「難しい1年でしたね。内野はどこを守るかわからない状況の中で、僅差の場面で出たり、状況に応じて入るポジションも違ったり、その準備が本当に難しかったですね」。
ロッテの茶谷健太は、2年連続で開幕からシーズン終了まで一軍帯同し、今季はシーズン自己最多の88試合に出場したが、難しい1年になった。
◆ 打撃不振に苦しむもブレずに
茶谷は8年目の昨季79試合に出場して、打率.284、9打点の成績を残し、今季は友杉篤輝と共にショートのレギュラー格としての活躍が期待された。「もちろん守備は基本だと思うんですけど、打たないと出られない。本当に打つしかないと思います」。2月13日からの対外試合では2月17日の広島との練習試合で2安打、2月24日の韓国ロッテとの練習試合で本塁打を含む3安打3打点と、練習試合期間の打率は.368(19−7)、1本塁打、3打点とバットでアピール。
「センター返しを意識してもちろんやっているんですけど、ちょっと体が開いたりとか、振り遅れるファウルになったりとか調子が悪くなる傾向が出ている。去年もそうだったですけど、その期間を短くできるようにと思って取り組んでいます」。
3月23日の中日戦で2安打したものの、オープン戦はなかなか当たりがなく、オープン戦は打率.235だった。
開幕一軍を掴んだが、開幕してからは安打が出ず、4月21日終了時点で打率.115。開幕から当たりが出なかったのは相手が研究しているのがあったりしたのだろうかーー。
4月24日の試合前練習後の取材で茶谷は「ただ単に自分が打てないだけで、去年と比べて映像、配球を見たりしています。去年振っていなかったボールを今年はボール球を振っちゃったりとか、去年この感じで打てているのにズレがあって打てなかったり、色々問題があるとは思いますが、そこをもっと突き詰めてなんとかいい状況に持っていけるようにとやっています」と自己分析。
状態を取り戻すために「とにかく強い打球ですね。調子が悪い時はセカンドとかライトとか擦ったような打球が多いので、バットとボールをパチンとしっかり当てられるような強いライナーを意識して打っています」とバットを振った。
7回の守備から途中出場した4月29日の楽天戦、4−8の8回一死一、二塁で迎えたこの日初打席、渡辺翔太が1ボール2ストライクから投じた4球目のカットボールを逆らわずに右中間を破る2点適時二塁打。吉井理人監督は試合後、茶谷の2点適時二塁打に「茶谷はちょっと苦しんでいたんですけど、やっと1本出てよかったです」と振り返った。
翌30日のオリックス戦でも安打を放ち、状態を上げていきたかったが、その後はなかなかスコアボードに“H”ランプを灯すことができず。6月12日のDeNA戦で代打で登場し、安打を放った翌日の取材で茶谷は「試合はもちろん、積極的にファーストストライクから打ちに行く準備ですね」と持ち味である初球から積極的に打ちに行く姿勢を示した。
昨季はレギュラーに近い位置にいきながらも、この時期は小川龍成、友杉が二遊間でチームを引っ張っていた。茶谷は「どういう展開、立場になっても出させていただいたところで、結果を残す。それは常に前から変わっていないです」と周りを気にせず、矢印を自分の方向に向けていた。
6月12日のDeNA戦での安打を最後に2ヶ月以上安打がなく、守備固めでの出場も多かったこともあり、なかなか打席に立つ機会に恵まれなかった。打撃練習では「だんだんやらないうちに落ちてきちゃっているので、強く振ることですね」と話し、試合では少ない打席の中で「少々ボールでも打ちにいく。見ていると終わっちゃうので、本当に打ちにいくしかない。何打席もあれば見ていくことができるんですけど、そういう立場じゃないので、なんとか積極的に少々ボールでも甘い球を打ちにいこうと思ってやっています」と変わらず積極的に打ちにいっていると教えてくれた。
追い込まれてからノーステップのようなすり足打法で打ったり、左足を大きく上げて打ったりと打席内で工夫を凝らしたが、「間が取れていないことが多いので、なんとかしっかり距離を取れるようにやっています」と、その理由を説明した。
「シンプルに実力だと思います。もちろん、いい感覚で打てていることも何回もあるんですけど、ヒットにならないということはそういうことだと思うので、頑張るしかないです」。
試行錯誤していた中で、9月17日の楽天戦、3−3の5回二死走者なしの第2打席、サウスポーの古謝樹が1ボール1ストライクから投じた143キロのストレートをライト前に6月12日のDeNA戦以来となる安打を放った。
『7番・遊撃』で先発出場した9月22日の西武戦では、2−2の2回無死走者なしの第1打席、先発・羽田慎之介が1ボール1ストライクから投じた149キロのストレートをライト前安打を放つと、4−2の3回一死二塁の第2打席は、「とにかく追加点を取ることが出来て良かったです」と、上田大河が1ストライクから投じた2球目の135キロカットボールをセンター前に適時打。
勢いの止まらない茶谷は7−2の7回一死走者なしの第4打席、ボー・タカハシが3ボール1ストライクから投じた5球目の147キロストレートをセンター前に弾き返し猛打賞を達成した。
チャンスメイク、ポイントゲッターと、バットで結果を残した茶谷。吉井理人監督は「最近バッティング練習、二軍での試合とかでバッティングの状態も上がっていたので、今日は茶谷でいこうと思って打ってくれました」と評価し、左投手だけでなく右投手からも2安打に「うれしかったです」と喜んだ。
10月3日の日本ハム戦でもセンター前に安打を放ち、9月以降スタメン出場した3試合全てで安打を放つなど、打席数は少ないが9・10月の打率は.385(13−5)。
結果が出なかった時期もあったが、ブレずに打撃練習では下半身を意識して、センター方向にという姿勢を崩さなかった。
「ダメだからといって変えようという意識はないですね。やってきたことを継続して、といっても1、2年の話なのですぐにできたら苦労しない。変えるところもあるんですけど、下半身は変える必要はない。使い方だったり、間違っていた方向に行っていた時もあったと思うんですけど、元に戻っていくようなイメージでやっています」。
昨季のシーズンの打率.284だったが、今季の打率は.167だった。
「去年はたまたま結果が出て、今年は結果が出なかった。それができなかったので、打席数にもつながっているのかなと思います」。
継続しながらも、打席の中で結果が出なかったことに焦りはなかったのかーー
「もちろん焦りというか、やばいなというのはありますけど、そんな簡単に打てたら誰も苦労しない。そこは割り切ってやっていました」。
秋季練習でも「下半身を使う、下半身を強くする。下半身主導で。下半身で力強さをもう1回取り戻せるようにやっています」と“下半身の強化”を図った。
来季に向けて今取り組んでいることにプラスこれをやっていこうというものはあるのだろうかーー。
「個人的には体幹、体の強化ですね」。
来季はプロ10年目。中堅と呼ばれる年齢に差し掛かってきた。「とにかく今年は全然ダメだったので、やるしかない、ただそれだけです」、「誰しも打てなければレギュラーになれないので、打つしかないです」。現役ドラフトで同じ右打者のユーティリティープレーヤーの石垣雅海が加入し、競争力がさらに高まる。とにかく打って存在感を示すつもりだ。
取材・文=岩下雄太