
発達障害者や精神疾患がある人をナマケモノやサルに分類し、「障害者を動物扱い」「差別を助長する」と批判が寄せられている新刊「職場の『困った人』をうまく動かす心理術」の出版元である三笠書房は17日、「取材の申し込みはお断りしている」と取材に応じない姿勢を示した。
【写真】「ミスしちゃうよ〜」バナナ片手にパソコンを触るサルに描かれたADHD当事者
三笠書房は取材に応じない理由として、「取材申し込みが多くあり、対応しきれないため」と説明した。
同書は4月22日発売予定で、ASD(自閉症スペクトラム)はナマケモノ、ADHD(注意欠如・多動症)はサル、トラウマ障害はヒツジなど、発達障害者や疾患に苦しむ人が「職場にはびこる『困った人』」として動物イラストで擬人化され、「『戦わずして勝つ』ためのテクニックが満載!」と謳(うた)われている。本の表紙には、スーツ姿の男性に申し訳なさそうにうつむくヒツジや、会社の外壁にぶらさがるナマケモノが描かれている。自閉症スペクトラムは「すぐにキレる!」「異臭を放ってもおかまいなし」と表現し、ADHDは「机の上はまるでゴミ箱」「同僚の功績を平気で横取り」。トラウマ障害はヒツジで「人の手柄を横取りしてでも評価されたい」「問題が起きたらすべて他人のせい」などと記している。
障害者差別解消法では、障害がある人への「不当な差別的取扱い」を禁止し、事業者に対して「合理的配慮」の提供を義務付けている。発達障害の当事者などから「障害者への偏見を助長する」「ヘイトを煽っている」と抗議の声が上がっており、まいどなニュース編集部は16日、以下の4点について三笠書房と著者のカウンセラー神田裕子さんに質問文を送った。
|
|
1 ASDの方をナマケモノ、ADHDの方をサルなどと動物で表現したことについて、差別を助長する可能性はありませんか。
2 職場にはびこる「困った人」として、ASD、ADHD、愛着障害、トラウマ障害、自律神経失調症、うつ、パニック障害などの精神疾患を伴う障害のある方々を列記していることについて、表現に問題はありませんか。「合理的配慮」を「尻拭い」と表現していることに問題はありませんか。
3 今回の書籍出版に関して、SNSなどで挙がっている批判の声をどう受け止めていますか。
4 出版内容、日程に変更の予定はありませんか。
17日、著者の神田さんが取材に応じ、「私の中に差別意識は全くありません」「『愛らしい表現に』と出版社と話し合う中で、動物になった」などと回答し、出版内容、日程には「特に変更はないと聞いています。出版社とも折り合って決まったこと。私の一存では決められない」とした。三笠書房は質問文に回答しなかった。
あらためて出版内容、日程の変更する可能性について三笠書房に尋ねると「当社の対応を検討中」とした。
(まいどなニュース・伊藤 大介)
|
|