
高木豊氏に聞く助っ人たちの評価のパ・リーグ編。セ・リーグ編と同じく、チームごとに4段階【◎、〇、△、×】で評価した。
(※)成績は5月18日時点。一軍での出場がない選手、出場試合数が少ない選手に対してのコメントは省略(成績のみ掲載)しているが、評価の対象。育成選手は評価の対象外。
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◆ソフトバンク【野手×/投手◯】
「ジーター・ダウンズはスローイングなど守備が不安です。バッティングでアピールできればいいのですが、振るいませんでした。栗原陵矢が故障から復帰したタイミングで2軍に降格しましたが、現時点ではそれが首脳陣の評価なんだと思います。守れないうえに打てないとなると厳しいです。
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投手ではリバン・モイネロが安定感抜群ですね。チーム状況が悪いときでもモイネロが唯一といっていいほど安定していましたし、勝ちもついてきました。本来はもっと勝っていてもおかしくないんですけどね。モイネロ個人は◎です。
ダーウィンゾン・ヘルナンデスは昨年の無双状態から一変し、今年の序盤は登板したら打たれるという感じでした。変化球をよく打たれていたのですが、相手もボールの軌道に慣れてきていますよね。
ロベルト・オスナはコーナーワークで抑えていくタイプなのに、今年は生命線のコントロールがよくない。抑えを任されていて防御率4点台は厳しいですし、高い年俸を踏まえれば厳しい評価になって当然です」
<評価対象となった助っ人の成績>
(野)ダウンズ 12試合 打率.222 0本塁打 1打点 出塁率.323 OPS.656
(投)モイネロ 7試合 4勝0敗 防御率1.55 QS率71.4
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(投)スチュワート 現段階で一軍での登板なし
(投)ヘルナンデス 14試合 0勝2敗 3ホールド0セーブ 防御率5.68
(投)オスナ 17試合 1勝1敗 5ホールド6セーブ 防御率4.24
◆日本ハム【野手〇/投手×】
「アリエル・マルティネスは故障で離脱していて打席数が少ないので、評価が難しいです。でも、マルティネスの不在をまったく感じさせない選手層の厚さがありますね。シーズンは長いですし、戻ってきた時に新庄剛志監督がどう起用していくか見ものです。勝負強いバッティングは、必ずチームの力になるはずですから。
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フランミル・レイエスはある程度は期待に応える働きをしていますし、個人としては〇です。ただ、もっと打てると思うんです。彼が打つとチームの雰囲気が変わるし、勝てるんですよ。相手チームに威圧感を与えられるバッターですね。
投手のドリュー・バーヘイゲンは年齢的な衰えもあるのか、球威を感じませんし、抑えられるイメージがわきません。ファームでも打ち込まれるケースが見られますし、コントロールもよくない。日本ハムは先発ピッチャー陣のやりくりにそれほど困っていないので、立場的にも厳しいと思います」
<評価対象となった助っ人の成績>
(野)マルティネス 6試合 打率.091 0本塁打 0打点 出塁率.167
OPS.258
(野)レイエス 36試合 打率.270 8本塁打 24打点 出塁率.342 OPS.831
(投)バーヘイゲン 3試合 1勝2敗 防御率6.43 QS率0.0
(投)ザバラ 現段階で一軍での出場なし
◆ロッテ【野手△/投手〇】
「ネフタリ・ソトは、ヤクルトのホセ・オスナやドミンゴ・サンタナ同様、シーズントータルで数字を残せると思うんです。打率は低いですが、9回の土壇場で起死回生のホームランを逆方向に打ったり、"らしさ"も徐々に取り戻してきました。チームが低迷しているので『自分が打たなければ』と重圧を感じていると思いますが、彼が打たないことにはチームの上昇はないと言っても過言ではないです。
グレゴリー・ポランコは毎年エンジンがかかるのが遅いですが、ファンからすれば『そろそろかけてくれよ』という感じでしょうね。甘い球の打ち損じが多すぎますし、ソトと同じで、打ってくれないとチームの貧打が解消しません。
投手ではオースティン・ボスがいいですね。打線が点を取ってくれないので2勝どまりですが、もっと勝っていてもおかしくない。変化球でけっこう空振りが取れますし、フォアボールを出して自滅するようなこともない。秘めたる闘志みたいなものも感じますし、いいピッチャーを取りましたね。キャッチャーの寺地隆成との相性がいいですし、今後もこのバッテリーには期待できます。
ブライアン・サモンズはフォアボールを連発していたので、コントロールを含めて厳しいかなと思いましたが、その後はうまく調整してきた印象です。多彩な変化球で打たせて取るタイプだと思いますが、今後はある程度期待していいんじゃないですか。
タイロン・ゲレーロは真っすぐの強さも速さも申し分ないのですが、真っすぐとスライダーだけなので、配球が単調になると危険です。各チームのバッターが慣れてきているのも不安材料です」
<評価対象となった助っ人の成績>
(野)ソト 34試合 打率.205 6本塁打 15打点 出塁率.271 OPS.657
(野)ポランコ 29試合 打率.193 4本塁打 12打点 出塁率.252 OPS.582
(New/投)ボス 7試合 2勝2敗 防御率2.13 QS率57.1
(New/投)サモンズ 2試合 1勝0敗 防御率1.17 QS率0.0
(New/投)ゲレーロ 1勝2敗 4ホールド1セーブ 防御率3.09
◆楽天【野手△/投手△】
「マイケル・フランコに期待しているのは単打ではなく長打(長打率.307)。ランナーをかえす役割を求めていると思うのですが、それに応えられていません(得点圏打率.231)。エスコンフィールドでよく打つ印象がありましたが、今年はそこでも打てていません(打率.190)。あと、スタメンで出ない試合もあるじゃないですか。3年目ですが、助っ人として物足りない部分がいろいろあります。
投げるほうでは、スペンサー・ハワードがいいですね。来日初登板のロッテ戦で7回無失点と好投しましたが、コントロールがいいですし、ストライクゾーンで勝負できます。まだ1試合ではありますが、投げるテンポもいいから野手も守りやすいんじゃないですか。今後の登板も期待できます。
ミゲル・ヤフーレは久しぶりにソフトバンク戦(5月18日)で先発しましたが、ハワードに刺激を受けたのか、いいピッチングでした。打たせて取るタイプですし、フォアボールで崩れる心配もない。これからハワードと一緒に先発ローテーションで頑張ってくれたら大きいですよ。2人とも登板数が少ないので△ですが、今後の活躍が期待できます。
ニック・ターリーは球威はあるのですが、制球難が課題。昨年も状態が悪かったですが、それが改善されていませんし、開幕早々に2軍降格ですからね。評価が難しいです」
<評価対象となった助っ人の成績>
(野)フランコ 38試合 打率.237 1本塁打 7打点 出塁率.285 OPS.592
(投)ハワード 1試合 1勝0敗 防御率0.00 QS率100.0
(投)ヤフーレ 2試合 0勝0敗 防御率0.00 QS率50.0
(投)ターリー 2試合 0勝0敗 0ホールド0セーブ 防御率6.75
◆オリックス【野手×/投手〇】
「野手のジョーダン・ディアスとエドワード・オリバレスはあまり試合に出ていないので評価が難しいです。この2人のどちらかでもいいから打ってくれると、オリックスの打線はさらに厚みを増すんですけどね。
アンダーソン・エスピノーザは、そこそこ試合を作っています。ただ、チームが開幕直後に打ちまくっていた時期に勝ちがついていないことがおかしいんです(昨年から15戦連続で勝ち星なし)。エスピノーザのピッチングのリズムなのか、どこかに要因があるはず。登録を抹消されましたが必要な先発ピッチャーなので、ファームでしっかり調整して戻ってきてほしいですね。
ルイス・ぺルドモは安定感抜群です。打たせて取る投球術に優れていますし、苦しい展開の試合でも淡々と仕事をしてくれる。首脳陣としては頼りになるピッチャーだと思います。
アンドレス・マチャドは悪くはないと思うのですが、各チームのバッターが慣れてきたのか、ピンチを招いている印象が強い。一番後ろを投げるピッチャーとして、もう少し安定感がほしいです」
(New/野)ディアス 20試合 打率.259 0本塁打 2打点 出塁率.333 OPS.630
(New/野)オリバレス 6試合 打率.222 0本塁打 0打点 出塁率.222 OPS.444
(投)エスピノーザ 6試合 0勝3敗 防御率3.06 QS率50.0
(投)ぺルドモ 14試合 1勝1敗 11ホールド0セーブ 防御率2.45
(投)マチャド 17試合 1勝2敗 3ホールド7セーブ 防御率2.81
◆西武【野手〇/投手◎】
「タイラー・ネビン個人は◎です。チームに馴染んでいますし、攻守で献身的な貢献をしていますよね。打線の中心になってきていますし、ファーストの守備も打球への反応がよくて、なかなかうまいです。打率(.266)はそれほど高くないですが、勝負強い印象がありますし(得点圏打率.361)、西武が貯金できているのはネビンの力による部分も大きいです。
レアンドロ・セデーニョは期待していた分、ホームラン1本は寂しいです。当初は日本での実績がある分、ネビンよりも期待されていたわけですし、ファームに落ちている場合ではないです。オリックス時代の調子がいい時には打席で少なくとも怖さがあったのですが、今はそれがない。これから気温も上がってくるので、それに伴って状態も上がればいいですね。
投げるほうではトレイ・ウィンゲンターが抜群です。ボールに力がありますし、とにかく三振が取れます(奪三振率13.21)。フォアボールを出す心配もないですね。相手チームがまだ慣れていないということもあると思いますが、ここまではネビン同様によくやっていると思いますよ。キレのあるスライダーは、相手打者もかなり手を焼くと思いますし、今後も期待できます。
エマニュエル・ラミレスはとにかくスプリットがいい印象。ウィンゲンターの活躍が目立つので陰に隠れていますが、このピッチャーもいいですよ。三振が取れますし、ブルペン陣に厚みをもたらしています」
<評価対象となった助っ人の成績>
(New/野)ネビン 40試合 打率.266 3本塁打 20打点 出塁率.324 OPS.707
(New/野)セデーニョ 16試合 打率.189 1本塁打 7打点 出塁率.214 OPS.478
(投)ボー・タカハシ 現段階で一軍での登板なし
(New/投)ウィンゲンター 16試合 0勝1敗 11ホールド0セーブ 防御率1.15
(New/投)ラミレス 11試合 0勝0敗 1ホールド0セーブ 防御率1.64
【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)
1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。