「万年いじめの対象でした」20代ギフテッド夫婦が明かす“子ども時代の生きづらさ”

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2025年02月21日 09:20  女子SPA!

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 こんにちは、コラムニストのおおしまりえです。

近年よく耳にする「ギフテッド」という言葉。ギフテッドとは一般的に、同世代と比べて知的能力が高かったり、特定分野に際立った才能を持っていたり、ギフテッドによく見られる特性を持つ子どものこと。

 ギフテッド特性を持つ人の多くは、成長過程で周りとの違いを覚え、”生きづらさ”を感じることがあると言います。また、中には生きづらさに飲まれ、社会に上手く馴染めずに大人になるケースもあるとか。

 ギフテッドであるMaiさん(29歳)のYouTubeチャンネルでは、同じくギフテッドの夫・Naoyaさん(28歳)とMaiさんの2人が、成長過程で苦労したエピソードも語られています。3本目となる今回は、子ども時代に体験した苦労を教えてもらいました。

◆不登校をきっかけに特性との付き合い方を身につける

 ここまで、お二人の特性や幼少の頃の性格を中心に、お話を聞きました。今回はその特性だからこそ苦労したお話を中心に聞いていきます。

Maiさん「私は中学2年のとき、不登校になりました。成長過程でだんだんとクラスメイトから浮いてしまい、いじめのターゲットになったのが大きな理由です。もともと小学生まではリーダーシップを発揮するのが好きで、その流れで中学でも、実行委員や合唱コンクールの指揮者、体育祭の応援団など、いろいろとやっていました。

でも中学になると、人間関係は複雑になっていきますよね。その中で、私の中の“ワンマンっぽさ”みたいな振る舞いが浮いてしまい、いじめに繋がっていきました。不登校になったのをキッカケに、私自身も少しずつ、自分の気質について考えたり、集団でどのように振る舞えば良いのかを考えるようになりました」

「自分のどこを出せばいいのか」を中学生が見直せることがすごいと感じますが、今現在の人間関係はどうでしょうか?

Maiさん「今は『ここは周りとバランスを取ったほうがいいかな』とかを考えて動けるので、人間関係の築き方は上手くなっていると思います。とはいえ、私の根本的な気質は変わっていません。何かに対してワーッと気持ちが高まるとそれをやらずにはいられないし、現在の事業、フリースクール・個別指導塾『Lagoon』も、自分の気質が強みとして活きていると感じます」

◆「なんでそんなに目立とうとするの?」と言われてきた

 結果として、不登校の経験は自分の特性との付き合い方を身につけることに繋がったとはいえ、当時はしんどかったのではないでしょうか。ご両親の反応についても聞いてみると……。

Maiさん「両親は、そもそもいじめについては気づいていませんでした。いじめを伝えた後も、『学校には行きなさい』みたいな感じでしたね。ただ私は、一度決めたら親の言うことも聞かない頑固な性格だったので、親も『じゃあどうしようか』となり、結果として私のことを考えてくれるようになりました。

いじめとは少し話は逸れますが、両親は私と違って目立つことを避ける性格なので、小学生頃からずっと『普通になりなさい』『なんでそんなに目立とうとするの?』と言われてきました。私としては、やりたいことをやっているだけなのですが、親からすると『ただ目立とうとしている変わった子』に見えていたようです。『普通になりなさい』って親から言われても『困ったなあ』という感じでしたね。とはいえ、周りに合わせなきゃって感覚はあったりもして、でも、やりたいことが上回ってしまう、みたいな状態でした。

幸いだったのは、私にとってのやりたいことが、◯◯委員とか、大人に評価されやすいことだった点です。親は評価してくれなくても、周囲は応援してくれるので、気に病まずに済みました」

◆いじめられてもおかしいのは相手!貫く論理性

 ギフテッド特性によって人間関係に難しさを覚える話は、当事者やその親から語られることが多い印象です。そもそも一般的な子どもたちと違う特性があるので当然なのですが、こうした問題は、ギフテッドに限らず、日本の横並び教育の弊害でもあるように感じます。

 続いて、夫のNaoyaさんの子ども時代に苦労した話を教えてもらいました。

Naoyaさん「僕も苦労したのは、いじめの対象になったことですね。僕の場合は、万年いじめの対象でした。その中でも、小学校高学年から中学くらいにかけては、周囲も社会性が成長途上のため、特に激しかったです。

僕は黙っていじめられるタイプではなく、喧嘩は買ってやり返すタイプでした。僕としては、周りの論理が間違ってるのは明確だったので、いじめられながらも『この人たちもいつかは僕の言ってることがわかるだろう』という自信はありました。本来学校に通えなくなるのはいじめる側であるべきだと考えていたので、学校にも通い続けました」

「Naoyaさん強い!」思わず唸ってしまいましたが、Naoyaさんとしては、強いとかそういうことではなく、あくまでも自分の論理に従い続けた結果なのだといいます。この時、ご両親のリアクションや支えなどはあったのでしょうか。

Naoyaさん「親のリアクションは普通というか、特に対処はされませんでした。もちろん両親なりの苦労はあったと思いますし、クラスメイトと喧嘩したときに学校に呼び出されるようなこともありました。ただ、私の目線で見たときに、いじめがわかってから変化があったとかは、ないように感じています。

先ほど、学校にも通い続けたと言いましたが、僕が受けたいじめは、教科書に落書きがされるとか、親から見て、わかりやすいアラートを感じるような行為がなかったんです。そもそも僕の場合、落書きをされる前に喧嘩が勃発する感じでした。

親の接し方として良かったなと感じていることとしては、頭ごなしに怒るタイプの人ではなかったことです。喧嘩の際も、僕が手を出していたとしても、まず僕の主張を聞いてから判断してくれていたので、そこは良かったです」

◆ギフテッド特性を発揮できる人とできない人の違い

 ギフテッド特性を持つ子に限らず、能力が高いがゆえに周りと馴染めず、疎外感を覚えることを「浮きこぼれ」と言うそうです。こうした浮きこぼれの問題は、だんだんと知られてきている印象ですが、ギフテッド当事者の2人から見て、「浮きこぼれ」になる人とそうでない人には、どんな違いがあり、何を意識できると良いのでしょう。

Naoyaさん「僕自身は経験からしか語れませんが、無理して周囲に合わせるのは良くないのではと思います。特性が明らかに違うのに合わせ続けると、どこかで無理が生じて問題が表面化していきます。無理に合わせてやり過ごすよりも、環境を変えることを考えるほうがいいんじゃないかなと。僕の場合は高専に行くことでそれが叶いましたし、他にも海外を目指すとかも良いかもしれません」

Maiさん「浮きこぼれの問題は、なかなか難しいところですよね。私自身は浮きこぼれたことは大変でしたが、長い目で見ると「程良い挫折経験」を積めたことは人生のプラスにもなっていると思います。周りと合わなくて不登校になる経験も、自分自身で内省するきっかけになりましたし、両親やカウンセラーなど多くの方のサポートを通じて、糧にすることができました。

あとは、挫折を感じたときに、自分をわかってくれる人や場所があることは大きいのではと思います。私の場合は、5〜20歳まで合唱団に所属していました。合唱団は自分を取り繕わずにいられる場所だったので、学校生活で悩んでも安心できる場所として機能していました」

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「人と違う」ということは、一般論では良いことと見られる場面も多いです。しかしMaiさんとNaoyaさんの話からは、規格外であればあるほど、実生活では苦労が多いことがわかります。

 今回は、自分の子がギフテッドかどうかといった問題に限らず、子どもを育てる親として、子の特性を見ていくこと、寄り添うことの重要性を感じる話だったように思います。

【Mai】
ギフテッド特性ある子のためのフリースクール・個別指導塾「Lagoon」代表。自身もギフテッド特性を持ち、幼少期には不登校を経験。SNSでは当事者のリアルや役立つ情報を発信し、総フォロワー数は1.8万人。JAPAN MENSA会員。YouTube:@MAI_gifted

【Naoya】
ケープタウン大学博士課程在学中。野生動物の動作解析をロボット制御に応用する研究を行う傍ら、フリーランスとしてIT企業の技術開発、コンサルティングに従事。2018年度に経済産業省の未踏IT人材発掘・育成事業に採択、スーパークリエータ認定を受ける。

<取材・文/おおしまりえ>

【おおしまりえ】
コラムニスト・恋愛ジャーナリスト・キャリアコンサルタント。「働き方と愛し方を知る者は豊かな人生を送ることができる」をモットーに、女性の働き方と幸せな恋愛を主なテーマに発信を行う。2024年からオンラインの恋愛コーチングサービスも展開中。X:@utena0518

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  • 本人の目線の経験談を読むだけでも「こりゃ嫌われるだろうなあ」という感想しか浮かばないのはなんともはや…。それでも我が子をギフテッドにしたい親は山ほどいるんだろうな。
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