証券口座に保有していた日本株が見知らぬ香港株に―。乗っ取りで約210万円の損失を被った会社員の男性(36)は警察に相談したものの、被害届は受理されず「どこに訴えればいいのか」と困惑している。
男性は10年以上にわたり楽天証券を利用。結婚や老後に備えて1200万円相当の日本株を保有し、ほぼ毎日、値動きを確認していた。
被害に気付いたのは3月20日の朝。19日午後の市場が閉まる直前に保有株を全て売られ、売却益で香港の人工知能(AI)関連会社の20万株が購入されていた。すぐに香港株を売却したが、約210万円の損失となった。
同社は偽サイトでのパスワード流出について注意喚起しているが、男性はインターネット上でパスワードなどを入力した覚えはないという。
警察にも相談したが、このケースでは証券会社が被害者に当たるとして、被害届を出せなかった。会社が事件化することも見込めないといい、男性は「犯罪者のやりたい放題だ」と嘆く。同社の担当者は取材に対し、「警察に相談し、必要な協力をしていく。それぞれ個別に検討し対応する」と話した。
同様の被害は他の証券会社でも相次ぐ。SBI証券を利用していた男性(35)は、知らぬ間に口座を乗っ取られて約960万円で中国株を買われていた。
開示された記録を確認すると、自身が居住していない地域からログインがあった。しかし、同社からは「パスワードとユーザーネームが正しい取引であれば補償の対象外」と説明されたという。
男性は「これではいくら会社のセキュリティーに不備があっても対象外になってしまう。納得がいかない」と憤った。