新薬物“ハッピーウォーター”とは?「強力で危険」 日本への影響も…拡大するミャンマー麻薬ビジネスの闇

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2024年10月20日 07:05  TBS NEWS DIG

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2021年のクーデター以降、軍と民主派・少数民族の武装勢力による戦闘が激化しているミャンマー。内戦状態が長期化するなか、麻薬をめぐる深刻な問題も広がっている。
いまや世界最大の麻薬密造拠点となったミャンマーの国境地帯を取材すると、“新種の薬物”が流通しているとみられることも分かった。ミャンマー軍の関与も疑われる麻薬ビジネスの闇に迫る。

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民主派「麻薬密売に軍が関与」無法地帯化するミャンマー

ミャンマーの民主派組織、NUG=国民統一政府は15日、傘下の武装組織が制圧したミャンマー軍の拠点から大量の麻薬を発見したとする声明を発表した。見つかったのは、ケシの実からとれるアヘン約2000キロ以上。

民主派側に投降した兵士らは「戦場で部隊の士気を高めるために麻薬を使っていた」などと話し、麻薬の使用を認めたという。

さらに、大量のアヘンが保管されていたことから、NUGは「ミャンマー軍が麻薬の密売や流通に関与していることを示す証拠だ」と強調した。

ミャンマー情勢に対する国際社会の関心が薄れていくなか、軍の関与までもが浮かび上がるミャンマーの薬物汚染は深刻な問題となっている。

UNODC=国連薬物犯罪事務所の報告書によると、ミャンマーでは2021年の軍事クーデター以降、ヘロインの原料となるアヘンの推定生産量が約1080トン(2023年)に急増した。

ミャンマーはアフガニスタンを上回り“世界最大の供給国”になったとされる。
近年はケシ栽培などの生産者が減少傾向にあったものの、クーデター後の通貨暴落や物価高騰といった経済の混乱によって、市民生活は困窮。少しでも収入を得るために“麻薬ビジネス”に手を染める人が増えているとみられる。

最大都市ヤンゴンなどでは、軍が治安維持のため深夜に外出禁止令を出しているにも関わらず、ダンスクラブは多くの若者で賑わう。闇夜に煌々と光を放ち、周囲に大音量を響かせながら営業している。

SNSにはクラブで若者らがヘロインや覚醒剤などの違法薬物を売買したり、使用したりする様子が投稿されていた。ある当局関係者はこう打ち明ける。

「クラブのオーナーたちは軍に賄賂を渡しています。軍は、若者らの薬物乱用には何も対策を取っていない。厳しい取締りをすれば、軍政に対する不満をさらに高める可能性があり、黙認している状態です」

戦闘激化で“麻薬ビジネス”拡大「原料は中国など近隣国から…」

ミャンマー最大の麻薬密売拠点となっているのが、ラオス・タイと国境を接する北東部シャン州の山岳地帯だ。「黄金の三角地帯=ゴールデントライアングル」と呼ばれている。

タイ側から幅20メートルほどの小さな川を挟んだ先にミャンマーの住宅地が広がる。ただ、日本人などの外国人は容易に立ち入ることはできない。

筆者は今年2月、ミャンマー北東部シャン州で覚醒剤やヘロインなどを扱う密売組織とつながりのある男性に話を聞いた。

ミャンマーの麻薬密売組織とつながりのある男性
「シャン州では主にいくつかの少数民族が、アヘンからつくられるヘロインや“ヤーバー”と呼ばれる(錠剤型の)覚醒剤などありとあらゆる薬物を密造しています」
「少数民族は麻薬を戦闘用の武器と交換することもあれば、密売で得た資金を武器の購入にあてることもあります」
「製造機械の多くは中国などから運ばれていて、(各村の)村長などが生産を管理し、その上には元締めがいます」

男性によると、麻薬の原料や製造機械は、中国やインド、パキスタンといった周辺国から集められる。密造された薬物の多くは、タイやラオスへと陸路で密輸されるという。クーデター以降、軍との戦闘が激化する少数民族は、麻薬の密造・密売を拡大することで、武器を調達しているとみられている。

さらに、こうした麻薬ビジネスに関わっているのは、少数民族だけではない。

ミャンマーの麻薬密売組織とつながりのある男性
「制服を着たミャンマー軍の幹部が(薬物の)取引現場に来ているのを何度も見ました」 

男性は、ミャンマー軍が不足する外貨の調達などを目的に、「麻薬密売に関与している可能性が高い」と証言した。内戦状態が続くミャンマー情勢の背後にある麻薬ビジネスの複雑さ、根深さがうかがえる。

新たな薬物「ハッピーウォーター」とは?

取材を進めると、最近は新しい薬物も出回っているという情報を得た。国境地帯で活動する密輸組織の幹部を名乗る人物に話を聞くと、「ハッピーウォーター」と呼ばれる新種の合成麻薬だという。いったいどんな薬物なのか。
覚醒剤やヘロイン、幻覚作用のあるケタミンなどを混合し粉末状にしたもので、ティーパックのようなパッケージに梱包されて売られている。水や酒に溶かして飲むことが多いという。

密輸組織の幹部を名乗る人物
「その名の通りとてもハッピーな気分になれる。ただ、成分は強力で、質が悪く危険だ。安価で手に入れることができるので需要は大きい。ミャンマーのヤンゴンやネピドーといった主要都市だけでなく、タイのパタヤ、バンコクにあるクラブなどでも大量のハッピーウォーターが“パーティードラッグ”として出回っている」

新たな薬物の流入を警戒するタイ当局は去年から、クラブでハッピーウォーターを所持していた若者らや外国人グループなどを相次いで摘発するなど、取り締まりを強化。ハッピーウォーターが精神に悪影響を及ぼし、過剰に摂取すれば死亡する危険性もあるとして注意を呼びかけている。

ミャンマーから密輸されるこれらの薬物は、アジアを中心に世界中へと広がっている。UNODCによると、特に覚醒剤はオーストラリアや台湾、そして日本にも流入しているという。

薬物の無法地帯と化しているミャンマーでこのまま軍事政権が長期化すれば、事態はさらに悪化の一途をたどってしまうおそれがある。

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  • ケシや大麻草を絶滅にしようと考えないのか?
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