「鉄道人気じゃないの?」58年の歴史に幕『鉄道ジャーナル休刊』から考える専門誌の現状と課題

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2025年01月22日 08:10  リアルサウンド

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■鉄道人気健在なのに……

  鉄道はネットニュースをたびたび騒がせる話題である。特に鉄道ファンの行動はSNS上でも騒動になる。先日も、見ると幸せになるといわれる“ドクターイエロー”が入線したホームで、一部の“撮り鉄”の間から怒号が飛び交ったと報じられたが、言うまでもなく大半の鉄道ファンはルールを順守している。一部の人の行動が問題視されるのも、それだけファンの数が多い証拠ともいえる。


  さて、鉄道趣味は以前にも観光列車ブームや鉄道漫画ブームなどが起こり、その時ほどの勢いは落ちているかもしれないが、依然としてファンが多い分野である。鉄道会社が主催するイベントにはファンが行列を作るし、珍しい列車の運行時には切符が争奪戦になるうえ、沿線には撮り鉄がバズーカ砲のようなレンズを装着したカメラを構える。ファンの熱狂ぶり、熱量の高さではあらゆる趣味の中でもトップレベルだろう。


  そんな鉄道ファンが愛読する雑誌の一つ、「鉄道ジャーナル」が4月21日発売の2025年6月号の刊行を最後に休刊することがわかった。鉄道趣味を扱う雑誌といえば、「鉄道ファン」(交友社/刊)、「鉄道ピクトリアル」(電気車研究会/刊)、「鉄道ジャーナル」(鉄道ジャーナル社/刊、成美堂出版/発売)の3誌が有名であり、鉄道趣味誌御三家と呼ばれることもあったが、その一角が歴史に幕を下ろす。


■硬派な誌面と濃密なレポートで高い支持も

  1967年に創刊された「鉄道ジャーナル」は、先月号(2025年2月号)で通巻700号を刊行したばかりであった。同誌は“鉄道の将来を考える専門情報誌”を謳い、鉄道に対しても政治・経済的な観点から考察した記事が多く、硬派な誌面で知られていた。特に、1980年代には国鉄民営化に関する話題を盛んに取り上げたことでも知られ、鉄道のみならずバスや航空機の情報を掲載したこともあった。休刊の理由は明らかにされていないが、部数減少や広告の減少、動画コンテンツの需要増など複合的な要因が考えられるだろう。


  漫画雑誌やファッション雑誌が軒並み部数を減らす中、特定の趣味人をターゲットにした雑誌は部数が堅調とされ、今後も大きく部数を落とすことはないと言われていた。しかし、趣味の中でも特にファンが多い鉄道雑誌の休刊は、雑誌業界にさらに衝撃を与える出来事といえそうだ。「鉄道ジャーナル」は乗り鉄の間でも、濃密な乗車レポートの人気が高く、紙媒体だからこそ読めるような文章と写真で構成された読み応えのある記事も多かった。それだけに、休刊を惜しむ声がSNSでも多数上がっている。


  専門誌を存続させるうえでは、今後どのような施策や戦略が必要なのだろうか。書店減少が進むなかで、WEBメディアへの移行や有料会員サイトなど様々な取り組みを各出版社や編集部が行っている。所有欲が満たされる紙という形で楽しまれることが多かった鉄道雑誌は、今後どのようになっていくのだろうか。残る「鉄道ファン」、「鉄道ピクトリアル」の2誌の動向にも引き続き注視をしていきたい。



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  • 儲かれば休刊にならない。仮にジャンルに人気があってもマス媒体は嗜好の多様化に対応しきれない。季刊とか不定期刊では編集者が食ってけない。
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