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1958年に東京都立墨田産院(88年に閉院)で新生児の時に取り違えられた江蔵智さん(67)=足立区=が、都に生みの親の調査を求めた訴訟の判決が21日、東京地裁で言い渡される。江蔵さんは「自分は一体何者なのか。生みの親がどんな人なのかを知りたい」と訴える。
訴状によると、江蔵さんは46歳だった2004年、体調不良でDNA型鑑定をしたところ、両親とは親子関係がないことが判明した。出生した墨田産院で取り違えられた可能性が高いと考えたが、産院は既に閉院し、運営主体の都は問い合わせに応じなかった。
04年10月に都に損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。1、2審はいずれも産院での取り違えの事実を認め、都に計2000万円の賠償を命じた2審判決が06年10月に確定した。
しかし、その後も都は生みの親を捜すことに協力しなかったため、江蔵さんは21年11月、都を相手に新たな訴訟を起こした。
江蔵さん側は、産院は出生した新生児を取り違えることなく、両親に引き渡す義務を負っているのに現在も果たしていないと主張。同じ時期に墨田産院で出生した人を都が調べ、その人や親に江蔵さんが連絡を取りたがっていることを知らせる文書を送ることを求めている。
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これに対して都側は、生みの親を特定する調査をしなければならない法的根拠はないと反論。「調査をすれば、取り違えとは無関係の人のプライバシー権や、取り違えられた第三者の権利が侵害される可能性がある」としている。
67歳の江蔵さんは、生みの親は育ての親同様に相当な高齢になっているはずだと想像する。「何の落ち度もないのに、このまま会えないのはあまりに理不尽だ。一日も早く生みの親に会いたい」と望んでいる。【安元久美子】
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