中国製の玩具を見せる米雑貨店のオーナー=6日、ジョージア州アトランタ(EPA時事) 【ワシントン時事】100%超の高関税をかけ合う米中の貿易戦争は、追加関税の大幅引き下げで合意し、一時休戦となった。背景には双方とも経済への悪影響が顕在化し始め、景気悪化が現実味を増したことがある。米中は90日の交渉期間に入る。ただ米国は、年間3000億ドル(約44兆円)規模の対中貿易赤字解消を目指しており、交渉の先行きは見通せない。
貿易戦争は米国が4月、中国からの輸入品への34%の相互関税上乗せを発表すると、一気にエスカレートした。中国が報復するたびに関税率を引き上げ、双方とも追加関税率は125%に至った。加えて米国は合成麻薬対策に関連して20%の追加関税も課しており、累計税率は145%に達していた。
米国では高関税政策の悪影響が表れている。米消費財大手ニューウェルブランズはベビーカーの97%、チャイルドシートの87%を中国からの輸入に頼っており、ロイター通信によると、子ども向け製品価格の2割引き上げを決めた。
中国からの輸入を一時停止し、在庫の販売を続ける考えだが、「いつか在庫は尽きる。中国に再び注文することになる」(ピーターソン最高経営責任者)として、高関税が長期化すればコスト高は免れないと懸念を募らせていた。
「バービー人形」で知られる米玩具大手マテルは、米国で販売する製品の2割を中国から輸入。中国への依存度を下げる計画だが、コスト上昇を踏まえ、一部製品を値上げする方針を発表した。
全米小売業協会のゴールド副会長は、米国への輸入貨物が減少しているとし、「関税政策の影響が出始めている。最終的には、物価上昇や店頭の商品減少という形で消費者に影響を与える」と警告する。
トランプ大統領は「中国は米国と取引をしたがっている」と話し、中国に協議に応じるよう促す一方、「マテルの製品に100%関税を課してやる」などとも言い放ち、いら立ちを強めていた。
米中協議は今後本格化する。米国は中国の過剰生産や政府補助金などを問題視。第1次政権時に合意した、米国産農産物などの輸入拡大も履行されていないと批判を強めている。グリア米通商代表部(USTR)代表は「誠意をもって協力できる立場を得た」と交渉に自信を示すが、双方の課題は幅広く、先行きは不透明感が強い。