「工場型」のアスベスト被害を巡る17日の大阪高裁判決は、被害者の救済範囲を狭めた国の対応を厳しく批判した。今回と同様に、国側が「除斥期間」の起算点を早める主張をしている訴訟は他にもあるといい、高裁判決は影響を与えそうだ。
今回の大阪高裁判決は、どのような意味を持つのか。
弁護団によると、今回の訴訟と同種の工場型石綿訴訟のほか、中皮腫患者の訴訟も含めて少なくとも8件で、国側は除斥期間の起算点を早めて、被害者の救済範囲を狭める主張を展開しているという。
もっとも、国の説明に説得力があるとは言いがたい。工場型とは別の「建設型」の石綿被害の救済制度である「建設石綿給付金法」では、除斥期間の起算点が「労働局から石綿による健康被害を認める決定(管理区分決定)があった時」と定められている。
国は今回の訴訟で和解基準を見直した結果、除斥期間の起算点が管理区分決定の前段階である「石綿被害の発症が認められる時」にさかのぼったと訴えた。しかし、国側の主張は被害者を救済してきた給付金法の規定と矛盾している。
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大阪高裁判決は「国はじん肺の病変の特質を正しく理解していないと言わざるを得ない」と厳しく批判しており、国に和解基準の見直しの是正を迫った形だ。
今後は国の対応が焦点となるが、弁護団は「国の解釈に合理性も正当性も認められない。除斥期間の起算点の取り扱いを速やかに被害者救済に沿ったものに戻すことが求められる」と訴えている。【岩崎歩】
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