同性婚カップル「寄り添ってくれた力強い判決」 違憲判断に喜び

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2025年03月25日 19:16  毎日新聞

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毎日新聞

同性婚を認めない規定を「違憲」と判断した大阪高裁判決に笑顔を見せる原告の坂田麻智さん(左)と坂田テレサさん=大阪市北区で2025年3月25日午前11時40分、大西岳彦撮影

 唯一の合憲判決くつがえる――。同性婚を認めない現行制度は憲法に反するとした25日の大阪高裁判決を受け、同性カップルらは胸を張って横断幕を掲げた。5件連続となる違憲判断。当事者らは手を取り合って喜び、「望んでいた判決。国会は立法に着手を」と声を上げた。


 「裁判官が私たちに寄り添ってくれた。力強い判決だった」。訴えを起こした坂田麻智さん(46)と米国籍の坂田テレサさん(41)は判決後、大阪市内であった記者会見で笑みを浮かべた。


 2人は京都市で2歳になった長女と暮らしている。3年前の夏、友人から精子提供を受けたテレサさんが出産。長女は「ママ、抱っこして」と話せるようになった。


 2008年に大阪で知り合い、すぐに交際が始まった。米国で同性婚が法制化された15年、テレサさんの出身地・オレゴン州で結婚した。その証明書を添えても、京都市の区役所で婚姻届は不受理とされた。19年、司法に救いを求めた。


 同性カップルは不利益が少なくない。法定相続人になることができず、配偶者が対象となる税制上の優遇措置は受けられない。「もし事故にあったら病院は連絡してくれるのか」といった不安もつきまとう。


 そして、2人が目の当たりにしたのが長女の国籍の問題だった。法律婚が認められていないことから、テレサさんがシングルマザーとして産んだことにされている。長女は米国籍で日本国籍はない。


 麻智さんは言う。「この子はきっと日本人として育つでしょう。けれど、住んだことのない米国の国籍を持ち、アイデンティティーが揺らぐかもしれない」


 愛娘の誕生を喜ぶ間もなくショックな現実があった。出生届の親の欄。麻智さんは自らの名前を書かせてもらえず、長女の漢字登録はできなかった。行政から届く書類の名前はローマ字で書かれている。


 1審の大阪地裁判決は「合憲」として訴えを退けつつ、「将来、違憲となる可能性がある」と述べた。「それはいつなのか」。愛娘の成長を感じるに連れ、2人のその気持ちは深まっていった。


 この日の大阪高裁の法廷では、裁判長が判決の要旨を読み上げた。憲法に違反する――。


 麻智さんは「心からほっとした」とその時を振り返り、「出生届に名前すら書けなかった。性的指向を理由に今の婚姻制度を使えないのはおかしいと、判断してくれた」と語った。「望んでいた判決で涙が出た。いろんな家族の形があると理解してくれた」とテレサさんも胸をなで下ろした。


 大阪高裁の審理には娘を抱いて臨んできた。家族が置かれた現実を法壇の裁判官に見てほしかったからだ。少数かもしれないが、この国で生きる3人の家族だと訴えた裁判。違憲判断を得た今、法律で認められたカップルになれるよう強く願う。【土田暁彦、木島諒子、井手千夏】



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