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2歳だった養女の頭に暴行を加えて死なせたとして、傷害致死や強制わいせつ致傷などの罪に問われた今西貴大被告(35)の控訴審判決で、大阪高裁は28日、懲役12年とした1審・大阪地裁判決を破棄し、逆転無罪を言い渡した。石川恭司裁判長は「頭部に外力が加わったことを推認させる事実認定は困難だ」と判断した。
被告は大阪市東淀川区の自宅で2017年12月、養女にわいせつな行為をしてけがをさせたうえ、頭部に何らかの方法で強い衝撃を与えて死亡させた罪に問われた。被告は捜査段階から一貫して無罪を主張していた。
争点は、養女の頭蓋(ずがい)内に生じた損傷が何によるものかだった。弁護側は心疾患や窒息などの影響で、脳損傷が生じた可能性があると主張。裁判員裁判の1審判決(21年3月)は医師らの証言に基づき、頭に強い力が加えられたとして「暴行が可能なのは一緒にいた被告以外に考えられない」と認定した。
これに対し、高裁判決はこの事件について「養女に外傷の痕跡がなく、暴行の有無や態様が明らかでないという特異性がある」と指摘。外力による損傷だとする医師らの証言を検討した結果、「1審判決は各証言の相互関係や証明力を十分に検討していない」と批判した。
そのうえで、嘔吐(おうと)や誤えんによる窒息の可能性は否定しがたいと述べ、養女の母親の証言を踏まえても虐待を加えていた事情を見いだせないとし、傷害致死罪は成立していないと結論付けた。
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強制わいせつ致傷罪については、女児の肛門付近にできた裂傷の原因が争点になった。弁護側は皮膚疾患の可能性を主張しており、高裁判決は「異物挿入を認める証拠はない」と述べた。
被告は約5年半にわたり勾留が続いていたが、控訴審が結審した後の24年7月に保釈された。保釈条件では被告の逃亡を防ぐための「監督者」を選ぶ新制度が適用されていた。
判決を受け、大阪高検の小橋常和次席検事は「判決内容を精査し、適切に対応したい」とのコメントを出した。
「くじけず闘い続けてよかった」
今西貴大被告(35)はこの日、スーツ姿で判決の言い渡しに聴き入った。「被告人は無罪」。主文を聞くと、涙を流して弁護人と喜んだ。
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判決後、被告は大阪市内で記者会見。「独房で過ごした5年半。くじけずに闘い続けてよかったと実感しています」と振り返った。支援者や弁護団への感謝の言葉を繰り返し述べ、「無罪判決を聞くことができて本当にうれしい」と笑顔を見せた。
主任弁護人の川崎拓也弁護士は「無罪の人を5年半にわたり身体拘束した事実は重い。判決前に保釈したが遅きに失した」と指摘。高裁判決が1審の判断を誤りだと重ねた点に触れ、「我々の主張をくみ取っていただいた」と評価した。検察側に上告断念を求め、「一日も早く今西さんを解放してあげたい」と望んだ。【木島諒子】
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