100枚198円の「ばんそうこう市場」に30枚480円で参入 ケアリーヴが30年かけて市場トップになった理由

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2026年06月25日 07:50  ITmedia ビジネスオンライン

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発売から30年、どのように市場で地位を築いてきたのか

 ばんそうこうは、かつて「安価な商品をまとめ買いする」イメージが強い商品だった。しかし近年は、貼り心地やはがれにくさ、肌への負担など、機能性を重視して選ぶ消費者も増えている。


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 その変化を象徴する商品の一つが、ニチバンが1997年に発売した、救急ばんそうこう「ケアリーヴ」シリーズだ。同シリーズは2024年より、国内ばんそうこう市場において販売個数1位を獲得している(参照:インテージSRI+、2024年4月〜2026年3月、マーケットサイズ販売個数)。


 発売から約30年、同社はどのように市場での地位を築いてきたのか。ニチバン執行役員で、ケアリーヴのブランドマーケティングを担当する富田英樹氏に聞いた。


●セロテープではなく、もともとは「ばんそうこうの会社」


 ニチバンと聞くと、多くの人がまず思い浮かべるのは「セロテープ」かもしれない。しかし、富田氏は「もともとニチバンは、ばんそうこうからスタートした会社なんです」と話す。


 現在のニチバンは、ばんそうこうや医療用テープなどを扱うメディカル事業と、文具・工業・農業・建築向けテープを扱うテープ事業を展開している。メディカル事業の中でも、ケアリーヴは同社が成長領域と位置付ける最重点ブランドの一つだ。


 もともと同社には「オーキューバン」などの救急ばんそうこうがあった。一方、1997年に発売したケアリーヴは、肌への負担の少なさやフィット感を重視した新しいブランドとして位置付けられた。


 当時のばんそうこうは塩化ビニール素材を使った商品が主流で、各社の商品に大きな違いは少なく、価格競争に陥りやすかった。


 そうした中でケアリーヴが採用したのが、高密度ウレタン不織布だ。高い通気性と伸縮性を備え、指や関節にもフィットしやすい。貼った部分が白くふやけにくく、はがす際の肌への負担も抑えることを目指した。


 さらに特徴的なのが、基材と粘着剤を組み合わせた設計思想だ。


 一般的には、ばんそうこうがはがれにくくするためには粘着力を強くすればよいと考えられがちだ。しかし、粘着剤を強くしすぎると、はがす際に肌への負担が大きくなったり、のりが肌に残ったりする。


 富田氏は「ケアリーヴののりは、それほど強いわけではありません」と話す。それでもはがれにくいのは、高密度ウレタン不織布が肌の動きに沿って伸縮し、しっかりフィットするためだ。通気性も高く、汗による蒸れやふやけを抑えられる。その結果、強い粘着力に頼らなくても、密着性を確保できるという。


 「のりが強くないのによく付く。そのバランスもケアリーヴの特徴の一つです」と富田氏は説明する。


 こうした考え方の背景には、同社が長年培ってきたテープ技術がある。単に粘着力を高めるのではなく、基材の伸縮性や通気性、肌への負担、はがすときの感覚まで含めて設計している。そこに粘着テープ総合メーカーとしての知見が生かされている。


●価格競争中心の市場に、高機能・高価格商品を打ち出す


 ただ、商品力への自信とは裏腹に、発売当初の営業現場には不安もあった。


 ケアリーヴは従来品よりも高価格だったからだ。発売当時のケアリーヴはMサイズ30枚入りで希望小売価格480円。一方、この頃のばんそうこう市場では、100枚入りで198円や298円といった低価格商品が売れ筋だった。


 価格競争が激しい市場で、ケアリーヴは機能性を前面に打ち出した高付加価値商品として勝負に出た。しかし、発売当時を営業担当だった富田氏は「商品力の高さは理解できましたが、この価格で本当に売れるのか、というのが最初の感覚でした」と振り返る。


 一方で、社内には従来製品とは異なる熱量があったという。


 「これまでの製品資料はA4一枚程度の簡単なものが多かったのですが、ケアリーヴではカラーの製品資料が営業部に配布されました。なぜ蒸れにくく、剥がれにくいのか、フィットしやすいのかといった特徴の説明だけでなく、市場調査やモニター評価も盛り込まれていました。 従来のばんそうこうとは全く違うぞという、会社の本気度を感じました」


 同社は、発売当初から安売りをしない方針を掲げた。高機能な商品を適正な価格で販売し、その価値を時間がかかったとしてもきちんと伝えていく。価格ではなく、機能で選ばれるブランドを目指したのだ。


●安売りはしない 「使えば分かる」をどう伝えるか


 ケアリーヴの価値はパッケージを見ただけでは伝わりにくく、実際に貼ってみて初めて実感できる部分が大きい。


 そこで同社が力を入れたのがサンプリングだ。ドラッグストアなどの小売店でサンプルを配布し、店員やパート従業員にも使ってもらった。すると、次に営業担当者が店を訪れた際、「このばんそうこう、よかったよ」と声をかけられることが増えたという。


 「小売店スタッフの方が実際に使って良さを理解してくださったことが大きかったと思います。お客さまにも勧めていただけるようになりました」と富田氏は話す。


 サンプリングは店頭にとどまらず、公園や富士山五合目、スポーツイベント、学校、子育て関連イベントなど、靴擦れや子どものけがなどが想定される場所でも実施。実際に消費者に手に取ってもらう機会を増やした。


 サンプルを大量に用意するにはコストがかかるため、社内では「そこまで必要なのか」という声もあったという。それでも営業現場からはサンプリングでの反応や再購入につながる手応えが多く報告されていたため、現在も販促施策として継続している。


 「ケアリーヴは、一度使っていただくと、また使っていただける商品です。だからこそ、まずは体験してもらうことが重要だと社内を説得しました」


 ラインアップも消費者の声を受けて拡充した。レギュラータイプに加え、防水や大判タイプ、指先用、円形、かかと用など、用途や貼る場所に合わせた商品を増やしていった。


 中でも転機となったのが、2012年3月に発売した湿潤療法タイプの「ケアリーヴ 治す力」だ。湿潤療法とは、傷口を乾かさず、浸出液を利用して治癒を促すキズケアのことだ。当時、この湿潤療法タイプのばんそうこうが市場のトレンドになりつつあり、同商品を投入したことでケアリーヴブランド全体の認知向上につながった。


●ラインアップ拡充で、小売店の棚1段全部ケアリーヴに


 ケアリーヴの成長を支えたのは、商品そのものの機能性だけではない。店頭での見せ方も重要だった。


 ばんそうこうはパッケージからサイズや機能の違いを判断しにくい商品のため、売り場で瞬時にサイズや素材感を理解してもらうには工夫が必要だった。パッケージを手に取り、実際のサイズを確かめようとする消費者が多いことに着目し、ニチバンは実寸サイズを示すカードや、基材の伸縮性を触って確認できるPOPなどを用意した。


 さらに、小売店に対して「1段まるごとケアリーヴ」といった棚展開を提案した。単品で置かれているだけでは、Mサイズ、Lサイズ、防水タイプ、指先用などの充実したラインアップを訴求しづらい。売り場の中でケアリーヴシリーズとして大きく面を取ることで、消費者が自分の用途に合わせて選びやすくした。


 「単品ではなかなか難しいのですが、シリーズとして並ぶと、MサイズやLサイズ、防水タイプなどの商品も選んでいただけるようになります。売り場での見え方は大きかったと思います」と富田氏は話す。


 現在のケアリーヴの売れ筋はMサイズが中心で、販売数量ベースでは「Mサイズ30枚入り」(希望小売価格500円税別)が最も売れている。一方、販売金額ベースでは「Mサイズ50枚入り」(同820円)が最も売れている。さらに、Mサイズ100枚入り(同1580円)のような高単価の商品も人気商品だという。


 特に、ニチバンが2012年3月から販売する「ケアリーヴ 治す力」シリーズの影響は大きく、ケアリーヴブランド全体の売り上げは約13年間で7倍以上に成長したという。


 「昔は価格が購買の大きな決め手でした。しかし今は、多少高くてもいいものを買いたいというお客さまが増えています。100枚入りで1000円を超える商品がこれほど売れるとは、当初は思っていませんでした」と富田氏は話す。


 POS分析サービス「ウレコン」でも、ケアリーヴの商品が救急ばんそうこうカテゴリの上位に並んでおり、一度使った人がリピート購入している商品であることがうかがえる。


●ばんそうこう=ケアリーヴと呼ばれるブランドへ


 ばんそうこう市場のトップを走るニチバンのケアリーヴ。だが、まだ課題はある。富田氏は「ばんそうこうと聞いたときに最初に思い浮かべてもらえるかどうか」だと言う。


 SNS上では定期的に「ばんそうこうを何と呼ぶか」という話題が上がる。地域や世代によって、「バンドエイド」「カットバン」「リバテープ」「サビオ」など呼び方はさまざまだ。しかし、そこに「ケアリーヴ」と答える人はまだ多くないという。


 「ケアリーヴという名前をもっと覚えていただきたいです」と富田氏は話す。販売実績ではトップになっても、一般名称のように想起されるブランドになるにはまだ道半ばだという認識だ。目下の課題は若年層との接点づくりだ。


 ケアリーヴは30〜60代では高い支持を得ている一方、20代では相対的にシェアが小さいという。その対策として現在は、若い世代がばんそうこうを必要とする場面に合わせたサンプリングも進めている。


 さらに、今後の成長領域として同社が見据えているのが海外展開だ。すでに台湾、韓国、タイなどで展開しており、中国市場への参入準備も進めている。海外ではばんそうこうがMサイズしかないという国も多く、日本のように貼る場所や用途に応じて形状やサイズを選べる提案には成長余地があるという。


 「日本のばんそうこうの良さ、ケアリーヴのフィット感や使いやすさは、海外でも伝えられるのではないかと考えています」と富田氏は話す。


 ばんそうこうは身近な消耗品であり、肌に直接貼る商品でもある。従来は価格で選ばれる商品だったが、貼り心地やはがしやすさ、傷を守るといった機能性に価値を感じる人が増え、商品の選び方が変わってきた。


 1997年の発売から約30年。ケアリーヴは、短期間で一気に市場を獲得した商品ではないが、安売りをせず、価値を地道に伝え、売り場で選びやすくし、消費者の声に応えてラインアップを広げる工夫を続けてきた。今後は日用品としての定着から、指名されるブランドへの進化を目指す。



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  • 新発売当時、メーカーの方が訪店のたび100枚入りサンプルを数箱提供してくれた。バ●ドエイドお買い上げのお客さんにもサンプリングしたっけ。。。
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