<陸上:世界選手権>◇第6日◇18日◇東京・国立競技場◇女子800メートル予選3組
世界の壁は高かった。日本記録保持者の久保凛(東大阪大敬愛高3年)は、2分2秒84の組7着で予選敗退となった。同種目日本人初の準決勝進出はならず。1928年アムステルダム五輪銀メダルの人見絹枝以来、日本勢97年ぶりの世界大会予選突破はかなわなかった。
サッカー日本代表MF久保建英のいとことしても知られる17歳。28年ロサンゼルス五輪の星は、初の世界大会の悔しさを糧とする。
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赤く染まった瞳から、涙があふれた。久保の世界デビュー戦は、予選敗退となった。
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「何もできずに終わってしまった」
号砲直後から海外勢の後ろに着くのがやっと。前に出ることすらできなかった。
「どこを歩いても自分を応援してくれた。すっごい幸せだった。その分、皆さんに良いレースを届けたいと思っていたけど、申し訳ない」
涙で言葉を詰まらせながら、今の感情を声にした。
高校3年生。普段はあどけない表情を見せる。
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「読書にちょっとだけハマっているんです。最初は『鬼滅の刃』の小説版だったんですけど…」。
もともと同作の漫画を読み込んでいたが「夏休みの宿題が終わっちゃって。(読書家の)田中希実さんに憧れていたので」と、最近は書籍にも手を伸ばし始めた。まずは「鬼滅の刃」で活字に慣れ、8月末には映画「きみの瞳が問いかけている」の小説版も読破した。
その顔は、陸上になれば一変する。小学生ではサッカーをしていたが、中学から本格的に競技を始めた。今は毎朝4時半に起き、単独走中心の練習に励む。
野口雅嗣監督は「練習を説明して断られたことが1度もない。絶対にクリアする強い心を持っている。30年近く指導しているが、こんな選手はなかなかいない」と証言。7月には日本新記録の1分59秒52をマークし、中学から10秒以上もタイムを縮めた。
国内では敵なしだが、世界の壁は高かった。予選突破の組3着までは0秒98。数メートル差をつけられて「全然通用しなかった」と声を震わせた。
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ただ、道はまだ始まったばかり。「もっと強い久保凛を見せたい」。28年ロサンゼルス五輪、その先へ−。
17歳の夏。この涙を人生の糧とする。【藤塚大輔】
◆久保凛(くぼ・りん) 2008年(平20)1月20日生まれ、和歌山・有田川町出身。小1でサッカーを始め、串本JFCでプレー。潮岬中から陸上開始。中3時の22年全国中学校体育大会800メートル優勝。23年に東大阪大敬愛高に進学し、同年から全国高校総体3連覇。24年から日本選手権2連覇。憧れの選手は田中希実。リラックス法は愛犬「ふうた」と遊ぶこと。身長167センチ。
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