「倍々ゲーム」のバーガーキング 人気の背景と「600店舗」に向けた死角とは

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2024年11月10日 06:21  ITmedia ビジネスオンライン

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ファストフードの中でも勢いが顕著なバーガーキング

 近年、バーガーキングが勢力を拡大している。大量閉店が話題となった2019年には店舗数が77店舗まで縮小したものの、2020年末には100店舗を超え、2023年には200店舗を達成した。


【画像】インパクトがすごい! バーガーキングの代表メニュー「ワッパー」、日米バーガー、1022キロカロリーもあるがっつりバーガー、1652キロカロリーの最重量メニュー、直火焼きをしている様子、セットメニュー(計7枚)


 ファストフード業界ではコロナ禍以降の好調が続くが、これほどの規模で「倍増」させたのはバーガーキングくらいだろう。消費者の声を調べると、肉質や重厚感を評価する意見が多いようだ。Xでたびたびバズっており、認知度向上に注力していることも拡大の一因とみられる。今回は、バーガーチェーンとして後発ながら人気が急上昇している理由を探っていく。


●かつては日本から撤退も 苦戦した1990年代


 バーガーキングは1954年、米フロリダ州・マイアミで創業した。客の好みに合わせてバーガーをカスタマイズできるシステムや、看板商品の「ワッパー(WHOPPER)」が受け、世界的チェーンとなった。


 日本にはマクドナルドから20年以上遅れて1993年に上陸。西武グループの不動産事業を担っていた西武商事が米国の本部とフランチャイズ契約を結び、西武系のテナントに出店した。しかし出店方針で両者の意見が一致せず、国内事業は1996年にJT(日本たばこ産業)が継承した。当時、外食事業に注力していたJTはバーガーキングを100店舗まで増やす計画を立てていたが、20店舗ほどしか出店できず、2001年に日本から撤退することになってしまった。


 デフレ経済下でマクドナルドがハンバーガーを200円台から100円台、そして60円台とケタ外れな値下げをしていた時代である。高価格帯のバーガーキングは当時の消費者に受け入れられなかったとされる。現在のようにワッパーの重厚感をそこまで訴求していなかったことも失敗した要因である。


●高価でも、ボリューム感がすごい


 撤退から6年後の2007年、バーガーキングは日本に再上陸を果たす。「ロッテリア」を運営するロッテと企業支援を行うリヴァンプが共同出資してバーガーキング・ジャパンを設立し、同社が運営を担った。


 とはいえその後もなかなか日の目を見ず、2010年に韓国法人のロッテが約200億ウォン(当時のレートで約14億円)の負債を引き継ぐことを条件に、わずか100円で国内事業を買収。その後、香港ファンドのアフィニティ・エクイティ・パートナーズが米バーガーキング側とフランチャイズ契約を締結し、ビーケージャパンホールディングスを設立。韓国ロッテも経営から退き、現在に至るまでビーケージャパンホールディングスが国内事業を担っている。


 このように国内のバーガーキングは、撤退や経営陣が次々に変わってきた歴史を持つ。大量閉店が話題となった2019年には一時、約100店舗から77店舗にまで規模を縮小したのは先述した通りだ。しかし、近年は以前の不調がうそかのように急速な事業拡大を果たし、現在は200店舗超を展開する。


 バーガーキングのメニューは単品で概ね500〜1000円ほどで、マクドナルドより高い。セットメニューはワッパーが890円で、マクドナルドより200〜300円高い。しかし、その分重量感があるのも特徴である。


 例えば看板商品のワッパーは、ビッグマックよりサイズ・カロリーが大きい。重量換算でビッグマックの約1.3倍、ハンバーガー2.7個分である。単純に商品が大きい分、しっかり食べたい層を取り込んでおり、「ワッパーJr.」「ワッパーチーズJr.」といった一回り小さいバーガーを提供していることで幅広い層を取り込めているのではないか。


●相対的に値ごろ感が上昇したのも追い風に


 バーガーキングの肉質や味に対する評価は、直火焼きに由来する。マクドナルドとバーガーキングは両者ともビーフ100%のパティを使っているが、バーガーキングでは自前の「ブロイラー」と呼ばれる機械でパティを直火焼きしている。直火でできた焦げ目が肉の香ばしさと旨味を引き立てているのだ。


 従来のバーガーチェーンを100円台の回転寿司に例えるなら、バーガーキングは回転寿司と本格的な寿司店の中間に位置する「グルメ回転寿司」とでもいえようか。それでいてセットの価格帯が200〜300円程度しか変わらないのなら、質を求める客はバーガーキングに流れるのは納得だ。デフレ経済下では価格帯がネックだったものの、近年は値上げが続き、マクドナルドの値ごろ感も薄れており、バーガーキングに追い風になっている。


●巧みなSNS戦略で「若返り」に成功


 近年の巧みなSNS戦略も、知名度を向上させるとともに規模拡大で一役買っている。2020年にマクドナルド秋葉原昭和通り店が閉店した際は、近隣の店舗に「22年間たくさんのハッピーをありがとう」という垂れ幕を掲げ、マクドナルドを称えるような文章を掲示した。――と思われたが、文章の左端を縦読みすると「私たちの勝チ」となっており、話題を呼んだ。


 この春に「バーガーキングを増やそう」キャンペーンを実施したのも記憶に新しい。バーガーキングにふさわしい物件の情報を消費者から集め、実際に出店が決まったら情報提供者に10万円を贈呈するというキャンペーンである。こちらもSNSで話題となり、同期間に7万8000件の情報が寄せられ、実際に12店舗の出店が決定している。


 こうした施策について、バーガーキングは自ら積極的に発信するのではなく、あくまで「ツッコミどころ」を用意し、消費者が面白がり拡散するようなスタイルを貫いている。時代に即した施策が効果を発揮したのか、もともとのコアなファン層は40代男性だったところ、現在は20〜30代へと若返りを果たしているという。


●600店舗に向け、課題はドライブスルー対応か


 バーガーキングは2028年末までに600店舗という目標を掲げている。並行して、フランチャイズ比率を現状の2割弱から半分まで増やす方針だ。日本ソフト販売の調査によると、約3000店舗のマクドナルド、1200〜1300店舗で続くモスバーガーおよびケンタッキーフライドチキン、300店舗ほどのロッテリアに次いで、バーガーキングは5位に位置する(2024年4月時点)。競合は多いものの、ボリュームなどの強みを発揮し、しばらくは好調に推移しそうだ。


 ただし、ロードサイドをあまり開拓できていない点が気になる。ドライブスルー対応店舗はわずかしかなく、地方への出店を拡大するには克服しなければならない。現状は地方店の多くが施設内出店である。マクドナルドの場合、ドライブスルーの売り上げがイートインを上回っており、バーガーキングがドライブスルー店を展開できれば、マクドナルドにとって脅威となるだろう。強気な出店目標がどの程度達成できるか、今後に注目したい。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。



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