【焼きサンドセット】古き良き喫茶店空間で味わう、チーズハンバーグ焼きサンドと生ビール:パリッコ『今週のハマりメシ』第171回

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2025年01月31日 12:00  週プレNEWS

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田無にある「ムサシノコーヒー」の焼きサンドセット

ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。

それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。

そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。

【写真】ローストビーフはなかなかのボリューム

* * *

毎年恒例にしている東伏見稲荷神社への初詣に、1月の後半になってやっと行くことができた。なんとも罰当たりなことだが、これでようやく気分がすっきり。

ところで、最近の趣味のひとつがウォーキングで、毎日ではなく、できる範囲ではあるけれど、もう半年くらい続けている。我が家のある東京都練馬区石神井公園から西東京市の東伏見までは、距離にして4.5キロほど。今までは電車や自転車で行っていたけど、ちょうどいい距離じゃないか(帰りのことを考えなければ)。と、今回は歩いて向かってみることにした。

スタスタと早足で歩くこと約45分。神社に到着し、無事お詣りを済ませる。さて、どう帰ろう。最寄りの東伏見駅まで行って電車で自宅方面に向かってもいいけれど、天気もいいし、もう少しぶらぶら散歩してみてもいい気分だ。ちょうど昼前だからお店も開きはじめるだろうし、どこか気になる店でお昼を食べて帰ろうか。そこでなんとなく、西武新宿線でひとつ先の西武柳沢駅方面へ向かってみることにした。

ところが西武柳沢近辺は飲食店の数がそれほど多くなく、しかも微妙に時間が早いから、ここぞという店が見つからない。どうしようかな〜とスマホで地図を開いてみると、さらにもうひとつ先の田無駅も、すでにそんなに遠くはなさそうだ。田無は好きな街のひとつで、なかなか栄えているから、きっと選択肢も見つかるだろう。行ってみるか。

意外とすぐに田無駅が近づき、味のある飲み屋街などが現れだしたあたりで、ついに気になる店を発見。


昭和レトロな佇まいに、ほんのりアメリカンテイストも加わる「ムサシノコーヒー」というカフェ。店内の様子は完全に古い喫茶店だけど、看板の店名の文字は今風でもあるし、どんな店なんだろうか。

さらに外観をよく見てみると、こういうタイプの店でありながら酒類も充実しているらしく、窓に大きく「キリン一番搾り ジョッキ¥550」の文字が。そういえば昨年の初詣は三が日のうちに行ったから、境内に屋台がたくさん出ていて、そこで初詣完了記念のビールを飲んだのだった。そうか、今年はここだったか。

ひとり勝手に得心し、店内へ。


メニューはかなり幅広く、トースト、パスタ、グラタンなどなど、やはり王道の喫茶店系料理がメインのようだ。また、パフェや3色のクリームソーダをはじめとしたスイーツ系もいろいろ。当然、こだわりのコーヒー各種も揃っている。

さらに個人的に嬉しいのが、アルコール系メニューの想像以上の豊富さで、どれも税込550円の「BAR FOOD」なんてコーナーまで。しかも、バーフードと一緒に頼めばアルコール類が100円引きになるなんて、なんて酒飲みにも優しい店なんだろう。全10種のなかから「ローストビーフ」を選び、ありがたくいただきます!


広々とした店内は、やっぱり完全に老舗の雰囲気。ゆったりとしたオールディーズがBGMに流れ、ラックには雑誌や新聞が置いてあって、暖房がぽかぽかで、ものすごく居心地がいい。実際、地元民と思われる人たちが、コーヒーやランチを前に、それぞれリラックスして過ごしている。

そんななか、地元民ではない自分は、いきなりキンキンの生ビール。しかもローストビーフをつまみに。

ローストビーフはかなり大きめにカットされたものが6枚と、かなりのボリューム。とろんとろんに柔らかく、口に入れると牛肉の良い香りが広がり、ガーリックの効いた甘酸っぱいソースもあいまって幸せな味だ。そこにビールを流し込む! ひたすら最高。

当然、これだけでは終われないので、あらためてランチメニューを吟味する。すると、朝食にも酒のつまみにも良さそうな「焼きサンドセット」というのが気になるな。いわゆるホットサンドというやつだろう。スープかサラダと、ゆで玉子と、ドリンクがついて858円。焼きサンドは、ハムチーズエッグ、ツナマヨ、ベーコンポテト、チキンカレー、チーズハンバーグの5種類から選べるのも楽しい。ここはがつんと、チーズハンバーグか。


さて、到着した焼きサンドセット。まず、中央にゆで玉子用のカップがある専用のプレートがものすごくかわいい。欲しい。キャベツとコーンのサラダに、大きくカットされたパイナップルが添えてあるのもいい。そして斜めに焼き目のついたチーズハンバーグサンド。単なる食事という以上に、無性に心ときめいてしまうセットだ。


さっそく熱々の焼きサンドにかぶりつくと、さくふわ食感のなかに閉じ込められていた食パンの魅惑的な香りが爆発的に広がる。懐かしい味わいながらほんのりスパイシーさも感じるハンバーグも、ミルキーでまろやかなチーズも、ものすごく合っている。 まぁ、そもそもホットサンドって、家でなにを挟んで焼いてみてもたいていうまいことは知っているんだけど、やっぱり喫茶店で食べるのは格別だな。 サラダや、塩をたっぷりふったかたゆで玉子もそれぞれに美味しく、思わず「グラスワイン(赤)」(429円)も追加してしまった。


というわけで、初めてのコーヒー店で、コーヒーも飲まず優雅な昼飲みをしてしまったわけだけど、とにかく心機一転。今年もあらためて、仕事や生活や飲酒をがんばっていこう。 そういえばお会計時に聞いてみたところ、やはりここは、惜しまれつつ閉店してしまった老舗の喫茶店を改装して始めたお店で、今年で3年目になるのだそう。きっと前の店の常連さんで、雰囲気を残してくれたムサシノコーヒーの開店を喜んだ人もたくさんいるのだろう。 ここからまた末長く、歴史を重ねていってほしいと強く思った。

取材・文・撮影/パリッコ

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