対馬丸の悲劇伝える市民劇=戦後80年、次世代に継承へ―沖縄

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2025年08月22日 15:02  時事通信社

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時事通信社

対馬丸事件を題材にした舞台で、主人公の啓子らがいかだで海を漂流している場面=16日午後、那覇市
 米潜水艦に撃沈され、児童ら1400人以上が犠牲になった学童疎開船「対馬丸」の悲劇を題材にした舞台が16、17両日、那覇市内で上演された。生存者の高齢化が進む中、戦後80年の節目に地元の子どもたちも舞台に立ち、次世代への継承を担った。

 舞台「生きているから 〜対馬丸ものがたり〜」は、演出家の宮本亞門さんが企画し、脚本・演出を務めた。オーディションで選ばれた地元の子どもたちや沖縄に縁のある俳優の国仲涼子さんら総勢70人以上が出演した。

 筋書きは、当時9歳で対馬丸に乗船し、海上を漂流して生き延びた平良啓子さんの体験が基になっている。一緒に乗った祖母と兄、いとこを失った平良さんは戦後、長年にわたり小学校教諭として平和教育に尽力。退職後も「語り部」として体験を伝え続け、23年7月に88歳で死去した。

 舞台では、子どもたちが当時の平良さんや家族がたどった悲劇を演じた。平和な現代と対比させながら、平良さんが訴え続けてきた命の尊さを改めて伝えた。

 沖縄県も平和発信の取り組みの一環として協力。対馬丸の歴史を学び、平和の大切さを考えてもらうため、県内の子どもたちを対象に公演で使う小道具づくり体験などを実施した。

 生前の平良さんから直接話を聞き、舞台を企画したという宮本さんは、公演前の記者会見で「(舞台に)見入ってもらえれば、絶対に戦争は駄目なんだという平良さんの言葉が分かる」と強調。イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの侵攻に触れ、「海外では次々と子どもたちが殺されている。絶対に許せないし、変えていきたい」と話した。

 県外や海外での公演にも意欲を示し、「世界中の人に見てほしいし、対馬丸の話を本当に知ってほしい」と力を込めた。 
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