「恋愛対象は女性」年間2億円の売り上げを誇る“女性ホスト”が語る、同性ならではの強み

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2024年06月22日 17:00  週刊女性PRIME

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天使ニアさん 撮影/北村史成

 ホストになって約2年。日本最大級のホストクラブグループに所属し、年間2億円の売り上げを誇るという人気ホストの天使ニアさん。ジェンダーレスの時代を象徴するかのような“王子様”は、いったいどんな存在なのか。直撃しました!

女性ホストは「各店舗に1人はいるんじゃないかな」

 “男装の麗人”と聞いて、あなたは誰を思い浮かべるだろうか。

 現在放送中の連続テレビ小説『虎に翼』(NHK)に登場する女性、山田よね(土居志央梨)は、悲しい過去を背負い、男装で生きることを決意。その凛とした佇まいで好評を博している。

 そして、日本屈指のホストクラブ激戦区・歌舞伎町には世にも珍しい“女性ホスト”が、超人気男性ホストに勝るとも劣らない活躍を見せているという─。

「仕事の内容は、男性ホストと同じ。女性のホストが珍しいのは確かですが、僕だけではありません。僕のように公表しているプレーヤーが少ないだけで、各店舗に1人はいるんじゃないかな」

 そう話すのは、歌舞伎町ホストクラブ「Blue Rose」で代表を務める女性ホスト、天使ニアさんだ。

僕はもともと服の好みが男の子っぽかったり、声も低めだったりして、男性に間違われることもよくありました。なおかつ僕は、恋愛対象も女性なので、接客も普段自分が女の子に接するときと同じで、違和感がないんです。好きなタイプは、キレイさと可愛さを兼ね備えた人。品のある女性が好きです

 彼女の性自認は女性のため“正真正銘の女の子”だが、店に訪れる“姫”たちを王子様としてエスコートしている。そんな彼女を慕う姫たちには、共通点があるという。

「お客さんの年齢層は20〜25歳の女性が中心で、特にジャニーズや乃木坂46など男女問わずアイドルのファンが多いんです。お客さんたちは“推しメンの握手会感覚”で僕に会いに来てくれているみたいですね(笑)」

 なかには宝塚ファンの姫もいるそう。たしかに、ニアさんがメンズスーツを着こなす姿はまさに、令和の男装の麗人。そのビジュアルに心をわしづかみにされる姫が、続出しているのだ。

僕も女性なので、お客さんの表情を見れば、何を考えているのか、どんなことを言ってほしいのかは、だいたいわかります。むしろ、男の子のスタッフが何を考えているのかがよくわからないんです。ある男性スタッフが接客している席にヘルプでついたときも、女の子がすごくつまらなそうにしてるのに、ずっと自分の興味のある話ばかり続けていて『どういうつもりで仕事をしてるのかな?』と、混乱しました(笑)

 ホストクラブは、もっとも男女のすれ違いが生じやすい社交場なのかもしれない。

 彼女がホストとしてのキャリアを歩み始めたのは、約2年前。それまでは、男装をした女性キャストが接客をするコンセプトカフェ(以下、コンカフェ)で、オーナー兼スタッフとして働いていたという。

ホストクラブのSNSにDMを送り直談判

大学時代にアルバイトで男装のコンカフェ嬢を始めて、大学を卒業してからは“自分の店を持つ”という目標を持って働いていたんです。3年ほどでその目標を達成し、最終的には2店舗のコンカフェを経営していました。楽しい仕事でしたが、コンカフェの世界における自分なりのゴールを達成してしまったんです

 目標を失い、次の人生を考えたときに思いついたのが“ホストへの転身”だった。

ホストを目指した理由は“楽しそう! やってみたい!”という好奇心からでした。接客も好きだし、お酒を飲むのも好き。そして、常に目標があって、毎月ナンバーワンを競っているという実力主義のシステムにも興味があったんです。コンカフェの場合、店や個人の売り上げを気にしているのは店長やオーナーだけで、キャストはあまり意識する機会がないんです。競争もないし、平和な環境ですが、僕には刺激が足りませんでしたね

 そうして28歳でホストを志したものの、業界のツテは皆無。そもそも、女性がホストになれるのかどうかもわからなかった。そこで彼女は、人気ホストクラブを多数運営する冬月グループのTwitter(現:X)アカウントに、入店を希望するDMを直接送り、直談判したという。

とにかく聞いてみなければ何も始まらないですよね。その後、面接に呼ばれて採用され、すぐにホストとして働き始めました

 友人たちに「ホストになる」と告げたところ「女でもホストになれるんだ! でも、ニアなら大丈夫そうだね」と太鼓判をもらったそうだ。

当時、僕はホスト業界に対して“楽しそう”という印象と、昔ドキュメンタリー番組で見た過酷なイメージしか持っていませんでした。『売れなかったら先輩に罵倒されるのかな』なんて思っていましたが、みんな優しくて逆に拍子抜けしましたね。選んだお店がよかったのかもしれませんが、想像の100倍はクリーンな世界でした。とはいえ、あまり寝られなかったり、どんなに二日酔いでも営業中はお酒を飲まなければならないなど、体力的にキツい場面はもちろんあります

 決してラクして稼げる仕事ではない、とニアさんは強調する。

女性ホストに対する反応も人それぞれでした。何も知らないお客さんの席について話を始めると、声が男性よりも高いので女の子だとバレるんです。性別を尋ねられて、正直に女性だと伝えると『女の子ホストいいね!』という好意的な人と『男の子だったら推したんだけどな〜』と残念がる人は半々でした。正直、ほとんどの姫から『女の子のホストは嫌だ』と拒否される覚悟もあったので、受け入れてくれる子の多さにも驚きました

 うれしい誤算とともに、コンカフェで磨いた接客術と話術を持つ彼女は、ホストとして頭角を現していく。気づけば'23年12月には、グループ全体での月間売り上げナンバーワンに輝いていた。そして今年2月から、新店舗の「Blue Rose」で女性ホスト初の“代表”に就任。わずか2年で、業界の常識を覆し続けている。

 そんな彼女の支えになっているのが、応援してくれる家族の存在だ。

ホストになった当初は、なかなか親に言い出せませんでした。教育熱心でまじめな親なので、どんな反応が返ってくるのかもわからなくて……。でも、LINEで送られてくるメッセージでは、僕の仕事について勘づいている様子だったので、最近カミングアウトしました。今では僕のSNSやYouTubeを逐一チェックしてメッセージをくれる、一番のネットストーカーになっています(笑)

 ニアさんは「身近な人に応援してもらえるのは、本当にありがたい」と笑顔を見せる。着実に前に進むニアさんだが、“代表”を担う重圧に悩むこともあるという。

上に立ったりするのは向いていない」

コンカフェのオーナーも経験して、自分は誰かを指導したり、上に立ったりするのは向いていないという自覚があるんです。でも、いい年だし、わがままは言ってられないと思い、引き受けました。今も管理職には苦手意識がありますが、努力していた従業員の子がイベントで大きな売り上げを出したときは、涙が出るほどうれしい。これは、プレーヤーのままでは知ることができなかった喜びですね。『Blue Rose』は今が頑張りどきなので、週刊女性読者のみなさんもぜひお店に来てもらえるとうれしいです!

 天使ニアはこれからも、性別や業界の常識にとらわれず、軽やかに時代を歩いていく。

取材・文/大貫未来

天使ニア(あまつか・にあ) 1994年生まれ、栃木県出身。ホストクラブ「Blue Rose」代表。コンカフェ嬢から、コンカフェ経営を経験した後、男装アイドルとして活動。2022年にホストに転身後は、持ち前の話術とSNSを駆使したプロモーションで人気を博す。約2年で年間売り上げ2億円のプレーヤーとなり、現職。近年では、日本でもっとも有名な女性ホストとしてメディアに出演するなど、活動の幅を広げている。

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