【高校ラグビー】練習に食らいつく“オカン”に刺激、東福岡/連載 <1>

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2024年12月25日 08:40  日刊スポーツ

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「リョウスケさん人形」(前列左から4番目)を持つなどして、優勝を喜ぶ東福岡の選手たち(24年11月9日、撮影・菊川光一)

第104回全国高校ラグビー大会が27日、大阪・花園ラグビー場で開幕する。注目校を紹介する3回連載の第1回は、東福岡。前々回は優勝、前回大会は準優勝の強豪です。


   ◇   ◇   ◇


Bシード東福岡は、憧れたヒガシ進学の夢を果たせず14歳で急逝した「リョウスケさん」の願いを胸に、2大会ぶりの王座奪還を狙う。「リョウスケさん」の母親が今年、バラエティー番組「探偵ナイトスクープ」への依頼を通じて、同校の練習に参加した。花園で「亡き息子になってラグビーがしたい」という思いから、ヒガシのグラウンドに飛び込んだ母の情熱に刺激を受けて、名門の意地を見せる。


天国のリョウスケさんは笑っていた。11月9日、2大会ぶり8度目の全国制覇を目指す東福岡は、筑紫に80−5で大勝し25大会連続35度目の優勝を決めた。試合後、部員はリョウスケさんの顔がプリントされた人形とともに記念撮影し“チームメート”と喜びを分かち合った。


今夏、「探偵ナイトスクープ」から「亡き息子になってラグビーがしたい」と願う母親がいる、という収録オファーが来た。藤田雄一郎監督(52)は「ラグビーはバラエティーに出ない」と最初は断った。


だが、Aチームの一番ハードな練習に可能な限り参加するのであれば、受けるという意向を出した。


簡単ではない。


それを母親が承諾したことで、練習参加が実現した。


藤田監督が振り返る。


「(母親は)サーキットをほぼやりとげた。みんなが感動して、みんながファミリーになって」


藤田監督によると、現在のメンバーは、地域の夏祭り後の清掃活動を自主的に行い、競技場の階段上りで困っていた女性の高齢者を背負って助けるなど心優しい選手が多いという。


だが、「優しいだけじゃかっこよくないので。そこに強さがないとだめだよって話をして。あの番組(探偵ナイトスクープ)を機に、もっともっと自分の襟を正す生徒が増えてきたかな」と藤田監督。


亡き息子のために、ヒガシの練習に食らいつく母親。


メンタル面にも大きな影響があった。


志半ばで夢を絶たれた思いに触れ、主将のNO8古田学央(がくあ、3年)は「東福岡に憧れ入ってくる子には、自分たちの恥じないプレーを見せないといけない。当たり前にできていることが当たり前じゃないと感じました」と引き締める。


副将で高校日本代表候補CTB深田衣咲(3年)は「ここに来させてもらっているのは親のおかげ。一番親に感謝しています。成長させてくださった監督、コーチに花園舞台で一番に成長を見せたい」と燃えている。


現状は冷静に分析している。藤田監督は「まずBシードに選んでいただいたのがサプライズ的なこと。本来だったらBシードに値しない結果を残していた。僕とかキャプテンとか『優勝を狙ってます』はNGワードにしている。そこを言える土俵には上がっていない」と険しい。


それでも希望はある。「もしかしたら花園で成長して、たどりつけそうな感じ、まず準決勝にたどりつけそうな雰囲気になればいいかなと。そこまで仕上げていけたらなと」。


今春の全国選抜大会では、まさかの1回戦敗退。6月の九州大会では、大分東明に公式戦初黒星を喫して、大会8連覇を阻まれた。例年10人前後の高校日本代表候補を擁すが、今回は2人しかいない。そんな逆境も、リョウスケさんを加えた部員“153”人の結束で乗り越える。【菊川光一】


◆東福岡 1945年(昭20)に前身の福岡米語義塾として創立し、55年から現校名。普通科のみの私立男子校で生徒数約2300人。25年4月から男女共学。ラグビー部は55年創部で部員152人(花園優勝7度、準優勝4度)。主な卒業生にラグビー日本代表藤田慶和(三重ホンダヒート)、サッカー日本代表DF長友佑都(東京)ら。所在地は福岡市博多区東比恵2の24の1。松原功校長。

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