【オスロ時事】ノーベル平和賞受賞が決定した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中熙巳代表委員(92)は授賞式を控えた9日、ノルウェーの首都オスロのノーベル研究所で記者会見し、「若い人たちに、最大限の力を振り絞って核兵器と人類は共存できないと伝えたい」と世界中のメディアに訴えた。式典は10日、オスロ市庁舎で開かれ、田中さんが講演する。
会見にはノーベル賞委員会のフリードネス委員長(40)も同席。冒頭、「証言を何度も行い、『核のタブー』をつくってきた活動に感謝する」と述べた。海外と日本の報道機関100人近くが詰め掛けた。
田中さんは「核を使ったらどのようなことが起こるか体験し、使ってはいけないと叫び続けてきた。高齢になり、いつか私たちはいなくなる」とし、「世界中の若者が、今の核情勢に抵抗し運動していくことが必要だ」と語った。
現在の核情勢について、「ロシアやイスラエルなどによる残虐な行為が繰り返される中、核を使うことが軽く語られる時代になった。絶対に核で命を守ることはできない」と強調。その上で「受賞はうれしく、後退しつつある核情勢に前進が生まれるのではと期待している。被爆者は核も戦争もない世界をつくろうと言っている」と力を込めた。
記者会見を終え、撮影に応じる日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)代表委員の(左から)箕牧智之さん、田中重光さん、田中熙巳さん。右端はノルウェー・ノーベル賞委員会のフリードネス委員長=9日、オスロ