1ドル=139円台を付けた円相場を示すモニター=22日、東京都中央区 トランプ米大統領就任後、外国為替市場では円高・ドル安基調が続く。就任時の円相場は1ドル=155〜156円台だったが、今月22日には東京市場で一時、約7カ月ぶりの水準となる139円台を付けた。米関税政策による景気悪化懸念や中央銀行の独立性を脅かすトランプ氏の発言でドルの信認に揺らぎが生じていることがドル売りの背景にある。
円の上昇は、トランプ氏が相互関税導入を発表した今月2日以降に加速した。高関税措置の導入を公言してきたが、貿易相手国に課す相互関税の税率が「市場関係者の想定よりはるかに高かった」(国内銀行)ことで市場心理が悪化した。
さらに、中国との報復合戦がエスカレートし、互いに100%を超える関税をかけ合う異常な事態に発展。制御不能な米中貿易摩擦激化への懸念から、米国の株式、債券、通貨が売られる「トリプル安」となった。
トランプ氏は金融市場の混乱を踏まえて、9日に相手国・地域別の上乗せ分を90日間停止したが、「米国売り」は継続。さらにトランプ氏が早期利下げを求め、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の解任を検討していると伝えられると、「中央銀行の独立性が脅かされ、ドルの信認が低下するとの不安が広がった」(外為仲介業者)ことでドル売りに拍車が掛かった。
日米関税交渉を巡り、対日貿易赤字の削減を目指すトランプ氏がかねて円安に不満を示していたことから、円安是正が求められるとの警戒感が強まったことも円買い要因になった。
トランプ氏はその後、パウエル氏の解任を否定。24日に米ワシントンで行われた加藤勝信財務相とベセント財務長官との会談では、米側から為替目標の設定などの要求はなく、円高進行はやや和らいだ。だが、米経済の先行き不透明感は強く、「目先、円安進行は限られる」(国内証券)との見方が出ている。