オーバーツーリズムが修学旅行にも影響。そもそもなぜ京都が定番?
修学旅行の行き先はどう決まるのでしょうか。そもそもなぜ、京都と奈良が定番なのでしょう。日本修学旅行協会 理事長の竹内秀一さん、事務局長の高野満博さんに話を聞きました。「学校によって修学旅行の狙いは違います。ですから、本来は行き先が同じである必要はありません。修学旅行は単なる旅行ではなく、学校の教育課程の一環ですから、地域の特性、生徒の実情、学校の教育目標などを総合的に考慮したうえで計画されるものです」と同協会理事長の竹内さんは話します。
そうはいってもやはり京都・奈良は人気があります。同協会が発刊している『教育旅行年報データブック2023』によれば、中学校の修学旅行先トップ5は、京都・奈良・大阪・東京・千葉。高校では、大阪・京都・沖縄・東京・奈良の順になっており、京都と奈良はいずれもトップ5にランクインしていました。
京都が選ばれる理由について、「最近は修学旅行にも探究学習を取り入れていますが、以前は歴史学習や文化財学習がメインでした。京都ほど歴史や文化の学びの要素が豊富な場所はそうありません。また狭い範囲に有名な神社仏閣が集中しているうえ、地下鉄と路線バスで移動しやすく、班別行動に適しています」と竹内さんは説明します。
しかし京都では昨今インバウンド増加によるオーバーツーリズムが問題になっており、修学旅行にも影響が出始めています。
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加えて近年は、猛暑によって運動会などの学校行事の日程を変更し、それに伴い修学旅行の時期がずれる学校も出てきています。
京都・奈良以外の候補として注目のエリアはどこ?
こうした状況もあって、京都・奈良以外の場所を選ぶ学校も出てきています。注目地域の一つが北陸です。「京都・奈良を訪れるのは首都圏の学校が多く、新しい行き先として新幹線を使える北陸が注目されています。金沢では京都のように班別行動を実施する学校が多いです。北陸新幹線が延伸したため、金沢と福井の組み合わせも増えています」(竹内さん)
班別行動のしやすさという点では、路面電車が走っている長崎も人気。その他、農村や漁村での民泊体験へのニーズも高まっているとのことです。
「民泊は異なる生活文化を体験する刺激もありますし、1次産業を目の当たりにすることはキャリア教育にもなります。また宿泊と体験を一緒にできるため、費用を抑えやすいメリットもあります」(竹内さん)
東京ディズニーリゾートの教育的意義とは?
東京ディズニーリゾートは、『教育旅行年報データブック2023』の見学先ランキングでも、中学校では8位、高校では3位にランクインする人気ぶりです。
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「キャストがゲストに対してどういう接し方をしているのかを学ぶことは、キャリア教育になります。たとえば、文化祭の出店時に『小さな子どもにはしゃがんで話しかけよう』など、具体的な行動にもつなげられます」(竹内さん)
私立校では海外も珍しくありません。異文化体験や国際交流など海外ならではの体験をできるのが魅力です。行き先で最近増えているのは韓国。物価がそこまで高くなく近いため、旅費を抑えられるのが人気の理由です。また、目新しいところではブルネイ。
「街がきれいで安全で、イスラム文化を感じられる穴場」だそうで、最近は教育旅行の誘致にも力を入れているそうです。
修学旅行が多様化しているのを実感しているという高野さん。「オーバーツーリズムの問題もあり、考えざるを得なくなっているというのもありますが、行き先を分けたり個別行動を増やしたり、各校がいろいろなやり方を考えています。もちろん、団体行動で得られる学びやコストメリットもあります」と続けました。
地域や学校の状況に応じた行き先選びが、今後ますます重要になりそうです。
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古屋 江美子プロフィール
子連れ旅行やおでかけ、アウトドア、習い事、受験などをテーマにウェブ媒体を中心に執筆。子ども向け雑誌や新聞への取材協力・監修も多数。これまでに訪れた国は海外50カ国以上、子連れでは10カ国以上。All About 旅行ガイド。(文:古屋 江美子(ライター))