
『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(41)
大阪マーヴェラス 成瀬ももか
(連載40:大阪マーヴェラス宮部愛芽世が追いかけ続ける姉・藍梨の背中 白鳥沢学園1年生に重ねる高校時代の葛藤>>)
「忍耐力はあるほうというか......すぐにはできないタイプだったんです。ゲーム感覚で競ってやる練習も、最初に終わったことがなくて(笑)。できている人を見て、それを盗んでから自分のものにしていく。不器用だったからこそ、身につけられたものもあるかもしれません」
大阪マーヴェラスのミドルブロッカー、成瀬ももか(20歳)は、自らのバレーボール人生をそう分析した。
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「献身性」
言葉にすると陳腐だが、それに身を捧げる実直さが彼女を成長させた。
東京都東村山市で少女時代を過ごした成瀬は、「母がママさんバレーをしていた」ことがバレーの原点にある。当初は「練習場に連れて行かれても、あまり興味はなかった」という。バレーを始めてからも最初は腕が痛く、疲れ果てていた。「小学校のチームの先生が優しくて。もし怒鳴る方だったらやめていたかも」と振り返る。
「当時から身長は大きく、スパイクを打つと点が取れたり、できなかったことが試合でできたり。それが楽しくて続けました」
成瀬はそう言うが、中学に進学する頃にはバレーに目覚めていた。
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「『バレーを続けるなら強いところで』と思いました。お母さんも春高バレーに出ていたので、"お母さんに勝ちたい"という思いもあって。春高に行くために(中高一貫の)八王子実践中学に進むことを決めました。朝6時半に家を出て、自転車で地元の駅まで行って。通学には1時間半以上かかりましたが、苦ではなかったですね。今思えば、元気だったなと思います」
彼女は相好を崩した。
八王子実践では高校卒業までの6年間、ほぼ同じメンバーだった。高校から新しくバレー部に入ったのは2人だけ。その2人も中学時代に練習試合で戦っていたこともあり、自然と連係は高まって、"1点の重み"を共有した。
「中学3年の全国大会決勝で、24−19点から逆転されてしまって。それからは『1点を取り切るまで油断しない』ということが全員に浸透しました。逆に高校3年時のインターハイでは、前年の春高で優勝した就実相手にあと1点まで追い詰められても、"まだいける"っていう謎の自信があった。『大丈夫』を合言葉に逆転勝ちしました。1点で負けることも勝つこともあるバレーってすごい、と毎回思います」
成瀬はバレーの奥深さに魅入られた。だからこそ、我慢強く取り組むことができたのだ。
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「基本、運動音痴なんです。子どもの頃から私を知る人からも、『スパイクを空振りして、ヘディングしていた人がよく育ってくれた』と言われます(笑)。アンダーパスなども前に飛ばなかったし......。でも、何回もやって身につけられました」
彼女は楽しそうに言う。明朗闊達な不器用さ。それを武器に、SVリーグでも走り続ける。
「外国人選手の高さには敵わないので、連係のところを考えて、守りの戦略の中心になりたい。ミドルは真ん中で、守備の要にならないといけないですし、頭を使って挑みたいです!」
中学2年からミドルブロッカーとしてプレーしてきた。頭を使ってチームを助けるのが理想だ。20歳の成瀬は、自身の可能性を信じている。
「日本代表としてパリ五輪も戦った林琴奈さんがチームメイトにいて、代表の"空気"のようなものも感じられるようになりました。そのレベルとはまだ差がありますが、中学、高校の時ほどの差はない。遠かったけど、少し近づいてきていると思います」
成瀬はいつも一歩一歩、ひたひたと目標に近づいてきたのだ。
【成瀬ももかが語る『ハイキュー‼︎』の魅力】
――『ハイキュー‼︎』、作品の魅力は?
「リアルですね! バレーボーラーの心情がしっかりと描かれていて共感できます。プレー中に、あんなに考える時間はないですけど(笑)」
――共感、学んだことは?
「『このプレーをやってみたい』となる漫画です。月島(蛍)が『100点に繋がる75点がリード・ブロック』って言う場面は『その通りだな』となりました。白鳥沢学園の天童(覚)が天才的な感覚で120点のブロックで止めるのも格好いいけど、それは0点になるリスクもある。だから、ヤマを張らない75点のリード・ブロックというのは、『わかってるな』って思いました(笑)」
――印象に残った名言は?
「音駒のクロ(黒尾鉄朗)のセリフで、『リード・ブロックは我慢と粘りのブロックであると同時に 最後に咲(わら)うブロックだ』ですかね。いかに我慢を続け、献身的にプレーできるか。それは自分にも言い聞かせています。感覚的に『こうくるかも』という時もあるんですが、その予測が外れた時は『ごめん』ってなるので......結果的にはリード・ブロックが勝つ、という感じですかね」
――好きなキャラクター、ベスト3は?
「1位は烏野の菅原(孝支)さん。烏養(繋心)監督に『(勝ち続けるには)迷わず影山(飛雄)を選ぶべきだと思います』って直談判するシーンがあるんですが、みんなスタートから出たいから普通は言えません。『人としてすごいな』って思います。でもコートに入ったら、影山と違うタイプで、それぞれの選手がどんなトスが好きかわかっている。そんな選手になりたいです。
2位はクロ。なんでもできるのが憧れます。3位は迷いますが、梟谷学園の赤葦(京治)で。エースの木兎(光太郎)をうまく転がしているし、スパイカーのことを一番わかっていますね。マーヴェラスのセッターもすごいですけど、あんなセッターともやってみたいです(笑)」
――ベストゲームは?
「烏野vs白鳥沢学園です。烏野はチームで戦っていましたよね。リベロの西谷(夕)が『3本 下さい』と言ってウシワカ(牛島若利)のボールを拾ったシーンもいい。周りが信頼しているから、ミスしても拾わせた。月島のシャットも、同じミドルとして『これ、自分にもできるんじゃないか。やってみようかな』って思ったりします(笑)」
【プロフィール】
成瀬ももか(なるせ・ももか)
所属:大阪マーヴェラス
2004年5月10日生まれ、東京都出身。178cm・ミドルブロッカー。母親の影響で小学校からバレーを始める。八王子実践中学・高校と進み、高校3年時の2022年のインターハイで3位に。同年には、アジアジュニアバレーボール選手権の候補選手にも選ばれている。2023年、大阪マーヴェラスに入団した。