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安倍晋三元首相(当時67歳)が奈良市で2022年7月、参院選の応援演説中に銃撃され死亡した事件で、山上徹也被告(45)は28日、奈良地裁(田中伸一裁判長)で開かれた裁判員裁判の初公判で、安倍氏に対する殺人罪について「全て事実です」と認めた。弁護側も一部無罪を主張しつつ、殺人罪の成否や刑事責任能力の有無は争わない方針を示した。首相経験者が戦後初めて殺害された事件は量刑が最大の争点となった。
検察側は冒頭陳述で、父親を自殺で亡くした被告の一家では、母親が1991年に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に入信。教団中心の生活を送るようになって家族同士の衝突が起き、被告には家庭が安息の場所でなくなったとした。
大学進学を断念し、職を転々としていた被告が「思い描いていた人生を送れていないのは教団が原因」と考えるようになっていたところ、兄が2015年に自殺し、教団への恨みを更に募らせるようになった。教団幹部の襲撃を決意した被告は20年から手製銃の製造を始め、22年までに約10丁を完成させた。被告はうち6丁を試射して殺傷能力を確かめていたという。
標的を安倍氏に切り替えた理由について検察側は、教団関連団体に安倍氏がメッセージを送っていたことを知った被告が「首相経験者で非常に著名な安倍氏を襲撃すれば社会の注目が集まり、教団への批判が高まると考えた」と言及。「元総理大臣が白昼堂々と殺害されたことは戦後史に前例をみない極めて重大な結果をもたらした。被告の不遇な生い立ちは安倍氏と何ら関係なく、これらを特に注目・考慮すべきだ」と述べた。
一方の弁護側は、母親による教団への献金が総額約1億円に上ると明らかにし、宗教にのめり込む母親による児童虐待があったと述べ、それらが被告の行動や性格に影響を及ぼしていると訴えた。被告は、銃刀法違反▽武器等製造法違反▽火薬類取締法違反▽建造物損壊罪――にも問われているが、弁護側は被告の手製銃は武器に当たらないと反論。武器等製造法違反と、公共の場での拳銃や砲の発射を禁ずる銃刀法違反(発射)は無罪だとした。
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起訴状によると、被告は22年7月8日、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で参院選の応援演説中だった安倍氏を殺害したとされる。【田辺泰裕、木谷郁佳、林みづき、芝村侑美】
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