全日本は坂本花織が復調で4連覇達成か ジュニア女王の島田麻央にも初優勝のチャンスあり

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2024年12月19日 07:30  webスポルティーバ

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全日本選手権2024プレビュー 女子シングル編

 12月20日に開幕するフィギュアスケートの全日本選手権の優勝争いは、3連覇中の坂本花織(シスメックス)が一歩抜け出している状態。一方、3月の世界選手権代表3枠の争いとなると、これまでにない熾烈な戦いになりそうだ。

【坂本花織は4連覇へ復調なるか】

 優勝候補筆頭の坂本は今季を、2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪へ向け、「いろいろ試せるシーズン」と位置づけているとあってか、成績に波がある。それでもコンディション不良を解消し臨んだGPシリーズ2戦目のNHK杯では、彼女らしいはつらつとした滑りで合計得点を2022年北京五輪シーズン以来となる230点台に乗せ、今季世界最高の231.88点を獲得した。

「試したいことを試している最中なので、今回だけの成功ではなく、次もその次もやってこそだと思います。試合を重ねるごとに『よくなったね』と言ってもらえるように」

 NHK杯後にそう話した坂本だったが、12月上旬のGPファイナルは「調子が悪かった」と、キレのない滑りになってミスを多発。SP4位発進から総合3位に上げて表彰台には乗ったが、合計は201.13点と納得できない結果だった。

 ただ、GPファイナルで気持ちが切り替わったのは確かだろう。全日本選手権は、シニアデビューの2017年に2位になって平昌五輪代表を勝ち獲り、その後は優勝4回という強さを見せている。GPファイナル5位から全日本で優勝した2022年のように、今回も復調を期待したい。

 しかし、坂本も完全に安心できる立場でない。GPファイナルの記者会見では「GPファイナルに出たメンバーに加えてジュニアの選手たちも全日本に出るので、本当に誰が勝つかわからない」とコメント。ジュニアGPファイナル3連覇を達成した島田麻央(木下グループ)の存在を意識しているのは明らかだ。

【島田麻央は大技挑戦を名言】

 その島田は今季、フリーでトリプルアクセルと4回転トーループを入れて、ジュニアGPシリーズ2戦目で224.68点の自己ベストを出している。だが、その後の全日本ジュニア選手権は201.32点にとどまって、GPファイナルではフリーで4回転トーループや後半の3回転ループで転倒するなど、これまでにないミスをして199.46点。優勝はしたものの、ジュニア国際大会では初めて200点台に届かなかった。

 ジュニアGPファイナルの記者会見では、「ショートのトリプルアクセルには絶対に挑戦したいと思っているし、フリーもトリプルアクセルと4回転トーループは挑戦を続け、しっかり決めきることが目標」と、全日本への意欲を見せた島田。悪い状態からどこまで立て直してくるのか、注目される。

 シニアのフリーは、ステップシークエンスが入ってジュニアより要素がひとつ増えることもあり、大技をわずかなミスにとどめられれば、坂本を脅かすこともできるのではないだろうか。

 坂本、島田のふたりに続くのは、今季のGPシリーズ2大会でともに210点台を出し、GPファイナルも208.85点で2位となった千葉百音(木下アカデミー)。

 GPファイナルのフリーは、ジャンプで回転不足やエッジ不明瞭と判定されてGOE(出来ばえ点)加点を伸ばせなかったが、持ち前の伸びのある滑りからジャンプを決められれば、高い加点がつく。目標は、ISU(世界スケート連盟)公式大会の自己ベストである214.98点超えだ。

【世界選手権「3枠目」は熾烈な争い】

 世界選手権の代表争いの選考基準は、最優先が「全日本選手権の優勝者」であり、続いて「GPファイナル出場上位2人」、そして「全日本終了時点のISUシーズンベストスコア上位3人」。坂本と千葉は現時点ですでに、うしろのふたつの条件をクリアしている。

 3枠目は、かなり熾烈な戦いだ。そのなかで、わずかにリードしているのが、シーズンベストスコアで3番手につけている樋口新葉(ノエビア)。GPシリーズ・スケートアメリカ優勝のあと、フランス杯でもGPファイナルを制したアンバー・グレン(アメリカ)に次ぐ2位。合計得点も206.08点と、2022年北京五輪以来の200点台をマークした。

 GPファイナルは195.96点で4位だったが、SP6位発進から巻き返す意地を見せた。フリーにトリプルアクセルを入れてくるかどうかも見どころだ。

 樋口と同門の住吉りをん(オリエンタルバイオ/明治大学)も今季は、GPシリーズ・フランス杯と中国杯ではそれぞれ201.35点、202.45点と自己ベストを連発している。それでも、順位は3位、4位。GPファイナル進出はならなかったが、連戦を回避できたのはプラスになりそうだ。

 中国杯で自己最高の70.48点を出したSPは安定し始めている。フリーで4回転トーループを成功させ、今季わずかに出ている他のジャンプのミスを最小限に抑えられれば、さらに自己ベストを伸ばせそうだ。

 ほかでは、昨季は全日本7位ながら、GPファイナルの3位を評価されて世界選手権に出場した吉田陽菜(木下アカデミー)。今季の自己ベストは優勝したフィンランディア杯の199.46点。GPファイナルに進出し5位だった。

 自己最高得点はジュニア時代の208.31点だが、SPは自己最高を2季ぶりに更新して67.87点を出しているだけに、フリーでトリプルアクセルが成功すれば、合計の自己ベスト更新も期待できる。

 また、松生理乃(中京大学)は今季、GPファイナルに初進出。今季好調だったフリーでミスを連発してしまい6位に終わったが、GPシリーズ・スケートカナダではSP10位から、フリーで坂本を上回って総合2位まで巻き返すミラクルを起こしている。

 続くフィンランディア杯でもフリーのタイムオーバー減点1がなければ、合計を昨季の四大陸選手権以来の200点台に乗せ、吉田を逆転して初優勝を果たしていたところだった。全日本では今季ミスが続くSPをノーミスで乗りきれるかどうかがカギになる。

 渡辺倫果(三和建装/法政大学)は、スケートアメリカで樋口に次ぐ2位になりながらも、中国杯は5位でGPファイナル進出を逃した。だが、合計得点は2戦とも190点台後半と安定していて、フリーでトリプルアクセルの成功なるか、注目される。

【ジュニア中井亜美が表彰台を狙う】

 前出の島田のほかジュニア勢で台頭が期待されるのは、中井亜美(TOKIOインカラミ)だ。2022年全日本は4位。昨季はジュニアGPファイナルに進出しながらも、全日本ジュニアで10位と振るわず、全日本には出場できなかった。今季はジュニアGP中国杯で優勝。合計得点204.88点と、今季シーズンスコアでは日本女子の5番手につけている。

 ジュニアGPファイナルは、島田と和田薫子(グランプリ東海クラブ)に次ぐ3位。全日本ではトリプルアクセルをSPに入れ、フリーも2本構成で成功させたいと明言しているだけに、210点に迫る可能性は持っている。

 ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪にもつながってくるシニアの熾烈な戦いとともに、次代をにらんだジュニアの滑りも注目される大会となる。

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