限定公開( 28 )
住宅街で銃を発砲し立てこもる――。近年、そうした事件の発生が相次いでいる。住所不定、無職、鈴木常雄被告(88)が殺人未遂などの罪に問われている蕨郵便局(埼玉県蕨市)での立てこもり事件は、国内でも銃による暴力が身近に起こりうることを改めて知らしめた。拳銃所持が厳格に規制されている日本で、発砲事件はなぜ起きるのか。
26日にさいたま地裁で始まった鈴木被告の裁判員裁判。検察側は被告が元暴力団員で、現役時に入手した旧ソ連の軍用拳銃「トカレフ」を事件に使用していたことを明らかにした。発砲の動機については「郵便局や病院との間にトラブルがあり、報復しようと考えた」と指摘した。
毎年数百件の銃乱射事件が起きる米国など、他国と比較すると日本での発砲事件発生件数は少ない。警察庁の統計によると、全国で発生した発砲事件は2020年が17件(うち暴力団等関連14件)。その後は年間10件以下が続き、24年は3件(同2件)――だった。
また、24年に捜査機関が押収した真正拳銃355丁の製造国は、米国(101丁)▽日本(82丁)▽中国(65丁)▽ベルギー(25丁)▽ドイツ(17丁)――など。押収した拳銃の中には、旧日本陸軍の自動式拳銃「南部14年式」などが含まれていた。密輸方法は近年では、国際郵便や現地調達、漁船や貨物船による持ち込みなどが確認されている。
一方、ふじみ野市で在宅医療に携わる医師らが撃たれ死傷した立てこもり事件(22年)▽奈良市で起きた安倍晋三元首相銃撃事件(同)▽長野県中野市で4人が殺害された立てこもり事件(23年)――など、近年は拳銃以外を使った市民による発砲事件も相次ぐ。手製銃や所持許可を得ていた散弾銃などの使用が確認され、国は銃規制を強化し、インターネット上で銃の不法所持をあおる投稿を禁止するなどした。
|
|
こうした発砲事件の被告は社会とのつながりが希薄なケースも目立つ。公判が始まっておらず動機が明らかになっていない部分もあるが、安倍元首相銃撃事件で起訴された男性は、事件前にSNS(交流サイト)上で旧統一教会に入信した母親に対する複雑な心境や孤立への悩みなどを投稿していた。中野市の事件で起訴された男性は、死亡した近所の女性らに「(独り)ぼっち」と言われたように受け取り、事件を起こした可能性が指摘されている。
鈴木被告の公判は今後、被告人質問が行われる見通しだ。自らの言葉で事件を起こすに至った経緯や動機をどのように語るかが注目される。【加藤佑輔】
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 THE MAINICHI NEWSPAPERS. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。