20代ギフテッド夫婦が明かす幼少期の“人との違い”。「ギフテッド=ものすごい天才」ではない

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2025年02月18日 09:20  女子SPA!

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女子SPA!

Naoyaさん・Maiさん夫妻(以下、写真は本人提供)
こんにちは、コラムニストのおおしまりえです。

「ギフテッド」と聞いたとき、皆さんはどんなイメージを抱くでしょうか。

「非凡な才能を持った子」
「早期に何かしらの才能を発揮する子」
「IQが高い天才的な存在」

 などなど。ポジティブなイメージが先行することが多いようです。

 一般的に、同世代と比べて知的能力が高かったり、特定分野に際立った才能を持っていたりする子どもがギフテッドと呼ばれます。しかし、ギフテッドによく見られる特性があり、それゆえ配慮や支援が必要な子どもも存在し、誰もがすんなりとポジティブな才能を発揮できるわけではないといいます。

 今回は、ギフテッド当事者であり、現在ギフテッド特性のある子のためのフリースクール・個別指導塾「Lagoon」を運営するMaiさん(29歳)と、その夫でご自身もギフテッドのNaoyaさん(28歳)のお二人に、幼少の頃のお話や、特性との付き合い方についてお話を聞きました。

◆ギフテッドであると気づいたきっかけ

 親になると、誰しも一度は「自分の子どもは特別なのではないか」と、良くも悪くも想像することがあるでしょう(私はしょっちゅうあります!)。

 そうした気持ちが湧いたとき、便利な言葉として「ギフテッドじゃないかな?」と、安易に想像するケースもあると聞きます。しかし、一概に「ギフテッド=天才的に優秀な子」というわけではないといいます。

 まずはお二人がいつ、どんなキッカケで自身がギフテッドであることに気づいたのか教えていただきました。

Maiさん「私は現在29歳ですが、ギフテッドの概念に出会い、自分がそうであると知ったのは、25歳頃です。当時大学で教育学を学び卒業後、IT系の企業に勤めていたとき、知能検査の『ウェクスラー式知能検査(WAIS)』を受けるキッカケがあり、自分の特性を知ることとなりました。

そこから自分と同じような特性を持つギフテッドのお子さんの支援をしたいと考え、児童発達支援のスタートアップに転職し、2年半前に独立。現在のフリースクール運営へとつながっています」

Naoyaさん「僕は現在、2つの活動を行っています。1つは機械学習を専門とするフリーランスエンジニアとして、リモートで仕事を行っています。もう1つは、現在南アフリカのケープタウン大学で博士課程に在籍しています。チーターの動きを工学的に利用するために、動物の観測技術やデータ処理について研究を行っています。

僕自身は教育は専門ではなく、妻がギフテッドの概念を知る中で、一緒に「ウェクスラー式知能検査」を受け、そこでギフテッドに当てはまるんだなということを知りました」

◆当事者が語る「ギフテッド」の定義

 ギフテッドという言葉が知られてきている現代ですが、定義をきちんと理解している人はまだ少数です。

 聞き手である筆者も、最初は「IQ130以上の天才児」など、ふわっとしたイメージを抱いていました。しかしギフテッドの中には、知的な高さと発達障害を持ち合わせている人もいて、それを「2重に特別な(Twice-Exceptional)」という意味の「2E」と呼ぶこともあると知りました。

 Maiさんはギフテッド当事者であり、ギフテッドを支援する立場でもあるわけですが、正しい定義と、実際どんなイメージを抱かれることが多いのか聞きました。

Maiさん「『ギフテッド』と聞くと、日本では『ものすごい天才』みたいなイメージが強いですが、実際にはそうでないことを、当事者であり支援に関わる立場から伝えたいです。

『ギフテッド=IQ130』とか『高IQ』とイメージされがちですが、ギフテッドには統一された共通の定義がありません。諸外国でも地域や団体によって定義が異なります。ですが一般的には、同世代と比べて高い知的能力と、特有の性格特性があることをもって、『ギフテッド特性がある』と認識されるケースが多いです。

人間のIQの平均を100としたときに、統計的に『稀な値』である上位2%くらいを考えると、IQ130が目安であるため、かつてはIQ130が基準として語られていました。現在は、本人の性格や特性、行動観察の結果も踏まえて判断する傾向があり、IQの高さだけでギフテッドの判断をすることは少なくなってきています」

◆振り返ると感じていた人との違い

 お二人はギフテッド特性を持つことを知ったのは大人になってからとのことですが、幼少の頃はどんな性格だったのか、また当時からいわゆる“才能”みたいなものは発揮していたのでしょうか。

Naoyaさん「僕は小さい頃から、感情のコントロールがとても難しい子どもでした。同時に幼少期から論理性や合理性を重んじる性格で、2つの特性により、折り合いがなかなかつけられず、友達や親と価値観が合わなくて苦労をしてきた記憶があります。論理的な話をしたとしても、子ども同士では通じないし、大人と話したって常識や一般的な行動が優先されて、『この子は何言ってるの!?』で切り捨てられてしまうことが多いですよね。このとき、自分は納得できず、子どもなので感情的にワーッとなってしまうんです」

Maiさん「私はOE(過度激動)と呼ばれる、感情や行動の激しさがある子でした。人一倍物事に反応するので、ポジティブな側面もネガティブな側面も増幅される感じです。ポジティブな部分でいうと、嬉しいことはワーッと喜ぶし、これやってみたいアレやってみたいと、好奇心旺盛で没頭する感じです。一方ネガティブな部分で言うと、人から言われたことや出来事を重く捉える傾向にあります。人が怒られているのを聞くのもしんどいし、1回落ち込むと回復に時間がかかるのも特徴です」

◆ワーキングメモリが低く苦労が多かったNaoyaさんの幼少期

 振り返ると、お二人共“人との違い”は感じていたようです。それにより、人よりラクだったことや結果が出やすかったこと、いわゆるギフテッドとしての良い成果のようなものは、あったのでしょうか。

Naoyaさん「僕の場合、子どもの頃は“ほとんどのものが不得意”でしたので、人よりラクに結果が出るようなことは、小中学校時代はなかったです。知能検査後に知ったのですが、僕は特性としてワーキングメモリ(作業や動作に必要な情報を一時的に記憶し、処理する能力)が低いので、暗記系が不得意だったんですね。

だから小中学校での得意科目は特になく、一方で高校から高等専門学校(高専)に行くことで、工学系の専門教育が自分に合っていました。高専は暗記重視ではなく原理を理解しているかが重要だったのと、実務や経験を重んじる傾向があったので、そこが自分の特性とマッチしていたんですね」

Maiさん「私は人より勉強面での苦労はしていないんですが、いわゆるギフテッドとして描かれる平均的な像とはまた違うんですよね。例えばギフテッド特性のある人は、頭の回転は早いけど単純作業や興味のない作業が苦手な人が多いとよく言われています。

でも私は、漢字ドリルとかコツコツ問題を解くのも得意でした。だから学校の勉強も問題なくこなせたし、また好奇心旺盛だったので、実行委員とかもやるタイプで、先生の評価を得やすい子どもではありました。『全国◯位』みたいなわかりやすい結果はありませんが、頑張ってきたことはそれなりに結果が出ていた幼少期だったと思います」

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 ギフテッドと一言で表しても、その特性や歩んできた道のりは大きく異なります。

 当事者の方と直接関わる機会がないと、「ギフテッドは生まれつき頭の良い子」といったイメージが一人歩きになりやすいですが、お二人の話からは、苦労も多かったことがわかります。

【Mai】
ギフテッド特性ある子のためのフリースクール・個別指導塾「Lagoon」代表。自身もギフテッド特性を持ち、幼少期には不登校を経験。SNSでは当事者のリアルや役立つ情報を発信し、総フォロワー数は1.8万人。JAPAN MENSA会員。YouTube:@MAI_gifted

【Naoya】
ケープタウン大学博士課程在学中。野生動物の動作解析をロボット制御に応用する研究を行う傍ら、フリーランスとしてIT企業の技術開発、コンサルティングに従事。2018年度に経済産業省の未踏IT人材発掘・育成事業に採択、スーパークリエータ認定を受ける。

<取材・文/おおしまりえ>

【おおしまりえ】
コラムニスト・恋愛ジャーナリスト・キャリアコンサルタント。「働き方と愛し方を知る者は豊かな人生を送ることができる」をモットーに、女性の働き方と幸せな恋愛を主なテーマに発信を行う。2024年からオンラインの恋愛コーチングサービスも展開中。X:@utena0518

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  • おおしまりえの「いっちょかみ」は相変わらずだなぁ。
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