。
そして選挙戦をこう総括します。
|
|
PR会社社長のコラム
「私の率直な感想は、『選挙は広報の総合格闘技』であるということです」
ところが、こうした行為が「公職選挙法に抵触しているのでは?」と指摘されているのです。
総務省は、SNSの運用を含む選挙運動の企画立案を「主体的」に行う企業に報酬を支払った場合、公職選挙法が禁じる買収に当たる可能性があるとしています。
斎藤知事の説明は…
兵庫県 斎藤元彦 知事
「今回は知人を介して、支援者を通じて紹介していただいた。私としては、あくまでポスターの制作について主体的に考えていく中でポスターの制作を依頼した」
その上で…
兵庫県 斎藤元彦 知事
「制作費として70万円ほど支払っています」
斎藤知事の代理人弁護士によれば、ポスターデザイン制作費など5つの名目で70万円あまりをPR会社に支払ったということです。
斎藤知事「SNS運営はボランティア」 疑惑を否定一方で、SNS運用については…
兵庫県 斎藤元彦 知事
「SNSなどの考え方について意見を伺いましたけれども、あくまで斎藤、そして斎藤事務所が主体的にやっていた。(社長は)ボランティアとして個人で参加されたと認識している」
選挙中には斎藤知事にスマホを向けるPR会社の社長とみられる女性の姿がたびたび確認されていました。コラムには…
PR会社社長のコラム
「私のキャパシティとしても、期間中、全神経を研ぎ澄ましながら管理・監修できるアカウント数はこの4つが限界でした」
「選挙カーの上から臨場感を届けるためのライブ配信中」の説明書きがされた写真も載せられていました。そして、コラムの最後には…
PR会社社長のコラム
「そのような仕事を東京の大手代理店ではなく、兵庫県にある会社が手掛けたということもアピールしておきたいです」
斎藤知事の選挙運動に違法性はなかったのでしょうか。
行政書士で選挙プランナーの戸川氏は…
行政書士・選挙プランナー 戸川大冊氏
「(SNS戦略でPR会社が)お金をもらっていれば、公職選挙法の運動員買収になります。(PR会社側は)仕事としてやったんだということを書いたりしていて、ボランティアでやっていたというのは考えられにくいと。あくまでもビジネスとしてやっていたということになるでしょうし」
今後については…
行政書士・選挙プランナー 戸川大冊氏
「捜査機関が捜査をするというふうになるかなと思います。PR会社の方が重要な位置づけなのであれば、斎藤知事の公民権が停止されるということも想定される」
弁護士の若狭氏によると、仮に斎藤知事の公民権が停止された場合、失職し、再び知事選が行われるといいます。斎藤知事は…
兵庫県 斎藤元彦 知事
「(Q.無償で相談に乗ってもらうというのは考えにくいのでは)面会したことは事実です。あくまで斎藤元彦のSNS関係についてはボランティアの方々で運営していたと」
一方、コラムを投稿したPR会社の社長はこれまでのところ取材に応じていません。
斎藤知事のSNS戦略は公選法違反?“運動員買収”の可能性も小川彩佳キャスター:
PR会社の社長からはその後、発信はないわけですが、違法性についてどう考えますか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩氏:
選挙のプランナーというのはたくさんいて、候補者とプランナーが相談し合いながらプランナーの人がアドバイスして、報酬をもらう関係は問題ありません。
しかし、プランナーが有権者に「投票してください」と呼びかけるというのは選挙運動になるので、お金をもらって選挙運動をしてはいけないということで、引っかかるわけです。
日本の選挙は、お金をつぎ込めるお金持ちが有利にならないよう、基本的にボランティアでやってもらうということになっています。
今回、その問題をよく認識しないでこのPR会社の社長が選挙運動をやっていたとすれば、これは深刻な運動員買収ということになりますので、最終的には刑事事件として解明することになるのではないかと思います。
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
同じ斎藤として、次から次に出てくる疑惑に頭を抱えています。
今回、叩きやすいから話題になってるだけで、このPR会社の女性の活動が当選に繋がったとは私は思えません。
実際、SNSでバズっていたのは別のもので、例えばNHK党の立花党首さんが言ってみれば二馬力になるような形で斎藤知事を応援して、それに全国のYouTuberも参加したというのが、盛り上がりの決定的な要因だったように思います。
それが、既得権益層や、「マスメディアにはめられたのに悪口を言わない斎藤知事は偉い」というイメージ戦略にもなっていました。そういう点の方が選挙規制を形骸化させて、フェアではない問題だと私は見ているので、その点も忘れないで欲しいと考えています。
==========
<プロフィール>
斎藤幸平さん
東京大学准教授 専門は経済思想 社会思想
著書『人新世の「資本論」』が50万部突破
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身 政治記者歴30年