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■漫画やアニメは子どものものだった
今や、日本では漫画やアニメはあらゆる世代が親しむものになっている。1960年代頃までは、「漫画やアニメは子どもの読み物」「漫画を読んだら馬鹿になる」などと言われていた。そして、漫画は子どものうちに卒業するものと考えられており、大人が漫画を読んでいたら白い目で見られたと語る人もいる。
(参考:【漫画】単行本は品薄になるほど大人気4コマ漫画『ぼっち・ざ・ろっく!』" )
ところが、60年代にストーリー性を重視し、絵柄もリアルになった劇画が台頭しはじめると、状況が変わってくる。68〜73年にかけて「週刊少年マガジン」で連載された『あしたのジョー』は大学生のバイブル的な存在となった。
そして、74年から放映が始まったアニメ『宇宙戦艦ヤマト』は大人をも魅了した。70年代は『ルパン三世』など大人向けのアニメの製作も盛んになり、78年にはアニメ雑誌の「アニメージュ」が創刊されるなど、70年代後半はアニメを見る大人がごくごく普通の存在になっていたようである。
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といっても、その頃に漫画やアニメを楽しんでいた大人は、まだまだ20〜30代の若い層が中心だったと思われる。2020年代の現代は、シニア層も漫画やアニメを普通に楽しむようになっているのだ。
■シニア向け情報誌「サライ」では漫画特集
シニア向けの情報誌「サライ」(小学館/刊)では、漫画の特集をこれまで3回も組んでいる。筆者も原稿を執筆した2022年9月号は、「日本漫画は大人の教養」と題した特集を組み、記事には『ストップ!! ひばりくん!』で知られる漫画家の江口寿史が登場した。
そう、今や漫画は大人の教養、なのである。もはや、「漫画を読んだら馬鹿になる」と言われていた時代とは真逆の存在になったのだ。ひょっとすると、20年後、30年後の「サライ」では「日本のゲームは大人の教養」という特集が組まれるかもしれない。
ところで、サライの読者層は50代以上が中心といわれるが、その世代は漫画やアニメに熱狂した経験をもつ人たちが多い。筆者も取材のため、60代の漫画好きと話をすることが多いが、今の“推し活”にハマっている若いファンよりも濃い人が多いと感じる。
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■シニア層の方が熱狂的な漫画好きが多い?
現代の若者にとっては、娯楽が多様化しているため、あくまでも漫画やアニメは数ある娯楽の一つでしかないと語る識者がいる。一方、現在の60〜70代が子どもの頃は、漫画やアニメは最高のエンタメであり、エンタメの頂点であった。漫画雑誌の発行部数が数百万部だった時代を生きたのである。
したがって、シニア世代の漫画好きはまったく珍しくないどころか、動画配信サイトの普及によって、最新のアニメを視聴する人たちも増えているといわれる。現に、筆者の知り合いの65歳の漫画・アニメ好きのA氏は、『【推しの子】』や『ぼっち・ざ・ろっく!』も観賞しているという。
A氏は、こうした作品を見ることで「若い人たちの文化を知ることができる」と語り、さらには「子どもの頃、親が厳しくて、漫画やアニメを思う存分に見れなかったんだ。だから自由の身になった今、あの頃やりたかったことを存分に楽しんでいるんだよ」と語ってくれた。
70年代、80年代の漫画のリバイバルブームは依然として盛んである。昭和レトロブームの影響もあって、勢いづいている印象も受ける。鳥山明の『ドラゴンボール』は80年代に連載が始まった漫画だが、現在の10代をも惹きつけている。漫画やアニメが、既に世代の壁を越えて楽しめる娯楽となっているのは間違いないだろう。
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(文=山内貴範)
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