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家電量販店最大手のヤマダホールディングス(以下、ヤマダHD)と、同じく大手のエディオンが経営統合し、売上規模約2.5兆円の巨大家電量販店が誕生した。これは2位の倍以上の規模であり、圧倒的なトップシェアとなる。
統合の主な目的として明らかにされたのが、スケールメリットを生かした共同仕入れによるコスト抑制と、両社のプライベートブランド(PB)家電の調達力強化である。
現在、ヤマダHDではドラム式洗濯機などのPB売り上げが全体の11.2%ほどを占めている。また、エディオンもデザイン性と実用性を両立させた「ビジュ家電」などのPBに力を入れており、その売上比率は35.6%に達しているという。
家電量販店のPBといわれても、いまひとつピンとこない人もいるかもしれない。日本の家電が世界を席巻していた時代を知る世代からすると、家電はナショナルブランド(NB)メーカーの製品だという印象が強いだろう。
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もちろん、家電の主流がNBであることに変わりはない。ただ、家電量販店がPBの売り上げを増やそうとする動きは強まっている。背景には、かつてとは大きく変わった家電メーカーと量販店の業界環境がある。
かつて世界をリードしていた日本の家電メーカーは、近年、中国や韓国などのアジアメーカーに押され、事業の縮小や売却を相次いで進めてきた。
家電メーカー同士が激しいシェア争いを繰り広げていた時代には、家電量販店において、各社が自社製品を売るために莫大な販促コストをかけて競い合っていた。家電量販店側も、競合他社と価格競争をしながらシェアを奪い合っていた。
その結果、家電量販店業界ではヤマダHD、ビックカメラ、ヨドバシカメラ、エディオン、ケーズデンキといった大手への寡占化が進み、競争に敗れた多くの中小チェーンは統合・再編されていったのである。
本稿では、ヤマダHDとエディオンの統合を起点に、家電量販店におけるPB家電の意味がどのように変わってきたのか、そして今後の競争軸がどこに移っていくのかを考えてみたい。
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●単なる販促商品だった家電PB
家電量販店同士の過当競争は、日本の家電メーカー衰退の一因となった。当時、世界トップレベルの技術力を持つと言われた日本メーカーは、激しい価格競争にさらされ、開発投資を国内市場で十分に回収できなくなっていった。
その一方で、中国や韓国の家電メーカーは、安い製造コストを武器に日本メーカーに追い付こうと力をつけていった。特に2000年代以降はデジタル化が進み、技術力の差も縮小したことで、台頭著しい中韓メーカーに圧倒されるようになった。
図表1は、20年ほど前と直近の国内家電メーカーの売り上げを比較したものである。ここからも、国内メーカーが家電事業の縮小・撤退・売却を進めてきたことが分かる。日本メーカー同士によるシェア争いと、それを背景にした量販店の寡占化の時代は、終わりを迎えようとしているのである。
こうした環境の変化は、PBのあり方も変えてきた。もちろん、昔から家電量販店のPBは存在していた。ただし、それは現在のように小売企業が主体となって商品を企画・開発するものではなかった。
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かつての家電PBは、家電量販店がNBメーカーに一定の販売数量を約束する代わりに、基本性能はNB商品とほぼ同じまま、デザインや仕様を一部変えた商品だった。つまり、消費者ニーズを起点にしたオリジナル商品というより、量販店の利幅を確保するための販促上の取り決めに近かったのである。
家電量販店側としても、価格競争によって中小競合店からシェアを奪うことができた時代には、こうした手法に意味があった。しかし、シェア争いの相手であった中小量販店が減少すると、競争は次第に大手同士の争いへと移っていった。その結果、価格だけでは勝負がつきにくくなったのである。
また、競争に敗れて撤退モードに入った家電メーカーは、シェア拡大よりも収益確保を重視するようになった。そのため、量販店における価格競争も以前ほど激しいものではなくなっていったのである。
こうして、家電量販店における競争の軸は、保証、メンテナンス、サービス、ポイント制度などへと移っていった。そこで重要性を増してきたのが、小売企業が消費者ニーズをくみ取って開発する「真のPB」なのである。
●PB開発で先行するのは、家電量販店ではなく……
現在の家電のPBは、デザインや機能まで小売企業が主体となって開発しており、PB本来のあるべき姿となっている。ただし、アパレルや生活雑貨、家具などとは異なり、家電の場合は製品品質を担保する高度な技術力が求められるため、小売企業が製造技術そのものに関わることは難しい。
そのため、小売企業に求められるのは、「もっとおしゃれなものがほしい」「機能を絞ったリーズナブルな製品がほしい」といった消費者ニーズをくみ取り、商品企画に反映させる力である。
近年、家電PBで大きな話題となった商品の一つが、ニトリのドラム式洗濯機だ。機能を絞り込み、コンパクトなサイズにしながら、10万円を切る価格を実現した点が注目された。まさに「必要な機能に絞ることで価格を抑えてほしい」という消費者ニーズを形にした商品といえる。
こうしたリーズナブルな家電は「ジェネリック家電(機能を絞り込み、価格を抑えた家電)」と呼ばれることがある。その担い手として目立つのは、ニトリのほか、ドン・キホーテを展開するPPIH、アイリスオーヤマなどである。
一見すると、これらの企業は家電量販店とは違う業態に見える。しかし、共通しているのは、消費者のニーズをくみ取り、機能と価格のバランスを取った商品を開発してきた経験を持つ点だ。家具、生活雑貨、日用品などの分野で、長年にわたり「高すぎず、使いやすい」ジェネリック商品を世に送り出してきた企業なのである。
一方、家電量販店は長らく、NB商品の価格競争や同業他社とのシェア争いを主戦場としてきた。そのため、消費者ニーズを起点に自社商品を企画し、売り切る体制づくりでは、ニトリやPPIH、アイリスオーヤマのような企業が優位に立っている。
この差は、他の小売業を見ても分かる。ユニクロ、無印良品、ABCマート、カインズなど、本格的な製造小売業として成長した企業には、同業の2位以下が簡単には追いつけない強さがある。商品を安く作るだけでなく、誰に、どの価格で、どのような価値として届けるかまで設計できているからだ。
こうしたジェネリック商品を持つ企業の強みは、自社開発した商品を売り切るための顧客ターゲティングができている点にもある。
ジェネリック商品の購買意思決定者は、女性消費者が中心になりやすい。前述の製造小売業が専門店チェーンとして成長した背景には、2000年代以降、地方や郊外で軽自動車が普及し、ロードサイド(幹線道路沿い)店舗に女性消費者が行きやすくなったこともある。
女性消費者が購買決定に関わる商品では、デザイン性や、機能を絞り込むことで生まれるコスパが重視されやすい。そうしたニーズを的確に捉えたことで、ジェネリック商品を持つ企業が国内小売業の勝者になったのである。
●家電量販店に足りない、女性消費者との接点
ジェネリック家電の主な購買者も、女性消費者になる可能性が高い。ただし、家電は消耗品と比べて購入頻度が低く、家電量販店への来店頻度も高くない。さらに、美容家電や調理家電などを除けば、女性消費者が日常的に家電量販店を訪れる動機は限られている。
一方、ニトリの場合は事情が異なる。ドラム式洗濯機を購入する予定がなくても、生活雑貨や家具を目的に来店する消費者がいる。特に、コスパの良い生活雑貨を支持する女性消費者にとって、ニトリは手頃で使いやすい商品を見つけられる場所として知られている。
つまり、ニトリのドラム式洗濯機のヒットは、製品そのものの良さに加え、ジェネリック商品を持つ企業として築いてきたブランドイメージと、日常的な来店頻度の高さに支えられているのである。
これを実現できなければ、ジェネリック家電の領域において、家電量販店がニトリやドン・キホーテなどの異業種ライバルに勝つことは難しいだろう。
●ヤマダHDとエディオン統合は、池袋決戦の前哨戦か?
このように、PB強化は家電量販店が価格競争だけでは生き残れなくなったことを示している。
ただ、ヤマダHDとエディオンが直面している課題はそれだけではない。6月30日には、西武池袋に大型店であるヨドバシ池袋がオープンし、ビックカメラやヨドバシカメラというカメラ系家電量販店による競争がさらに激しさを増そうとしている。
過去の経緯を踏まえると、大都市における競争激化はビックカメラとヨドバシカメラの2社間だけではなく、郊外店舗にも大きな影響を及ぼす可能性がある。巨大ターミナル駅周辺で集客競争が激しくなれば、縮小傾向にある郊外市場から、さらに需要が奪われることになるからだ。
その意味で、ヤマダHDとエディオンの統合は、PB家電の調達力強化にとどまらない。製造小売業とのPB競争、そして家電量販店による都市部での集客競争の双方に備えるための、防衛的な業界再編とも言えるだろう。
ヤマダHDとエディオン統合は、前哨戦にすぎない。本当の争いは、これから池袋で始まるのである。
筆者プロフィール:中井彰人(なかい あきひと)
みずほ銀行産業調査部・流通アナリスト12年間の後、独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。執筆、講演活動:ITmediaビジネスオンラインほか、月刊連載6本以上、TV等マスコミ出演多数。
主な著書:「小売ビジネス」(2025年 クロスメディア・パブリッシング社)、「図解即戦力 小売業界」(2021年 技術評論社)。東洋経済オンラインアワード2023(ニューウエイヴ賞)受賞。
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