沈没現場で初の洋上慰霊=知床観光船事故の乗客家族―ボランティアが寄付で実現・北海道

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2025年07月13日 19:31  時事通信社

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時事通信社

事故が起きた「カシュニの滝」付近の洋上で献花する乗客家族=13日、北海道知床半島沖
 北海道・知床半島沖で2022年4月、観光船「KAZU I(カズワン)」が沈没し乗客乗員26人が死亡、行方不明となった事故を巡り、乗客家族が13日、沈没現場付近で「洋上慰霊」を行った。家族らがまとまって洋上慰霊したのは初めて。

 午前5時20分ごろ、乗客14人の家族計40人を乗せた船がウトロ漁港(北海道斜里町)を出港。家族らは知床岬先端部に上陸し、遺体や遺品が発見された湾で被害者を追悼した。その後、船で沈没現場とされる「カシュニの滝」付近に移動。被害者の名前を呼び掛ける声が響く中、海に被害者全員の名前を記した紙などとともに花をささげ、冥福を祈った。

 沈没事故で弟=当時(46)=を亡くした女性(58)は帰港後、被害者家族を代表し、「たくさんの方々の支援によって、家族の魂に心から呼び掛け、話をすることができた。ようやく一緒に連れて帰ることができたように思う」と涙を流しながら感謝の言葉を述べた。

 元妻=当時(42)=と息子=同(7)=が行方不明となっている道内の男性(53)は、初めて沈没現場付近を訪れたといい「泳いでたどり着けそうなほど陸が近いのに、何もできなくてどんなに怖かったのかと思うと、涙が止まらなかった」と悔しさをにじませた。

 洋上慰霊は、事故発生時からボランティアで捜索活動をしてきた北海道羅臼町の漁師、桜井憲二さん(62)らが企画。ユーチューブ動画で協力を呼び掛け、全国から約1400万円の寄付が寄せられ実現した。

 沈没した観光船の運航会社「知床遊覧船」の社長桂田精一被告(62)は、業務上過失致死罪で起訴されたが初公判の見通しは立っていない。乗客家族が同被告を相手取り約15億円の損害賠償を求めた訴訟が札幌地裁で係争中。 
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