
「1票の格差」が最大3・13倍だった7月の参院選は投票価値の平等を保障した憲法に反するとして、弁護士グループが選挙無効を求めた訴訟の判決で、名古屋高裁金沢支部は29日、「違憲状態」と判断した。大野和明裁判長は「投票価値の不均衡は、違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態にあった」と述べた。無効請求は棄却した。
格差縮小に向けた国会の対応を不十分と判断した形で、「合憲」とした24日の大阪高裁判決と判断が分かれた。
参院選では、最大格差が5倍前後だった2010年選挙、13年選挙を最高裁が「違憲状態」とし、国会は「鳥取・島根」と「徳島・高知」をそれぞれ一つの選挙区とする合区を導入。格差は3倍程度に縮小し、16年選挙、19年選挙、22年選挙は3回連続で合憲とされた。
ただし、22年選挙について、最高裁は23年判決で「格差のさらなる是正は喫緊の課題。現行の選挙制度の抜本的な見直しも含め、立法的措置を講じていくことが求められる」と注文を付けていた。25年選挙は、22年選挙より格差が0・10ポイント拡大しており、国会の姿勢をどう評価するかが争われた。
金沢支部判決はまず、格差是正のための法改正の見通しが立っておらず、具体的な検討も進展していない状況を指摘した。合区の導入によって格差が3倍程度で推移している現状についても「徐々に拡大傾向にある」と分析。抜本的な選挙制度の見直しが求められていたのに、格差を拡大させたことは「看過しがたい」と批判した。
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その上で、都道府県を選挙区単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等に応えていくことは、著しく困難な状況になっていると言及。4県の2合区は選挙制度の抜本的見直しまでの一時しのぎに過ぎず「現時点において評価することはできない」とし、25年選挙は違憲状態にあったと結論付けた。
一方、合区解消を求める意見も出ていることに触れ、選挙に対する関心を損なうことなく格差を是正して有権者の理解を得るには「相応の時間を要する」と述べ、不平等状態の是正に必要と認められる期間は経過していないとして違憲とはしなかった。
提訴した升永英俊弁護士は記者会見で「国会議員の地位の正統性に憲法上の疑問があるという判決だ」と述べた。【島袋太輔】
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