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生活保護費の引き下げは生存権を保障した憲法25条などに違反するとして、福岡県内の男女計39人が国や居住自治体に賠償や減額決定の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は29日、請求を棄却した1審・福岡地裁判決(2021年5月)を変更し、原告37人について自治体の減額決定を取り消した。
生活保護費の減額決定を違法と判断し、原告側の逆転勝訴とした29日の福岡高裁判決。原告から「やった」「うれしい」などと歓喜の声が上がった。
原告の一人で福岡市東区の山脇誠さん(73)は長年勤めていた溶接業の会社が約20年前に廃業し、職を失った。その後、脳梗塞(こうそく)を発症。左半身に障害が残り、生活保護が頼みの綱だった。
しかし2013年以降、毎月の保護費は千数百円減額され、現在は月10万円程度。ガス代を節約するため、食事は特売で買った野菜を鍋に入れて沸騰後、すぐに火を止めて古紙でくるみ、余熱で調理する。好物のブリの刺し身は、もう何年も口にしていない。夏場はクーラーの使用を極力控え、使う際の温度設定は30度。自宅にあるテレビは数年前に人から譲ってもらった廃棄品だ。
福岡高裁判決を受け、山脇さんは「涙が出るぐらいうれしい。生活も少しは良くなると思う」と喜んだ。原告側弁護団の星野圭弁護士は「生活保護利用世帯の消費基準を基に判断しないといけないことを明確に指摘した判決」と評価。「13年より前の基準額に一旦戻した上で、今の物価上昇を加味した引き上げを検討すべきだ」と訴えた。【佐藤緑平、志村一也】
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