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携帯電話の基地局を装い、違法な電波を発射する「偽基地局」(IMSIキャッチャー)の存在が、東京都内や大阪市などで確認されている。X上では「不審なSMSを送り付けられた」という指摘が多く上がっており、キャリア各社も対応に乗り出す事態となっている。
【画像】「ニセ基地局」とみられる車の様子や、電波やくざ氏が公開した電波測定結果、インバウンドを標的にしているとみられる簡体字のSMSなど(計5枚)
●どんな手口?
事態を指摘したのは、Xユーザーの電波やくざ氏だ。同氏は4月12日、「docomoが圏外になった後、回線がGSMになり、突然不審なSMSが送られてきた」という趣旨のポストを投稿。妨害電波(ジャミング)によって「Band3(1.8GHz帯)」以外のdocomoの周波数帯が正常に通信できなくなっている状況を報告している。
仕組みとしては、偽基地局周辺のモバイル回線の電波を妨害してユーザーの端末を一時的に圏外にし、再接続時に偽基地局が発信するGSM(2G)通信をつかませる手口とみられる。日本では利用されていないGSMだが、セキュリティが脆弱で暗号化を簡単に破れるため、攻撃者による“中間者攻撃”に使われやすい。
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【訂正履歴:2025年4月15日午後7時20分 掲載当初、「日本ではすでに利用されていないGSMだが」としていましたが、GSMは日本で利用されていたことがないため、「すでに」を削除しました。お詫びして訂正いたします。】
なお、国内ではこれまであまり存在が知られてこなかったIMSIキャッチャーだが、海外では広く使われている手口という。
さらに同氏は、ネットワークサーチに「CMCC(China Mobile)」「China Telecom」「China Unicom」という、中国の大手通信キャリアのネットワークが表示される様子を公開。また、送られてきたSMSの内容は「海外でのカード決済機能が停止されたため、URLにアクセスするように」という、簡体字中国語のメッセージとなっていた。X上では「偽基地局が中国通信キャリアのIDを偽装し、インバウンド(訪日観光客)をターゲットにフィッシング詐欺を仕掛けている」との指摘もある。
電波やくざ氏によれば、同氏は「基本的には趣味」として電波測定を行っているものの、「多くの業界関係者と関係がある」とのこと。1月3日に銀座で「docomoの通信が圏外になる」という報告が頻発したことをきっかけに独自調査を行っており、これまでに渋谷や新宿、銀座などで偽基地局を確認してきたという。また中国のSNSには、2024年10月頃から日本への旅行者による「不審なSMSを受信した」との報告があったという。
●携帯各社・国の対策は?
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携帯キャリア各社も、偽基地局への対策に乗り出している。ITmedia NEWSが問い合わせたところ、NTTドコモからは「妨害電波の被害情報は認識しており、社内外で連携して対応を進めている」との回答があった。
また、ソフトバンクは「疑わしい事象は把握しており、現在関係各所と連携して情報収集・調査を行い、対策に向けた取り組みを進めている」とコメント。KDDIは「状況は承知している。当社への影響は確認できていないが、今後も状況を注視していく」としている。楽天モバイルは「発生については把握しているが、現時点ではサービスへの具体的な影響などは確認されていない。本件については今後も注視していく」とした。
また、村上誠一郎総務大臣も4月15日の記者会見で「偽基地局」に言及。「都内周辺で携帯電話サービスの混信事案が発生していることは把握している。現在関係機関と連携して対応している」と話した。
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東京や大阪に「偽基地局」か(写真:ITmedia NEWS)219
東京や大阪に「偽基地局」か(写真:ITmedia NEWS)219