夜の歌舞伎町=東京都新宿区(AFP時事) 風営法改正案が閣議決定された背景には、近年、女性客に多額の借金を負わせ、返済のため売春させるなどして社会問題化した悪質ホストクラブの存在がある。支援団体は「ホストが心理的に、風俗店はスカウトを利用して身体的に、女性を拘束し搾取している」と警鐘を鳴らす。
これまでに約800件の相談に乗ってきたという東京・歌舞伎町の支援団体「青少年を守る父母の連絡協議会」(青母連)の田中芳秀事務局長によると、20歳前後の女性がホストとトラブルになるケースは、新型コロナウイルス感染拡大が収束した2023年5月以降に増加。コロナ禍でホストクラブが休業中、ホストがマッチングアプリやSNSで営業活動に力を入れるなどしたためだ。
母親からの相談をきっかけに、青母連の支援を受けるようになった女性(23)は23年ごろ、マッチングアプリで知り合ったホストと親しくなった。当初は仕事の内容を聞かされていなかったが、店に誘われ、次第に通い始めた。
「一緒に頑張ってくれるとうれしい」「結婚しよう」。甘い言葉を掛けられるうちに好意を抱き、東京・歌舞伎町で同居を始めた。当時は会社勤めだったが、数カ月後、スカウトを紹介され、店に通う金を工面するため風俗店などで働き始めた。
昨年12月ごろ、妊娠が発覚すると、ホストの態度は豹変(ひょうへん)。「本当に俺の子か、堕ろせ」などと脅し、抗議しようと店に来た女性を出入り禁止にした。ショックを受けた女性は、「死にたい、飛び降りたい」などと頻繁に母親に言うようになった。ホストのために使った現金は約2年間で計約7000万円に上った。
田中事務局長はホストクラブにのめり込む若い女性について、「何かにつまずいた時、心の隙間にフッと入ってくる」と分析する。風営法が改正されれば、悪質な取り立てや接客の抑止が期待できる一方、ホストクラブと似た営業手法のまま、バーなどへ業態を変える店もあるのではと指摘。「いたちごっこになる可能性がある」と懸念を示した。