夫の夜の誘いを断ったら「バカにしてんのか」と怒鳴られた。不機嫌をまき散らす夫に“妻の決断”は<漫画>

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2024年05月25日 16:00  女子SPA!

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「お前ってホント無能だよね。よかったね 専業主婦になれて」「ベッドで癒してくれない? じゃあもう風俗に行けってことだな」「なにその服? もう少し体型戻さないと似合わなくない?(笑)」

 エリートを自負する会社員・翔は、こんな言葉を妻の彩にかけるのが日常。相手を傷つけている自覚は全くありませんでした。妻がある日、思いきった行動に出るまでは――。

「モラハラ夫は変わらない」と世間で言われてる中、変わりたいと必死でもがく、モラハラ“加害者”の視点を描いたコミック『99%離婚 モラハラ夫は変わるのか』(KADOKAWA刊)。「嫌な夫にやり返す単なるスカッと漫画ではない」「我が家の状況と同じ」と、大きな反響を呼んでいます。

 モラハラ・DV加害者のための変容支援コミュニティGADHAを主宰する中川瑛(なかがわ・えい)さんによる原作を、3人の子どもを育てるマンガ家でシングルマザーの龍たまこ(りゅう・たまこ)さんが漫画化した話題作を、出張掲載。おふたりに、本作の見どころについて語ってもらいます(以下、KADOKAWAの寄稿)。

◆加害者はどうしようもないモンスターとして語られる

――被害者の葛藤を描く作品は多くありますが、加害者の心の内を描いた作品は珍しいなと思いました。加害者側からの声を作品にすることになった経緯、また原作を読んだ第一印象を教えてください。

原作・中川瑛さん(以下、中川):ここ数年で、モラハラ・精神的なDVについては、被害者の方々に対して実にたくさんの情報が共有されるようになりました。SNSやwebだけではなく、テレビでも被害が語られるようになり「私が受けていたのはDVだったんだ」「フキハラ(不機嫌ハラスメント)やモラハラと呼ばれるようなものなんだ」という形で、認識が進んできました。

 このように被害者の声が形になり取り上げられることを通し、DV・モラハラの問題が社会に認識されていく中で、加害者はようやく自分を加害者だと自覚します。そして少なくない人が「モラハラ」や「DV」といった言葉を調べるのですが、基本的に出てくる情報の全ては「加害者は変われない」「パーソナリティ障害」などであり、それは強烈なスティグマ(烙印)として機能します。「変われないくらいならいっそ認めない」となることが、言われた側の心理としては自然であるほどに、モラハラ・DV加害者は、どうしようもない生まれついてのモンスターとして描かれているのです。

◆多くのDV・モラハラ加害者が通った“プロセス”を漫画に

中川:僕自身も、モラハラ・精神的DVをしていた人間です。しかし、学び変わっていくことによって、妻とお互いに今が人生で一番幸せだと言い合える関係になりました。人は変わっていけます。DVのような問題はまず被害者側の声が可視化されることが当然であり、被害者のことを最優先した情報が提供されることも必然的なので、「加害者は変われない」という考えになるのも無理はありません。

 まず十分にDVやモラハラとは何か、なぜそれが問題なのか、それを悲しんだり傷ついたりして良いと分かった先に、逃げる選択肢が用意され、それを選ぶことが悪いことではないというふうに認識されていくことが大切です。その上で、被害者向けの情報が社会に広がりつつあるいま、ようやく加害者の心理や、加害者の変容について語って良い時代になりつつあるのではないかと思います。加害者の心理、それ以上に変容について語ることが可能な土壌ができてきたのではないでしょうか。

 そこで、本作のように加害者の心理を生々しく描き、加害者自身の心の痛み、未熟さ、足りていない能力、そしてその上で、加害者が学び変わっていくプロセスを、その失敗や行ったり来たり、良くなったと思ったらまた失敗して傷つけてしまう、そんなリアリティを描きたい、それをストーリーとして発信したいと思いました。特定個人のストーリーを漫画にしたわけではありませんが、多くの人が通ったプロセスを描けたと思っています。

漫画・龍たまこさん(以下、龍):「これは絶対に世に出すべきだ」と感じました。今までモラハラやDVを受ける側の目線から書かれた作品は多くあったものの、加害者心理をここまで深く掘り下げた作品は少なかったのではないかと思います。しかもそれを、男性が書いた、というところに非常に大きな意義があると。こういった作品は女性が発信するのと男性が発信するのとでは受け取られ方が全然違いますので……。中川瑛さんが書いてくださったこの原作を、より伝わりやすい形にするのがわたしの仕事だと思いました。

◆「自分は加害者だと思えない」という人に届けたい

――『99%離婚 モラハラ夫は変わるのか』を手に取る読者のみなさんへ、メッセージをお願いします。

中川:僕は、この本が「自分はモラハラ・DV加害者だと言われたけれども、そうとは思えない。それでも一応読んでみるか」というような人に届いてほしいなと思っています。この本を読めば、DVというのが身体的・物理的なものにまったく限らないことがはっきりとわかると思います。そして、自分の養育環境や学校や職場では当たり前だったコミュニケーションが暴力と認識される場面があることもはっきりとわかると思います。

 大事なのはその時に「このくらい自分にとっては普通で、傷つくようなことじゃないんだから、加害者なんて言われたくない」と思うのではなく「これによって傷つく人がいるんだとしたら、自分は人を傷つけてしまった。自分を傷つけてくる人と一緒に生きていきたい人なんていない。だから、自分が一緒に生きていきたい人に、傷つけるのではなく、ケアできる人間になりたい。そして、それは可能なのだ」ということを知ってほしいと思います。

 人は学び変わることができます。失敗することもあります。でも、知識を持った仲間と共に、弱音を吐きながら、愚痴をこぼしながら、支え合いながら、変容を認め合い、励まし合いながら、変わっていくことができます。どうか一人でも多くの人が「自分に変えられる部分がある」と信じ、GADHAや、他のDV加害者向けのプログラムやコミュニティにアクセスされることを、心から願っています。

◆モラハラ加害者の葛藤と、感情の変化を見届けて

龍:見どころ満載の本書ですが、特に見てほしいのは、モラハラ夫である翔の葛藤、感情の変化のシーンです。妻子が出て行った後の荒れた生活、自暴自棄な姿から、NoMA(編集部注:作中に登場する、モラハラ・DV加害者のための変容支援コミュニティ)という居場所を見つけ、少しずつ自らを振り返って「変わろう」としていく。それはとてつもない苦しみを伴うことです。苦しみながらも翔が自分自身と対峙する様子をぜひ見て頂ければと思います。
【龍たまこ】
3人の子どもを育てるマンガ家。1981年生まれのシングルマザーで、保育士の資格を持つ。ライブドア公式ブログ「新・規格外でもいいじゃない!!-シングルマザーたまことゆかいな子ども達-」をほぼ毎日更新中。著書に『規格外な夫婦~強迫症夫と元うつ病妻の非日常な日常~』(宝島社)、『母親だから当たり前? フツウの母親ってなんですか』(KADOKAWA)。X(旧Twitter):@ryutamako、Instagram:@ryu.tamako2

【中川瑛】
モラハラ・DV加害者変容に取リ組む当事者団体「GADHA」代表。妻との関係の危機から自身の加害性に気づき、ケアを学び変わることで、幸せな関係を築き直した経験から団体を立ち上げる。現在は加害者個人だけではなく、加害的な社会の変容にも取り組んでいる。著書に『孤独になることば、人と生きることば』(扶桑社)、『ハラスメントがおきない職場のつくり方 ケアリング・ワークプレイス入門』(大和書房)。X(旧Twitter):@EiNaka_GADHA

<構成/女子SPA!編集部>

【女子SPA!編集部】
大人女性のホンネに向き合う!をモットーに日々奮闘しています。メンバーはコチラ。X:@joshispa、Instagram:@joshispa

このニュースに関するつぶやき

  • 変わる気になれば人は変われる。だけどそれを傷つけられながら待つのは生き地獄であろう。相手を取り替えた方が早くて幸せな場合は多い。
    • イイネ!5
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