インバウンド需要が堅調に回復をみせ、上場企業のホテルの客室単価と稼働率の上昇が続いている。東京商工リサーチ(東京都千代田区)の調査によると、ホテルを運営する上場企業13社(15ブランド)では、都心を中心に2024年は客室単価・稼働率の最高値を更新したホテルが多くなった。
コロナ禍前と比較可能な12ブランド(11社)において、2024年7〜9月期の客室単価は平均1万5537円に上昇、コロナ禍の最安値だった平均8230円から1.8倍の上昇をみせた。客室稼働率は12ブランドすべてにおいて70%を超え、7ブランドでは80%以上の稼働率となった。
比較可能な13社(15ブランド)で7〜9月の客室単価を2023年同期と比較すると、全社が上回る結果となった。上昇率が最も多くなったレンジは「20%未満」(11ブランド)、最大の上昇幅をみせたのは「三井不動産」で60.7%の上昇となった。2023年同期は、外国人観光客の利用がまだ限定的であったため、主力需要は国内観光客だった。
コロナ禍だった2020年7〜9月と2024年同期の客室単価を比較してみると、すべてのブランドで上昇していた。コロナ禍からの上昇率は「100%以上」が最多レンジで4ブランド、次いで「70%以上100%未満」「50%以上70%未満」が3ブランドで続いた。
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2020年から2024年までの7〜9月期における稼働率、客室単価を比較してみると、ビジネスホテルにおいては、稼働率、客室単価ともにコロナ禍の2020年が最低となり稼働率は41.9%、客室単価は6550円だった。インバウンド需要や旅行や出張など国内需要の回復により2024年は稼働率82.3%、客室単価1万3088円と、コロナ禍以降最高値となった。
シティホテルにおいては、2020年の稼働率は20%台まで落ち込み、ビジネスホテルと比べて大幅な低下となった。2024年は2020年と比較し57.0ポイントの改善となり、稼働率は79.2%と大幅な回復をみせた。客室単価では、コロナ禍以降最高値だった2023年の1万6477円の24.0%増となる2万437円となった。
2025年には「関西万博2025」を始め、「世界陸上2025」が東京で開催されるなど、大型イベントが日本で開催されるため、訪日外客数の大幅な増加が予測される。稼働率は上昇しているものの、人件費やエネルギー価格の上昇も重なったことで客室単価の上昇も続き、今後も上昇が続くことが懸念される。
東京商工リサーチは「増え続けるインバウンド需要に向け、従業員の積極的な採用や賃金改定、定着率の向上など、ビジネスホテル、シティホテル業界の待遇改善は必須。今後も需要が高まる中で、どのように対応していくのか、今後の展開が注目される」とコメントしている。
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