14日、韓国の国会では尹大統領への弾劾訴追案が可決され、大統領の権限が停止されることになった。ソウルでは12月3日の非常戒厳の宣言を受け、尹大統領の弾劾を求めるデモや、尹大統領の支持者たちによる集会が全国各地で連日行われている。1回目の弾劾訴追案の採決が行われた7日夜の集会には、約15万人が参加したという。(韓国警察の推計)
【写真を見る】「推しと私」K-POPアイドル応援ペンライトで退陣訴え ユン大統領への抗議デモに集まった韓国の若者 大きく変わった“ろうそく集会”の現場
2016年朴槿恵大統領の退陣を求める集会と違う雰囲気韓国で大統領の退陣を求める大規模集会が行われたのは過去にもあった。2016年に朴槿恵大統領の弾劾を求めた集会は“ろうそく集会”と名付けられ、連日市民がろうそくを持ち、集会に参加していた。当時は民衆歌謡(韓国における民主化運動や学生運動などの闘いで歌う目的で作られた歌)を合唱していた。今回の集会も2016年と同様に "ろうそく集会"と呼びかけられたが、その雰囲気は大きく変わっていた。
手にはK-POPアイドル応援用のペンライト 大勢の人が集まり、身動きをとるのもままならない集会場で、ひと際目立ったのがK-POPアイドルファンの象徴であるペンライトだった。ろうそくを持っている人も多くいたが、ペンライトの光はろうそくを圧倒していた。
ペンライトはそれぞれの好みでカスタマイズされ、アイドルグループ名や推しの名前が書かれている部分に「弾劾」のシールを貼ったものも・・・。集会に参加した30代の女性は「本来はアイドルのライブで使うものですが、光が強く風で明かりが消される心配もないので持ってきました」と話していた。そのうえで「推しと私がいる社会の秩序を乱す尹大統領は弾劾すべき」と集会に参加した理由を説明した。
また、20代の参加者は「こういったデモ集会を堅いものと思う人が多いが、アイドルペンライトをみて若い人も楽しんで参加できると伝えたかった」とアイドル応援用のペンライトを集会に持ち込んだ理由を話した。
もうひとつ2016年の集会と大きく異なっていたのが、集会場で流されていた歌だ。今回は、最近流行しているK-POPが流れ、参加者らが合唱したり、踊ったりする姿もみられた。韓国のガールズグループBLACKPINKのメンバー・ロゼさんと世界的な人気歌手、ブルーノ・マーズさんが歌った「APT.」。Youtubeでの再生回数が約6億回(2024年12月13日現在)を突破する大ヒット曲だが、その曲が集会場に流れると参加者らはろうそくやペンライトを振りながら大きな声で歌い始めて、まるでライブ会場を彷彿させていて、「祭りのような集会」との指摘もある。
|
|
今回の集会と2016年の集会と雰囲気が大きく変わったことに、韓国メディアは参加者の年齢層に注目した。集会に参加したのは20代・30代といった若い層だったとし、ろうそくではなく集会場にペンライトを持ち込んだことについては「若者たちにとって馴染みのあるもの」と紹介。「以前は厳粛な雰囲気を大事にしていたが、みんなで楽しめる集会を作ろうとした結果」と、“祭りのような集会”になった理由を分析した。
変化した大統領弾劾を求める集会について、韓国のSNSでは「楽しい方が参加しやすい」などと若い人たちの参加が増えたことを歓迎するような投稿が相次いだ一方、「集会場は遊び場ではない」と批判する声もあがっている。
尹大統領の弾劾を求める集会が毎日のように行われているなか、韓国のフリマアプリでは集会に持っていくためのペンライトを求める声が相次いでいて、集会で光る、アイドル応援グッズのペンライトの数はさらに増えそうだ。