トランプ米大統領=3日、ワシントン(EPA時事) 【ワシントン時事】トランプ米政権が隣国のカナダ、メキシコからの輸入品に25%の関税を発動し、友好国にも容赦しない厳しい姿勢を示した。トランプ大統領は近く、欧州連合(EU)に追加関税を課す考え。対米輸出に有利な円安を問題視しており、日本も標的となるリスクがくすぶる。
「円や人民元を切り下げられると、米国は不当に不利な立場になる。関税は簡単に(問題を)解決する手段だ」。トランプ大統領は3日の記者会見で、日本を名指しした上で円安を批判。日本に対する追加関税をほのめかした。
米政権は4月2日に、関税や非関税障壁を設けている貿易相手国・地域に関税を課す「相互関税」の概要を明らかにする。非関税障壁の一つとして、貿易相手の為替政策も検証する方針だ。
米政府は、日本の車検制度や安全基準などを米国車の輸出拡大を阻む障壁と見なしてきた。高い農産物関税も対日貿易赤字の要因と捉えており、日本が相互関税の標的になる可能性は消えない。
トランプ氏の矛先は、米国が巨額の貿易赤字を計上するEUにも向いている。「米国車も農産物も受け入れない」と不満を口にし、高い付加価値税(消費税に相当)や、一部加盟国による米巨大IT企業への課税を批判。EUからの輸入品に25%の関税を課す可能性に言及している。
トランプ氏は、高関税で外国製品の流入を食い止め、製造業を米国内に呼び戻して雇用と景気の拡大を図るシナリオを描く。だが、関税は米国内の輸入業者が払い、販売価格への転嫁を通じ、米消費者が負担する。
カナダとメキシコとの貿易額は米国の全貿易額の3割を占め、取引品目は自動車やエネルギー、生鮮食品、日用品まで幅広い。米ピーターソン国際経済研究所の試算では、中国も含めた3カ国の産品への関税で、米家計の負担は年間1200ドル(約18万円)を超える。
このため、トランプ氏の高関税政策は対象国の経済に打撃を与えるだけにとどまらない。米国が輸入する物品の価格上昇を通じ、消費や景気が腰折れするという形で米国に跳ね返るリスクを高める。米資産運用ティー・ロウ・プライスのブレリナ・ウルチ氏は「世界的なインフレと成長鈍化、貿易の停滞を引き起こす」と危ぶんでいる。