唯一の合憲判決くつがえる――。同性婚を認めない現行制度は憲法に反するとした25日の大阪高裁判決を受け、同性カップルらは胸を張って横断幕を掲げた。5件連続となる違憲判断。当事者らは手を取り合って喜び、「望んでいた判決。国会は立法に着手を」と声を上げた。
大阪高裁判決が違憲判断を導くための支えとしたのは「かけがえのない個人」を重んじる憲法の理念だった。これまでの4高裁と同様に個人の「尊厳」と「平等」をつぶさに検討し、同性カップルを救済した。
同性カップル側が主眼に置いたのは憲法24条だった。この条文は男性優位だった「家」制度から決別して生まれたとされる。24条2項では個人の尊厳と両性の平等に基づく家族法の制定を求めており、大阪を含めた全ての高裁判決は2項に照らして「違憲」との判断を積み重ねてきた。
この日の大阪高裁判決は24条の趣旨について、「かけがえのない個人を尊厳ある主体として重んじ、家族制度の構築を命じている」と読み解いた。
「尊厳」を巡っては、現行の婚姻制度について「自然な性愛感情を抱き合う関係自体を保護している」と解釈。生殖とは一体とされていないことから、同性カップルを同等に扱うことこそ「尊厳の要請にかなう」と述べた。
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続けて「平等」についても現行制度は差別的としたうえで、さらに分析を続けた。同性カップルにのみ法律婚と異なる制度を設けた場合、「性的指向という自然で本質的な属性で、理由のない差異を設けることになる」と指摘。新たな差別を生み出す危惧が拭えないとした。
判決後の記者会見で、同性カップル側の三輪晃義弁護士は「別制度を作れば十分という見解があるが、判決は明確に否定した。今後の法律のあり方に影響を与える」と評価した。
一方、「婚姻の自由」をうたう憲法24条1項に反するとしたのは札幌高裁判決(2024年3月)のみ。条文に「両性」「夫婦」との語句があることから「異性間の婚姻」と解釈されてきた経緯があるが、札幌高裁は「人と人との間の自由な結びつき」を定めていると読み解き、同性カップルの保護につなげている。
一連の訴訟で、同性カップル側は法整備を怠ったとして損害賠償を求めてきた。立法不作為を理由とした賠償責任が認められるのは、国会の明らかな怠慢があった場合など限定的とされる。どの高裁も認めておらず、残された課題となっている。【土田暁彦】
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