最高裁=東京都千代田区 鹿児島県大崎町で1979年、男性の遺体が見つかった「大崎事件」の第4次再審請求で、殺人罪などで懲役10年が確定し服役した原口アヤ子さん(97)側の特別抗告について、最高裁第3小法廷(石兼公博裁判長)は棄却する決定をした。25日付。再審開始を認めなかった鹿児島地裁と福岡高裁宮崎支部の決定が確定した。
裁判官5人中4人の多数意見。学者出身の宇賀克也裁判官は再審開始決定をすべきだとの反対意見を付けた。同事件の再審請求で、最高裁の裁判官が開始を支持する反対意見を出したのは初めて。
確定判決によると、原口さんは79年10月12日深夜、元夫(故人)ら親族と共謀し、義弟の男性=当時(42)=の首をタオルで絞めて殺害し、翌日未明に遺体を牛小屋の堆肥の中に埋めた。男性は殺害される前、泥酔して側溝近くに倒れているところを近隣の住民2人に発見され、自宅に運ばれた。
弁護側は、男性が側溝への転落事故で頸髄(けいずい)を損傷するなどして自宅に運ばれた時点で死亡していたとする救急医の鑑定結果などを基に、原口さんは殺害していないと訴えていた。
これに対し石兼裁判長は、鑑定の証明力は事故の可能性が否定できないという限度で認められるにとどまると指摘。確定判決の認定に合理的疑いが生じるとまでは言えないと判断した。
事件では第1次請求の地裁と第3次請求の地裁、高裁支部が再審開始を認めたが、いずれも上級審で覆された。