河村勇樹がブルズと2ウェイ契約「特別な存在になれる」と元NBAスモールPGが評価した3つの要素

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2025年07月26日 07:30  webスポルティーバ

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前編:河村勇輝がシカゴ・ブルズと2ウェイ契約を締結した理由

アメリカ挑戦2年目の幕を開けた河村勇輝は、NBAサマーリーグでの活躍が認められ、シカゴ・ブルズからNBAとGリーグを行き来できる2ウェイ契約を勝ち取ることができた。

河村の活躍は日々SNS等で発信され続けてきたが、「日本」という枠組みを外してもそのプレーが多くの人々を魅了している。その理由はどこにあるのか?

かつてNBAで183cmという低い身長ながらポイントガード(PG)として活躍し、この夏は解説者として河村のプレーを見届けたダレン・コリソンに話を聞いた。

【「プレーに対する情熱的な喜びがあり、見ている人を惹きつける」】

 河村勇輝がシカゴ・ブルズと2ウェイ契約を締結――。現地7月19日に届いたそのニュースは、バスケットボールファンを喜ばせた。それでも今年もラスベガスで行なわれたNBAサマーリーグでのプレーを見た者にとって、もう驚きではなかったはずだ。

 英語でいうところの"Inevitable(必然)"。ブルズの一員としての5試合で見せた河村のプレーは、それほど印象的なものだったからだ。

 サマーリーグではすべて途中出場ながら、平均10.2得点、6.2アシスト、2.2スティール。残したインパクトはその数字以上に大きかった。特に3戦目のインディアナ・ペイサーズ戦で15得点、10アシストのダブルダブル(2項目以上で2ケタ)をマークすると、4戦目のミルウォーキー・バックス戦でも第4クォーターだけで6アシストを挙げて逆転勝利に大きく貢献。さらに最終戦となったユタ・ジャズ戦では20得点、10アシストと大爆発し、ブルズが2連敗後に挙げた3連勝の立役者のひとりになった。

 試合を重ねるごとに新しいチームメイトとの呼吸も合いはじめ、ハイライトシーンを頻繁に生み出す"ファンタジスタ"ぶりはさすがとしか言いようがなかった。

 日本人の贔屓目抜きに、サマーリーグで最高級に輝いた選手だったといっていい。だとすれば、2ウェイ契約のゲットも当然。そう思ったのは、『NBA TV』でジャズ戦の解説者を務めたダレン・コリソンも同じだったようだ。

「ユウキはどのチームでも、自分の役割でしっかりインパクトを与えられる選手だと思う。あのサイズであれだけのプレーメイクができて、競争心が強いし、頭もいい。この3つの要素がそろっていれば、どんなチームでも特別な存在になれる。さっき彼がブルズと2ウェイ契約を結んだと聞いたばかりだけど、今後の活躍も楽しみだよ」

 コリソンは2019年まで10シーズンにわたってNBAでプレーし、すべてのシーズンで平均2ケタ得点をマークした堅実なフロアリーダーだった。派手なプレーよりもミスの少なさが魅力のポイントガード(PG)。2017~18シーズンにはリーグ1位の3P成功率46.8%とロングジャンパーも得意としていた。河村とは少々タイプが違ったものの、コリソンも身長183cmとサイズに恵まれていたわけではなかった。

 現在37歳の元司令塔は、自身以上にサイズ不足ではあっても、河村のプレーメイキング能力にはNBAでも十分にやっていけるだけのものを見出せるという。

「ユウキの一番の持ち味はプレーメイク力だと思う。それに加えて、プレーに対する情熱的な喜びみたいなものがあって、見ている人を惹きつける。彼のプレーはワクワクするんだ。普通のパスを出すんじゃなくて、ちょっとした工夫や遊び心を加えてくるし、それでファンが思わず立ち上がるような場面を作ってくれる。でもそれは、無理にカッコつけようとしているんじゃなくて、彼の自然なスタイルなんだよ」

 コリソンのそんな話を聞いて、もう河村のプレーに慣れ親しんだ日本のファンはすぐに納得するだろう。派手なノールックプレーやキラーパスもすべて流れのなかでやってのけるため、必要以上に目立とうとするものや、相手にとって侮辱的なスタンドプレーであるようには感じられない。そのアンセルフィッシュなパスワークは味方選手を鼓舞し、チーム全体に伝搬する影響力を備えているようにも見える。今回、ブルズから評価されたのもそういった部分に違いない。

【コリソンが河村を見て想起したNBA選手は?】

 サマーリーグ開始前の時点では、ブルズの2ウェイ契約枠はすでに3つとも埋まっていた。河村にそのうちのひとつを与えるために、チームは昨季も2ウェイ契約を結んでいたジャミア・ヤングを解雇する決断を下した。

 ヤングはサマーリーグの5戦では平均13.0得点(FG成功率52.3%、3P成功率53.3%)を挙げ、バックス戦では37得点をマークするなど、得点力を誇示していたスコアラーである。もちろんチーム事情による判断だが、この選手を押し出しての新契約だからこそ、河村の躍進には価値があると考えることもできる。それと同時に、来季の活躍にもより大きな期待を寄せたくなる。

「パスやプレーメイキングという点において、ユウキは少しリッキー・ルビオを思い出させるところがある。あくまでプレーメイクに関してであって、ふたりの選手がまったく同じタイプだというわけではない。ただ、パスの面では確かに共通点を感じるね」

 コリソンが比較対象として挙げたルビオも確かに河村同様、魔法のようなパスが得意な司令塔タイプだった。抜群のスター性と甘いマスクを持ち、全盛期には創造性豊かなプレーでファンを歓喜させたのはまだ記憶に新しい。スペイン出身の神童ルビオと同じように、河村もまたNBAの舞台でも階段を上がっていけるのか。

 ブルズ対ジャズ戦をコートサイドで見た直後、コリソンは明らかに興奮し、河村のプレーに魅了されていた。ここでの絶賛の言葉には、いわゆる"新近性バイアス" (過去よりも最近の出来事のほうが記憶に残りやすく、重要視してしまう心理現象)もあったのかもしれない。ただ、逆に言えば、元NBAのベテランをそれほどエキサイトさせたことからも、河村のポテンシャルが示されているという捉え方もできる。コリソンに限らず、サマーリーグでのプレーを見て今季の河村により注目したくなったというファン、関係者は少なくないはずだ。

つづく

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