
多くの人に親しまれているパンダ。来年2月までに日本にいる全てのパンダが中国に返還されることになっています。こうした中、中国を訪問している自民党の森山幹事長は、“新たなパンダ”の貸与を求めました。中国の「パンダ外交」の思惑は?そして、日本に再びパンダは来るのでしょうか。
【写真を見る】いたるところにパンダ、パンダ、パンダ…“パンダの町”
和歌山パンダ4頭返還へ “パンダの町”騒然数百メートルもの長い行列の先で、子どもも釘付けになって見ていたのは、ジャイアントパンダです。
和歌山県のアドベンチャーワールドで飼育している4頭のパンダ。しかし、日中の「ジャイアントパンダ保護共同プロジェクト」の契約期間が8月で満了になるため、中国側と協議した結果、6月末に返還することが決まりました。
子ども
「さみしいです。また帰ってきてほしい」
|
|
男性
「パンダを目当てに来られる方が多いので、和歌山にとって大きな打撃かなと」
記者
「アドベンチャーワールドの玄関口、JR白浜駅です。大きなパンダが観光客を出迎える駅で、『パンダ駅』と掲示されています」
“パンダの町”として盛り上げてきた白浜町。
いたるところにパンダ、パンダ、パンダです。
神戸からきた家族
「パンダはイメージがあるよね。(パンダデザインが)残ってたら嬉しいなと思いますね」
|
|
タクシー運転手
「不安ですね、やっぱり。パンダがいなくなるというのは、やはり厳しいと思います」
白浜町の温泉旅館では、返還のニュースが発表され、一晩で通常の約3倍の予約が入ったと言います。
紀州・白浜温泉むさし 女将・沼田弘美さん
「ゴールデンウィーク、5月、6月分の予約になります。通知としては300
件、ひと家族4人とすると単純計算でも1200人の予約が入っている」
旅館としては嬉しい半面、こんな心配も...
女将・沼田弘美さん
「パンダがいるということで観光のお客様にもお越しいただいていたし、アメニティの袋にもパンダの絵柄をいれた。本当にパンダのグッズのものが非常に多い中で、(今後)パンダだけではないというところも私たちは頑張らないといけない」
|
|
今回の返還で、日本に残るパンダは上野動物園の2頭のみ。しかし、この2頭も来年2月に返還の期限が迫っています。
日本からパンダがいなくなってしまうのか。
中国を訪問している自民党の森山幹事長を団長とする議員団は、29日、中国共産党の序列3位、趙楽際委員長と会談しました。
日中友好議員連盟 森山裕 会長
「パンダは日本国民に大変親しまれており、パンダを通じた日中交流が継続されるように新規貸与を強くお願いを申し上げました」
これに対し中国側がどうこたえるか。
中国外務省の郭嘉昆副報道局長は、「日本側がパンダ保護の国際協力に関心を持ち続け、中国のパンダ保護事業を支援し、共にこの希少種を守ることを歓迎する」と、前向きな姿勢を見せました。
再びパンダが日本に来るか、今後の動向に注目です。
日中関係筋「パンダはNo.1かNo.2案件」藤森祥平キャスター:
日本のパンダがいなくなってしまう可能性も出てきています。
和歌山・アドベンチャーワールドでは6月末に4頭が返還される予定、そして東京・上野動物園では来年2月に2頭が返還期限を迎えることになっています。
小川彩佳キャスター:
私もアドベンチャーワールドが大好きなんです。色々な魅力がありますが、パンダが4頭もいるので、行けば必ず並ばずにのびのびと見られる。寂しくて仕方がないです。
藤森キャスター:
上野動物園については、過去にもパンダがいなかった時期があります。高齢だったリンリンが息を引き取った後、2008年から2011年までパンダは不在でした。
当時の日中関係はかなり冷え込んでおり、2010年の9月に尖閣諸島沖で中国の漁船が日本の海上保安庁の船に衝突したことが象徴的です。しかし、その5か月後の2011年2月にはパンダが日本にやってきました。これは、関係を完全改善したいという中国からのサインであるとも考えられています。
日中の関係筋によると、「パンダは中国のNo.1かNo.2案件だ」ということです。パンダは、習近平国家主席レベルに決定権がある「超」の付く重要な外交カードです。
小説家 真山仁さん:
日中国交回復からずっと日中友好のシンボルとしてパンダという存在があった。正直、中国が何を考えているかは我々には全くわからないが、日本が本当に日中友好を続けてきたのかを考えるチャンスでもあるかもしれない。
例えば、アメリカがトランプ大統領になってからは、日本は関税などの問題でアメリカにばかり関心が向いている。太平洋の東側にばかりに気を取られている日本が、パンダを返すときだけ「日中友好を続けましょう」というのはどうなのか。外交って360度するべきだと思うので、そういう意味ではこのパンダの返還を契機に中国との外交は本当に昔と変わっていないのかを考えるべきではないでしょうか。
藤森キャスター:
今回は自民党の森山幹事長が新たなパンダの貸与の継続を求めており、中国側も前向きなのではないかと捉えられる発言が返ってきました。
ジャーナリスト・星浩氏によると「次の貸与契約まで、日本は一時的に“パンダゼロ”もあり得る。中国とのパイプが太い二階氏(地元が和歌山)の影響力が健在なら、貸与は継続されていただろう」ということです。
パンダのレンタル料は、2011年にやってきたシンシンとリーリーについては、年間で95万ドル(約1億円)でした。
また、2021年に上野動物園で生まれた双子のジャイアントパンダ、シャオシャオとレイレイは、当時1年間で約308億円の経済効果があったという試算を関西大学・宮本教授が出しています。
小川キャスター:
日本人はパンダが好きな方が多いですし、経済効果もこれだけ大きくある。ただ、パンダに来て欲しいがために中国に対して人権問題など、言うべきことを言えなくなるということがあってはならないと感じます。
真山仁さん:
外交問題は政治案件だけの問題ではないと思う。民間でもどのようにしてたくさんのパイプをつけるかということは必要。日本にはパンダを好きな人が多いのだとすると、我々はパンダを通じて日中友好を継続してきたのだから、パンダに帰ってきてほしいという声は政治を使う必要はないと思う。
今まで日中関係は外交ルートばかりで勝負しようとしていましたが、アメリカとの関係を考えるとそれがしにくい。それならば、もっといろんな民間の人たち、例えばパンダが大好きな著名人などがみんなでエールを送って「私たちにはパンダと中国が必要なんだ」といったことを訴えることで、中国の本音を引き出すこともできると思う。そういった意味ではこれを良いタイミングだと考えたい。
小川キャスター:
既存のルートとは違うルートがあるかもしれないですね。
※動画内で紹介したアンケートは30日午前8時で終了しています。
========
<プロフィール>
真山仁さん
小説家 「ハゲタカ」「ロッキード」など
最新著書に「ロスト7」