「世界水泳2025、日本代表チーム全体の勢いをぜひ一緒に体感してほしい!」【松田丈志の手ぶらでは帰さない!〜日本スポーツ<健康経営>論〜 第18回】

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2025年07月27日 17:10  週プレNEWS

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7月27日から、いよいよ世界水泳選手権シンガポール大会の競泳競技が始まります。僕自身も7月25日から現地に入り、最終日の8月3日まで解説を担当します。今年の世界水泳は、2028年ロサンゼルス五輪に向けた日本代表の"現在地"を示す大会でもあり、メダルが現実的に期待できる種目もいくつか見えてきました。

【写真】世界水泳、注目の選手たち

なかでも注目は、男子の個人メドレー陣です。200m/400mの両方で代表に選ばれた松下知之(パリ五輪400m銀メダル)を中心に、200mには牧野航介、400mには西川我咲(にしかわ・あさき)が出場。いずれも東洋大学に所属し、名伯楽・平井伯昌(ひらい・のりまさ)コーチのもとでトレーニングを積んでいる選手たちです。

僕自身も現役時代、リオ五輪を目指すタイミングで平井コーチにお世話になりましたが、「世界で勝つために何をすべきか」という視点と、それを実現するトレーニング設計は常に日本の水泳界をリードするものです。その哲学が、今の彼らにも確実に受け継がれていると感じます。

日本の男子個人メドレーは、高校生世代まで含めて選手層が非常に厚く、いまやその水準は世界トップクラスです。これまで日本競泳が得意としてきた平泳ぎやバタフライに加え、個人メドレーも"新たなお家芸"になりつつある――そんな気配すらあります。萩野公介さんや瀬戸大也選手が切り拓いた道を、いまの若い世代もしっかりと歩んでいます。

今大会の松下には2種目ともにメダル獲得が期待されます。

女子では、400m個人メドレーに出場する大学1年生の成田美生(なりた・みお)が楽しみな存在です。今季の世界ランキングで4位につけ、あと一歩のレベルアップでメダルも十分射程圏内。パリ五輪でも6位に入賞している実力者です。今大会に向けて、男子メドレー陣とともに高地トレーニングに取り組むという新たなチャレンジもして、しっかりと強化をしてきました。自身2度目の世界水泳。五輪も経験した彼女の「世界再挑戦」にも注目したいところです。

男子200m平泳ぎにも見どころがあります。今季の世界ランキングでは、深沢大和(ふかさわ・やまと)が2位、渡辺一平が4位。さらに1位にランクされているのは、代表には選ばれなかった高校生・大橋信。ここまで層の厚い種目は、日本競泳界の中でも非常に珍しい。

深沢はケガによって当初の強化プランが変更されましたが、「今できることをやり抜く」という姿勢で準備を重ねてきました。世界水泳でのメダル獲得経験もある渡辺とともに、ふたりで世界に挑んでくれるはずです。そしてこの種目が"元祖・日本のお家芸"であることに揺るぎはなく、ロサンゼルス五輪に向けても大きな戦力となるでしょう。


女子100mバタフライでは、平井瑞樹に期待がかかります。今大会後にはアメリカ・テネシー大学への進学が決まっており、国際舞台での経験を重ねながら、アメリカ流のトレーニングも吸収していくことになります。パリ五輪では決勝に進んだものの、スタート直後の水中動作でミスがあり、悔しさの残るレースとなりました。その思いを胸に、今季は自己ベスト更新を目指して再挑戦。現在の世界ランキングは6位。自己ベストの56秒33を更新できれば、メダル獲得のチャンスも十分にあります。

そして、今大会で日本代表のキャプテンを務める池江璃花子。50mバタフライでは世界ランキング4位、エントリータイムでは2位につけており、メダルの有力候補です。競技面でも名実ともに"日本のエース"として、再び世界の舞台でその存在感を発揮しようとしています。

僕自身もかつて日本代表のキャプテンを務めましたが、その立場になると自然と「チーム全体のこと」を考えるようになります。監督やコーチ、チームメイトとのコミュニケーションが増え、そのなかで得られる気づきや学びが、自分をアスリートとして、そして人として成長させてくれます。池江もきっと、キャプテンとしての経験が彼女の力になるはずです。

また、50mバタフライを含む自由形以外の50m種目は、2028年ロサンゼルス五輪から正式種目として採用されます。池江にとって今回のレースは、次の五輪に向けた新たなチャレンジの始まりとも言えるでしょう。一方で、体格に恵まれた海外勢がより50m種目に照準を合わせてくることも予想され、今大会でもその傾向は強く感じられるはずです。

そんななか、池江が"チームを第一に考える"姿勢を体現してくれれば、チーム全体に良い連鎖が生まれ、士気も高まり、結果として自身のメダルを引き寄せる力になる――僕はそう信じています。

病気という困難を乗り越え、再び世界のトップを目指す池江璃花子の新たなストーリーが、シンガポールから動き出そうとしています。


男女の個人メドレーをはじめ、平泳ぎやバタフライでも新たなスターが頭角を現しつつある今回の世界水泳。選手たちの成長、そして日本代表チーム全体の勢いを、現地から僕自身の言葉でしっかりと伝えていきたいと思います。テレビや配信を通じて、ぜひ一緒にその熱を体感してください。

文/松田丈志 写真提供/cloud9

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