
話題の商品も、いつも行列のあのお店も、月額課金しているサービスも、インターネットで再生数を稼いでいる動画も、著名タレントやアーティストも――「売れるモノ」は「優れたコンセプト」を持っている。
前回の記事では「暮らすように旅をする」というコンセプトを掲げた民泊プラットフォーム「Airbnb」(エアビーアンドビー)の事例を基に、コンセプトの存在価値を考えた。
では、コンセプトを短く強く、一言で伝わる言葉にまとめるにはどうすればいいのだろうか。クリエイティブディレクターとしてコンセプト開発を手掛ける篠崎友徳氏(※「崎」は「たつさき」)は、そのモノの持つ価値を端的に表す言葉の「つくり型」をいくつも持っている。同氏が執筆した書籍『世界はコンセプトでできている』から「ひとことコンセプト」のつくり型について解説する。
●世界はコンセプトでできている
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「好評だったプレゼン」「売れている商品」「成功したビジネス」――こうした成果の裏側にあるのが「優れたコンセプト」だ。篠崎氏による書籍『世界はコンセプトでできている』(かんき出版)は、5年間で売り上げ100億円を超えた商品の開発に携わった著者が、コンセプトの役割や作り方を解説している。
本記事は、同書に掲載された内容に、かんき出版による加筆と、ITmedia ビジネスオンラインによる編集を加えて転載している(無断転載禁止)。
●「売れるモノ」に共通する秀逸コンセプトをつくる、4つの“勝ちパターン”
秀逸なコンセプトを作るためのパターンはたった4つです。1つ目は「進化型」のコンセプト。既存の常識を、次のステージへ進化させるような言葉のつくり型です。
基本形は「進化前の価値」から「進化後の価値」へ。
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作り方は簡単。進化前の価値の部分に「今、価値を持っているもの」を入れ、進化後の価値の部分に「ワクワクする価値」を入れるだけです。
こうすることで「このコンセプトが実現したい変化は、単なる改善やレベルアップではなく、常識を塗り替える革新的なものなんだ」「そこには物語がありそうだ」といった印象を与えられます。
例えば「『働きがい』から『生きがい』へ」というコンセプト。これはまさに「進化型」のコンセプトです。
今、価値を持っているものとして「労働を義務と感じない、働きがいのある職場」を提示した後に、「ワクワクする価値」として「働くことと人生が重なり、生きがいになる」という新しい視点を提示しています。
このような「今ある価値が、ワクワクする価値に進化する過程」を見せることで、仕事は「『働いて収入を得ること』から自分らしく生きる時間へ進化する」というメッセージを強烈に印象付けています。
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進化型のコンセプトには、他にも以下のようなものがあります。
○ボディーソープのコンセプト
体を洗うことは、自分を見つめ直して愛せる時間へ進化する。→「清潔」から「自信」が生まれるボディーソープ
○ホステルのコンセプト
ただ泊まって寝るだけでなく、そこに人との出会いや、地域ならではの体験があることで、価値ある時間に進化する。→「泊まる場所」から「出会う場所」へ
○食品のコンセプト
味がおいしいことは、人の笑顔を生み出す時間に進化する。→「おいしさ」から「よろこび」へ
○アパレルのコンセプト
着飾ることは、自分らしさを探す時間に進化する。→「ファッション」は「アイデンティティー」になる
このように「劇的な変化を見せる」ことは、強力なコンセプトの代表的なパターンになります。
●「老いを美しさに」は、逆転型コンセプト
2つ目は「逆転型」のコンセプト。既存の常識を全く逆の方向にひっくり返す言葉のつくり型です。
逆転型のコンセプトは、これまで常識だと思っていたものがひっくり返るだけに、インパクトが大きく、強いコンセプトになります。
基本形は「正方向の価値」を「逆方向の価値」に。
作り方は正方向の価値の部分に「一般的に価値を持っているもの」を入れ、逆方向の価値の部分に一般的な価値とは「逆方向の価値」を入れるだけです。
こうすることで「このコンセプトが実現したい変化は、既存の価値とは180度異なる全く新しいものなんだ」というインパクトを与えられます。
例えば「『学び』を『遊び』に」というコンセプトは、この「逆転型」のコンセプトに当たります。
一般的な価値として「学びとは、真面目にきちんと勉強すること。頑張れば頑張るほど、能力が伸びる」というものがあります。
それに対して「遊びを通して楽しく学べば、学習意欲も高まり、能力も伸びる」という視点をこのコンセプトは提示しています。
このような「今ある価値が、180度別の価値に変わる提案」を通じて「学びとはただ勉強することではなく、逆の視点から見ると遊びから生まれる気付きもある」というメッセージが伝わってきます。
逆転型のコンセプトには、他にも以下のようなものがあります。
○コスメのコンセプト
老化は衰えではなく、逆の視点から見ると、若さから解放される美しさ。→「老い」を「美しさ」に
○清涼飲料のコンセプト
汗は不快な老廃物ではなく、逆の視点から、見ると体に必要だった成分。→「汗」を「補給する」サプリメントウオーター
○家電のコンセプト
家事は義務でやるものではなく、逆の視点から見ると、ひとときの感性の時間。→「家事」を「おしゃれ」にする、スマート家電
このように「180度異なる変化を見せる」ことは、強力なコンセプトの代表的なパターンになります。
●「軽くて疲れにくい靴」をどう表現する?
3つ目は「例え型」のコンセプト。既存の価値を、新しい比喩(例え)を加えて強く感じさせる言葉のつくり型です。
基本形は「新しい例え」のような「一般的な価値」。
作り方は、まずコンセプト後半の一般的な価値の部分に「例えたいもの」を入れます。これは一般的な価値のあるものです。
次に、その例えたいものについて、新しい比喩(例え)となる言葉を、前半の新しい例えの部分に入れます。
ポイントは、この「新しい例え」に入れる言葉は、もともとその一般的な価値のもののカテゴリーでは、使っていなかった言葉にすることです。
意外な言葉の組み合わせを用いて、インパクトを作り出すのです。
例えば「『雲』のような『スニーカー』」というコンセプトは、まさに例え型に当たります。
ここに「『フワフワで軽くて疲れにくい』という価値が直感的に感じられるスニーカー」があったとします。
それに対して「何か意外性のある言葉、スニーカーとは縁遠い言葉でうまく例えられないか?」と考えた結果として「軽いという感覚は、まるで雲のようだ」という発想が生まれ、このコンセプトはそんな意外な組み合わせをストレートに表現しています。
このように、直感的に軽くて浮き上がるように感じられる「雲」という言葉を、普段は組み合わされない「軽量スニーカー」に当てはめてみる。そのことで、目を引く斬新なコンセプトが生まれるのです。
例え型のコンセプトには、他にも以下のようなものがあります。
○ヘアケア商品のコンセプト
恋という強い感情の言葉を、シャンプー後の髪の美しさ、仕上がりのよさにたとえる。→「恋をしたとき」のような「輝く髪」へ
○アパレルブランドのコンセプト
どんな場所でも、日常に溶け込む美しさを表す言葉で、日常服をもっと魅力的に見せる。→「余白」のような「服」をまとう
○企業のコンセプト
無邪気さや好奇心や純粋さを持った言葉で、企業理念を再定義する。→「少年」のように「挑戦する企業」
このように、意外な言葉の組み合わせを見せることは、強力なコンセプトの代表的なパターンになります。
●「カフェインレスコーヒー」が優れたコンセプトである理由
4つ目は「二律背反型」のコンセプト。正反対の2つの価値をくっつけて、強い言葉を作る方法です。
基本形は「正方向の価値」×「逆方向の価値」。
作り方はとても簡単。まず正方向の価値の部分に「価値あるもの」を入れたら、逆方向の価値の部分に正方向の価値と正反対の「価値あるもの」を入れる。
ポイントは、正反対の価値の2つともに「きちんと価値があること」。
その意外な組み合わせから、常識をひっくり返すインパクトがありつつ、価値もダブルに。話題になりやすい構造といえます。
例えば「痩せるチョコレート」というコンセプトは「二律背反型」のコンセプトです。
ここでは、最初に「痩せる」という価値を置いています。これは例えば「ダイエットして、理想の体形になれたらとても幸せ」といった価値のイメージを持ちます。
そこで、この「痩せる」とは正反対の価値を考えます。ここでは「チョコレート」を考えました。「甘くておいしいので幸せ。なのに、食べて痩せられたらダブルで幸せ」という価値がそこにあります。
この2つを組み合わせることで「痩せられるのに、甘くておいしいチョコレート」という、ダブルの幸せを持ったコンセプトが生まれるのです。
二律背反型のコンセプトには、他にも以下のようなものがあります。
○飲料のコンセプト
カフェインが入ってなくて妊婦でも飲めるのに、コーヒーを飲む習慣は続けられる。→「カフェインレスコーヒー」
○キャンプ場のコンセプト
都心部でビルも見えているのに、自然を楽しむグランピングで非日常体験。→「都会グランピング」
○タレントのコンセプト
か弱そうな美女なのに、実は引き締まった体で強いアスリートや格闘家。→「美人アスリート」「美人格闘家」
このように「正方向の価値と逆方向の価値を掛け合わせる」ことは、強力なコンセプトの代表的なパターンになります。
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