「毛深い、税金の無駄遣い」批判されても遺伝性疾患の娘を配信する両親に聞いた“鳥肌立った”コメント

2

2024年12月01日 08:10  週刊女性PRIME

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

週刊女性PRIME

このはさんの21歳の誕生日を記念してスタジオで撮影したもの。2022年にYouTubeチャンネルを開設し、これまでに280本以上の動画を配信。登録者は6万人を超える(2024年11月現在)

先天性の障がいがある娘・このはさん(21)との日々を、YouTube「このらぶチャンネル」で配信している、このはさんのご両親。生まれてすぐに、重度の知的障がいや成長の遅れなどがある、「コルネリア・デランゲ症候群」と診断された。ネガティブな意見も届くなか、動画を発信し続ける理由をご両親に聞いた。

「YouTubeの再生回数が一気に伸びたのが、特別支援学校の卒業式の朝を撮影した動画。当時18歳の娘が癇癪を起こしてしまった様子に大きな反響が来ました」

生後すぐ告げられた重度の障がい

 そう話すのは、YouTubeで長女このはさん(21)の日常を発信する「このらぶチャンネル」の運営者であるお母さん(47)。このはさんは1万〜3万人に1人の頻度で発症

するとされる、遺伝性疾患の「コルネリア・デランゲ症候群」で、身長130cmの小柄な身体や両眉のつながった顔立ちも症状のひとつ。ほかにも、知的障がいや難聴などの疾患がある病気で、基本的な治療法はない。

 卒業式の動画は、睡眠障害もあるこのはさんが、眠気でイライラしながら登校準備する様子を収めたもの。床をバンバン蹴ったり、叫びながら歩き回っていたが、いらだちが収まらず、突然手元のツナ缶を投げつけ、飛び散った中身と汁が撮影していたお父さん(48)に降りかかる。そんな中でも優しく対応する両親の姿が印象的だ。

 動画は210万回以上再生され、《親の愛情と責任感が痛いほど伝わる》《尊敬します》など、1200件超のコメントが並ぶ。

「重度知的障がいの娘はしゃべれないので、不機嫌になると人や物に当たったり、自傷行為をしてしまう。穏やかな日も多いのですが、この日は機嫌が悪くて。でも、障がいのある家族や子どもを持つ人に何か参考になることがあればと、ありのままを公開しました」(お母さん、以下同)

 このはさんは、誕生前から波乱の連続だった。妊娠7か月の検診で横隔膜ヘルニアと判明。

「赤ちゃんの横隔膜に穴が開いていて、出産後に手術が必要だと。夫も私も手術すれば治ると信じていました」

 妊娠9か月のときに帝王切開で出産。動けないお母さんに代わり、お父さんがこのはさんの手術を見守った。

「危険な状態だったので、心肺機能を補う小児用エクモをつけて救命して、人工横隔膜を入れる手術をしました。生死の境をさまよっていて、僕は毎日のように神社へ通って、神頼みすることしかできなかった」(お父さん)

 手術は無事終わったが、生後51日目にコルネリア・デランゲ症候群と告知される。

「ショックでしたが、普通の子より手足が小さくて毛深いなと違和感があり、その謎が解けて安心したんです。でも育てていけるか不安で、先生の前で号泣しちゃって」(お母さん)

 退院後4か月はコルネリア・デランゲ症候群に起因する胃食道逆流症を発症し、予断を許さない状態が続いた。そんな中で、このはさんが吐血。

「人工横隔膜に腸が入り込んで腸閉塞になっていて。胃食道逆流症も治すために12時間に及ぶ手術をしました」(お父さん)

 5か月の入院生活だったが、“仲間”との出会いが希望をもたらした。

「大学病院には同じように難しい手術をした子たちがいて、そのお母さんたちに正直な気持ちを吐き出せたことで救われました。その後もママ仲間に支えられ、娘の障がいを徐々に受け入れられるように」(お母さん、以下同)

成長してから癇癪が激しく

 しばらくして2人目の子となる長男が生まれたことで、生活は一変する。

「このはが弟に焼きもちを焼いて騒ぐことが増えて。息子が幼稚園に入るまでは、双子を育てているような、てんやわんやの状態でした」

 このはさんは肺炎にかかりやすく、15歳くらいまで入退院を繰り返していた。

「それまで基本はおとなしかったのですが、高校くらいから二次性徴が始まり、ホルモンバランスの影響か睡眠障害が出て眠れず、癇癪を起こすことが増えてきたんです」

 時に攻撃の矛先を向けられても、両親はこのはさんに共感し、冷静に対応している。

「失敗しながらですが、夫と一緒に娘をよく観察して、気持ちが落ち着く対応策を考えています」

 このはさんは特別支援学校を卒業後、平日は生活介護型事業所に通っている。事業所では生活介助をしてもらいながら、軽作業などの仕事やレクリエーション活動を行う。

 朝7時にこのはさんが起きると、両親が交代で食事や身支度をさせ、かかりつけ病院に通院して10時までに事業所へ車で送る。16時半に帰宅してからも食事や入浴など、一日を通して親のサポートが欠かせない。そのため、避けて通れないのが“親亡きあと”の問題だ。

「このはが幸せな日々を過ごせるように願っていますが、突然、私たちに何かあるかもしれない。娘のためにも今から預け先のグループホームを探しています」(お母さん)

 今年の頭、ショートステイにもトライした。

「慣れない人と場所に緊張して、娘は帰ってきてからしばらく一睡もできなくて。娘にストレスがかからない施設を慎重に選んでいきたいですが、なかなか見つからないのが現状です」(お父さん)

心無い言葉に負けず発信を続けたい

 そんなこのはさんの両親が、2年半前にYouTubeを始めたきっかけとは。

「娘が生まれたころはコルネリア・デランゲ症候群についての情報が少なくて。そんな中、同じ障がいのある女の子の成長を記録したホームページを見つけて、うちだけじゃない!って本当にうれしかったんです。私たちもホームページを開設したんですが、息子が生まれてから忙しくてやめてしまって。今ならYouTubeで発信できると」(お母さん)

 一方でお父さんは、「このはが好きな、歌ったり、踊ったりする様子を発表する場をつくりたかった」と話す。

 お父さんが撮影し、お母さんが編集する体制で、お出かけ風景や日々の生活の動画をアップ。このはさんのかわいらしい笑顔が人を引き付け、すぐに人気チャンネルに。ポジティブな反響が動画制作のエネルギーになるという。

「応援のコメントや、“障がいのことを知れた”“勉強になる”という言葉をたくさんいただいて、本当に感謝しています。“お出かけ動画を見て、不登校だったうちの子が、このはさんも頑張っているからと、勇気を出して学校に行きました”というコメントには、鳥肌が立ちました」(お母さん、以下同)

 しかし、時には心無い言葉が届くこともある。

「“毛深い”など病気に起因する見た目に関する悪口や、“障がい者を支援するのは、税金のムダ遣い”と言われることもありました」

 実際に社会の理解が足りないと感じることも多い。

「障がい児の育児は父親も会社を休まなくてはならない状況ばかりですが、理解が得られずに退職する人が多く、僕もその1人です。障がい児をケアすることの大変さがもっと伝われば」(お父さん)

 日々、笑顔を絶やさないお母さんもつらい瞬間はあるという。

「そんなとき、自分1人じゃないとわかると心強い。同じように障がいで悩むご家族のために、これからも動画配信を続けていきたいです」

取材・文/小新井知子

ランキングライフスタイル

前日のランキングへ

ニュース設定